03

広い海、青い空、海上レストランバラティエは遥か彼方。


「………………え?」

○○は戸惑ったまま、自分の置かれた状況を把握しようと必死だった。

「座れ、落ちる」

「っ!!」

低い男の声に○○はびくりと体を震わせる。

「あ、あの……」

「二度は言わん」

鷹の目の鋭い目線に○○は慌ててその場に座り込む。

「あの、何で私はここに?」

○○は恐る恐る鷹の目を見上げた。

「俺が連れて来たからだ」

鷹の目は○○に興味が無さそうに遠くに視線をやる。

「な、何故?」

「ヒマつぶしだ」

鷹の目は帽子を深く被る。

「俺は寝る」

鷹の目はそれだけ言うと静かになる。

「っ!!な?」

「静かにしていろ」

「っ!!」

○○は慌てて口を両手で押さえた。

(さ、拐うならちゃんと相手にしてよ!)

○○は仕方なく、狭い船をキョロキョロと見る。

棺桶のような小さな船には、酒と少しの食料も乗っているようだ。

鷹の目が座っている椅子以外、目だった物はない。

(……えー……暇……)

○○は空を眺めたり、海を覗き込んだりしていたが、いつの間にか眠りについていた。




「起きろ」

低い男の声に○○はのそりと起き上がる。

「ん……うん?わぁ!!!」

○○は自分を見下ろす鷹の目に驚いて叫ぶ。

「喧しい。口を閉じろ」

「っ!!」

鷹の目の低い声に○○は怯えてコクコクと頭を振る。

「この島で宿を取る。着いて来い」

鷹の目はそれだけ言うとひょいと船から飛び降りる。

「ま、待ってください!」

○○の焦った声に鷹の目は振り返る。
船と陸の間は数メートル空いている。

「……跳べ」

「む、無理です!」

鷹の目の言葉に○○は冷や汗をかく。

「……」

鷹の目は無表情のままひょいと船に戻ると、○○を肩に担ぐ。

「っ!!」

そして、またひょいと陸に上がる。

そして、そのままスタスタと歩き出す。

「え?あ、の、下ろしてください!」

「喚くな」

鷹の目は低い声で言うが、そのまま歩き続ける。下ろす気は無いようだ。

(こ、怖いよ……)

○○は半泣きのまま辺りを見ると

(め、目立ってる!!)

○○は鷹の目に担がれているので、通り過ぎる人々が振り返って「何だ?何だ?」と見ている。

暴れても何をしても結局あのゾロが手も足も出なかった相手だ。大人しくするしかないと腹をくくった。




「ひぃぃぃ!!!」

「し、しししし七武海!!!」

「た、鷹の目だぁ!!!」

鷹の目が歩くとそう言って人が離れていく。

が、ある程度距離を保つと皆ジロジロと見てきた。

「しちぶかい?」

○○は不思議そうに単語を拾う。

「政府公認の海賊だ」

意外にも○○の疑問に答えたのは鷹の目。

「……鷹の目の事?」

○○は怖がりながらも興味津々と聞く。

「そうだ」

鷹の目は頷いた。

「凄いの?」

「さあな。しかし、この世に七人しかいない」

「え!さすが世界一の大剣豪ね!!」

○○は素直に鷹の目を褒める。

「……」


ーーすとん


「わ、わ!いきなり落とさないでください」

急に肩から落とされて、バランスを崩しながらも何とか立つ。

「宿屋だ」

鷹の目はそれだけ言うとさっさと中に入る。

「ま、待って!!」

○○は慌てて鷹の目の後に続いた。




「た、たたたたた鷹の目のミホーク様とお見受けします!!」

宿屋と言ってもまるで高級ホテルのようだ。
そこのフロント係の男が焦りながらも上品さを保とうと奮闘した。

「一泊だ」

どんっと札束を投げると、フロント係の男が一番良い部屋の鍵を渡した。

「ど、どうぞ、ごゆっくり」

フロント係の男は丁寧に頭を下げる。そして、ちらりと○○を見た。


「鷹の目が女を連れていた!」

「何者だ?あの女?」

「馬鹿!野暮な事言うなよ!」

「良いなぁ!私も抱いて!ミホーク様!!」

「私もー!!」

男達とは対称的に女達はキャッキャッと騒いでいた。

[ 13/61 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -