02
広いベッドに1人で寝るのにも慣れていた。
1人とは言っても足元にはベポが丸まって眠るのだが。
大きな大学病院に勤めるローはそれなりに夜勤も多い。
そして、優秀な医者だけに頼りにされる事も多いのだ。
「っふぁぁ!」
大きなあくびと共にかなは目覚ましを止めた。
「お腹空いた……早く健康診断終わらないかな」
かなは起きてすぐにベポに餌をやる。
そして、トイレを綺麗に掃除した。
それからかなは出掛ける準備に取りかかる。
顔を洗い、コンタクトを入れ、髪をとかし、化粧をする。
「お腹空いたよー。お腹鳴るよー」
かなはお腹をさすった。
「じゃあ、ベポ!行ってくるね!お留守番宜しくね!」
ベポが目をまん丸くしてソファーの上から見送った。
玄関を出ると鍵をかけ駅へ向かう。
「そう言えばローの病院だ。何時に終わるのかな?」
かなは少しウキウキとしながら電車で一駅のそこへ向かった。
「あ!おはようございます!」
仕事仲間を見付けて集合する。
「ねぇねぇ知ってる?ここ凄いイケメン先生がいるのよ?」
同僚がウキウキと言った。
「え…………それって」
かなは何となく嫌な予感がした。
「外科のトラファルガー先生って言うのよ!若いのに腕が良いんですって!」
うっとりとする同僚。
「へ、へぇ。あ!でも今日は内科のお医者様だから、残念ですね!」
かなは冷や汗を滴ながら言う。
「でも!偶然会うかも知れないでしょ?楽しみ!!!」
同僚がテンション高くはしゃいだ。
(ローって相変わらずモテるなぁ)
かなは嫉妬を通り越して感心していた。
健康診断が始まり、滞りなく進む。
身長、体重、血圧、脈拍、採血、心電図などなど。
「最後は内科健診です。呼ばれた方からお願いします」
ナースはそう言うと名前を呼び始めた。
「次は□□さーん。3番の診察室へどうぞー」
「3番?」
今まで誰も3番には呼ばれていなかった。
「手の空いたお医者さんが増えたのかな?」
等とのんきに診察室へ向かう。
「失礼しまーす」
コンコンと扉を叩いてから入る。
「そこに座れ」
「………………」
そこには外科医のはずのローがいた。
「何してる早くしろ」
「……いやいやいやいや!」
かなは思わず手を顔の前で振った。
「いや、意味が分かりませんが。え?ローは外科医でしょ?なんで」
「何度も言わすな」
「……」
ローの低い声にかなは押し黙る。
「ここで犯されたくなきゃさっさと座れ」
「……し、失礼しまーす」
かなは冷や汗を滴ながら椅子に座った。
「最近調子が悪い所とか、ねェな」
「自己完結!」
「じゃあ、何かあるのか?」
「ナイデス」
ローにぎろりと睨まれて押し黙る。
(しかし、ローの白衣姿とか良い!聴診器首にかけてるとか素敵過ぎじゃない?に、似合う。写メ!あ、電源切って)
「おい」
「は、はい?」
「お前、変な事するなよ」
ニヤリとローが口を歪めた。
「し、しないよ。ただ、白衣のローがカッコイイなぁって思って」
かなは素直に口に出してからしまったと慌てて口を閉じた。
「ほゥ。そうか」
ローはニヤリと笑う。
「脱げ」
「は?」
「脱・げ」
ローは静かに言う。
「え?いや、え?」
「何を狼狽えてやがる。お前何しに来たんだ?」
ローは呆れた様に聴診器を構えた。
「あ!そっか」
「そっかって何だ」
「いえ!なんでもないよ」
「ったく、エロい事考えるな」
「なっ!」
顔を赤くしてローを睨み付ける。
「うるせェ」
「っ!」
ローは聴診器をかなの検査着の中に突っ込む。
「心臓速ェ。病気か?」
「違うって解ってて言ってるよね?ってか、お医者様がそんな患者を不安にする言い方で良いの?」
「俺は内科じゃねェ」
「…………」
かなは呆れた様に黙った。
「背中」
「はーい」
かなはくるりと回転椅子を足で廻した。
「何だこれ」
「なに?」
「ここ。赤いぞ」
ローの冷たい指が背中に触れる。
「冷たっ!あ、昨日痒くて」
「乾燥か」
チッと小さく舌打ちをする。
「こっち向け」
「はーい」
「舌出せ、喉を見る」
「べー」
「良い度胸してんな」
「スミマセン」
ローはライトでかなの喉を照らす。
「異状は見当たらねェ」
ローはカルテにさらさらと何かを書き込む。
「色も艶も張りも良い」
「な、なんの?」
「あ?肌のだろ。大事なバロメーターだ」
ローは手を動かしたままだ。
「ついでに感度も良い」
「何の話?!」
「それは」
ローはかなの耳元に唇を寄せた。
「今夜ベッドの上だ」
ニヤリと低い声がかなの頭に直接響いた。
「やっぱり外科医が内科健診なんておかしいよ!」
「顔赤いぞ」
「誰のせい?」
「まァ、俺だろうな」
「反省の色はないのですか?」
「何だ?ここでヤりたいのか?」
「ち、違っ!」
「診察室のベッド固いからあんまり好きじゃねェ」
「なら、やるなぁ!」
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