09
「ん……」
重い瞼を何とか開け、ダルい体に力を入れる。
「よう、起きたか」
水を飲んでいたシャンクスがニヤリと笑った。
「ん、今何時?」
「10時過ぎ」
辺りが暗い事から夜の10時だと理解する。
「大丈夫か?」
シャンクスは再びベッドに入り、○○の素肌を抱き締める。
「……無理……」
○○は恥ずかしそうにポツリと呟いた。
「スゲェ気持ち良さそうだったから、俺も手加減出来なくなっちまったしな」
シャンクスはニヤリと笑いながら首筋に唇を落とす。
「ん、もー……」
○○は力なく抵抗する。
「はぁ、良い声だな。久々に熱くなった」
シャンクスは熱のある瞳で○○を見る。
「あ、あの、シャンクス……」
「ん?」
「もう……無理……」
○○は顔だけでなく、体も全て赤くさせて言う。
「いや、まだ足りない」
「っ!!」
シャンクスはニヤリと○○に覆い被さる。
「なんだけど、残念ながら、そろそろ時間みたいだ」
シャンクスは残念そうに○○の上から退くと、最初に着てきた服へと着替え始める。
「時間……?っ!!まさか!!」
「ああ、そろそろ津波が引く頃だ」
シャンクスは静かに声を出す。
「…………」
○○は急に胸が苦しくなる。
もう、シャンクスとは会えなくなるのだ。
「○○?」
マントをつけ、麦わら帽子も被ると○○を振り返る。
「……もう、会えないの?」
○○は切なそうに声を出す。シャンクスの事は見られない。
「……」
シャンクスは無言でベッドへと腰かける。
「っ!!ご、ごめんなさい。困らせたい訳じゃないの。ただ……」
○○が言葉を紡ごうとすると、シャンクスが○○に口付けをする。
「何言ってるんだ?」
シャンクスは○○を見つめる。
「○○は仕事も無くして、男とも縁が切れたじゃないか。他にこの世界に未練があるのか?」
シャンクスは真面目な顔で言う。
「え?」
「無いだろ?むしろ、俺に未練が無いのか?」
シャンクスはすっと目を細めた。
「っ!!」
シャンクスの台詞と視線にカッと頬に熱が集まる。
「俺と来い」
シャンクスはそう言いながら○○に口付けた。
「この辺か?」
「うん」
着替えを済ませ、必要最低限の物をバッグに詰めて、○○はシャンクスと共に初めて会った場所にいた。
シャンクスは○○の手をしっかりと握り締めている。
「あっちから、こっちへ津波は行ったわ」
指を刺しながら説明する。
「なら、こっちから来るのか」
シャンクスはそう誰もいない道に立つ。
「ねぇ、本当に来るの、津波」
○○は不安そうにシャンクスの手を握る。
「ああ。必ず、な」
シャンクスは自信満々に頷いた。
まだ津波はやってこない。
もう、津波は来ないのでは無いかと思った。
「来た!」
シャンクスはニヤリと笑った。
「っ!あの時と同じ!」
やって来た津波は、やはり周りの物は何も害せず突き進んで来た。
「○○、しっかり捕まってろよ」
シャンクスは○○を横抱きにする。
「う、うん」
○○はぎゅっとシャンクスの首に腕を巻き付ける。
「行くぞ!」
シャンクスは深く息を吸い込むと、呼吸を止める。
「っ!!」
津波が2人を襲う。
やはり、津波に巻き込まれるのはシャンクスだけ。○○は息も出来る。
ただ、シャンクスにしがみ付くだけ。
みるみる内に景色が変わり、いつの間にか海が広がっていた。
「っ!!シャンクス!!」
前には巨大な流木があり、避けきれない。
シャンクスは必死に体の向きを変え、○○に当たらない様にする。
「っ!!」
流木はシャンクスの頭に激突し、彼の腕から力が抜ける。
「しゃっ!!」
叫ぼうとしたが、どう言う訳か、急に○○自身が津波に流される。
「っ!!」
口の中に入ってくる塩辛い水に慌てて口を閉ざす。
しっかりと捕まっていたはずの手は、潮の流れに耐えきれずにシャンクスから離れてしまった。
「っ!!」
○○は離れ行くシャンクスに手を伸ばすが、もう、届かない距離まで離れてしまった。
あまりの早い流れに、○○もゆっくりと意識を飛ばしてしまった。
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