出会い編02

「あー、頭痛ェ」

シャンクスは二日酔いから来る頭痛で目を覚ました。

「……?」

見覚えの無い部屋にシャンクスは身を起こす。

「ん……」

「……」

腕に抱いた女の甘い声に頭をかいた。

(…………うわー、久々にやっちまった)

シャンクスは渋い顔をする。

自分が腕に抱いているのは昨晩新幹線の中で出会った女ーーやすだった。

(これ、ヤったかな?ヤってるよなァ……)

シャンクスはどうするかと頭をかいた。

「…………うぅ、痛……」

やすの少し枯れた声にシャンクスはどきりとした。

やすはのそりと起き上がるとシャンクスを見た。

「…………」

「よ、よォ……」

シャンクスは冷や汗を滴ながら手を上げた。

「…………あ」

やすは眉間にシワを寄せた。どうやら二日酔いのようだ。

「昨晩、覚えてるか?」

シャンクスは確認のため声を出した。

「……新幹線に乗って、貴方とお酒を飲んだところまでなら」

やすは気まずそうに言う。

「……実は俺もだ」

シャンクスは苦笑した。

「…………そうですか」

やすは逃げるようにベッドから抜け出し、脱ぎ散らかした服を片付けた。

「2人とも覚えていないなら好都合じゃないですか」

やすは髪をまとめながら言う。

「…………」

シャンクスの胸はちくりと痛んだ。

「私、重くない女を目指しますから」

「いや、軽い女もどうかと思うぞ」

シャンクスが思わず突っ込みを入れる。

「……そっか、そうですね」

やすは何とも言えない表情をする。

「ところでここは?」

シャンクスはキョロリと部屋を見回す。

「……私の部屋です」

やすは台所へ立つと、ミルクパンを出し、紅茶の葉と水を少し入れて火にかける。

「そっか!可愛い部屋だな!」

シャンクスはにかりと笑った。

「……ありがとうございます」

やすは煮出した紅茶にミルクをたっぷりと入れた。

「なァ、部屋の鍵貸してくれ」

シャンクスが手を出した。

「え?」

意味が解らず、やすは口を開けた。

「だから、ここの部屋の鍵」

シャンクスはほれと手を突きだす。

「……何に使うんですか?」

やすは怪しく思いながらも鍵を取り出した。

「もちろん、合鍵作り」

「へ?ちょ、意味が解らない」

やすは鍵を慌ててシャンクスから引き離した。

「俺さ、意外と忙しい身だから、あんま会えないし、夜も遅くなるからさ!勝手に入って勝手にくつろぐよ」

シャンクスは「心配すんな」とにかりと笑った。

「いや、全然意味が解りません」

やすは出来上がったミルクティをカップにそそぐ。

「良かったらどうぞ」

やすはミルクティをシャンクスに渡す。

「お、さんきゅ!」

シャンクスは受け取るとこくりと飲む。

「それ飲んだら出てって下さいね」

やすは甘いミルクティを堪能する。

「なんで?」

「な、なんでって……」

やすは困惑気味にシャンクスを見る。

「俺、完璧にお前の心の隙間って奴を利用して抱いてるだろ」

「い、言わないで下さい!」

「こら、耳を塞ぐな」

シャンクスは片手でやすの手を取る。

「大丈夫!そもそも覚えてないし!責任取れとか騒がない!だからもう」

「もう良い事ないだろ」

やすの言葉にシャンクスが真剣な声を出した。

「お前は女だ。少し自分を安く見過ぎてるぞ」

シャンクスは怒った顔だ。

「それか、あれか?俺が片手落ちだからか?」

シャンクスには左手が無かった。

「え?あ、そう言う事では……」

やすはふるふると首を左右に振った。

「だよなー。いくら顔が良くても片手とか嫌だよなー」

シャンクスが拗ねたように言う。

「ち、違っ!ってか、自分で顔が良いとか言うんですか」

やすは慌てる。

「良いよ。顔に傷もあるし、どう見ても堅気じゃねェもんな、俺」

シャンクスは自傷気味に笑った。

「や、止めてください!シャンクスさんは素敵な人です!私、シャンクスがいたから昨日は落ち込んでたはずなのに、楽しくて、振られた事なんから気にならなくて!だから!」

やすが顔をあげると太陽の様に笑うシャンクスがいた。

「なら、宜しくな!やす!!」

にかりと笑うシャンクスにやすの胸は高鳴った。

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