08

「……」

「どうした?」

○○がぐったりと倒れているのを見て鷹の目が声をかける。

「……あ、暑いです」

気候は夏のように暑く、太陽は容赦なく降り注ぐ。

遮る帽子も日傘も持たぬ、肌を隠す服も無い○○は辛そうに倒れているしか無かった。

「……何故早く言わん」

鷹の目は自分のかぶる帽子を○○に無造作に投げる。

「……すみません」

直射日光を浴びずに済み、少しだけ気分が和らいだ。

「飲め」

鷹の目は水を○○に差し出す。
○○はそれを受け取るとこくりと喉を湿らせた。

「ありがとう」

少し楽になったのか、笑顔を見せた。

と、遠くから船が近付いて来るのが見えた。

「え?な、なんかドクロのマークとか掲げた怪しい船が……」

○○が船を見ながら呟いた。

「海賊船だ」

「あれが!クリークの船はボロボロだったから、初めてちゃんとしたの見た」

○○は海賊船を見ながら呟いた。

ボロボロにした原因は隣に座る大剣豪な訳だが。

「待っていろ」

鷹の目はそう言うと立ち上がり、ぽーんと軽快に跳んだ。

「は?え?」

○○が驚いて口を開けて見ている。

鷹の目はそのまま海賊船に乗り込んだ。

「な、何だ?!」

「た、たたた鷹の目だぁ!!!」

「うわぁ!!」

海賊船から悲鳴が聞こえる。

「落ち着け!奴を倒せば名が上がる!!」

「賞金も跳ね上がるぞ!!」

「うおおおお!!!!」と言う声と共に怒号と戦う音。


ーードーン


「きゃあッ!!」

大砲の音までもが聞こえる。

慌てて耳を覆ったが、鼓膜がビリビリと震えて痛んだ。




そして、海賊達は小さな救命ボートに乗り移る。

いつの間にか海賊船は静かになる。

目を凝らして見ていると、鷹の目がトーンと跳んで戻って来た。

「お、お帰り」

○○は少し怯えながら鷹の目を見る。

「これでも被れ」

「うわっぷ!!」

鷹の目は○○が被っていた自分の帽子を取り、新しい女物の白い帽子を被せる。

「え?あ!ありがとう……」

○○は不思議そうに鷹の目を見上げる。
それから去って行く海賊船を見て気付く。

「え?まさか、これの為だけに?」

○○は驚いて鷹の目を見上げる。

「……海賊を沈めるのも俺の仕事だ」

「照れなくても」

「……」

「ご、ごめんなさい……」

鷹の目の鋭い目線に○○は即座に謝った。

(こ、怖いって!!冗談も言えないよー……)

○○はおどおどと帽子を深くかぶる。
この帽子はなかなかデザインも可愛く、被りやすく、何より太陽の日差しを遮られて気持ちが良い。

「ありがとう、鷹の目。凄く気に入ったわ」

○○は怖がりながらもちゃんと笑顔で礼を言う。

「ああ」

鷹の目は満足そうに頷いて、○○の帽子ごと頭を叩いた。

やはり、鷹の目はそれほど怖い人間でも無いのかも知れないと○○は思った。

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