03

午後、シャンクスはちーを散歩へと連れ出した。

「健診以外で外出るの久しぶり」

ちーは気持ちの良さそうな顔をした。

「だろ?たまには散歩も良いだろ」

シャンクスはしっかりとちーの手を繋いだ。

ちーはシャンクスの手の温もりに自然と笑顔になった。



マンションを出てしばらく歩くと都会の中にも公園がある。

だいぶ寒さも和らぎ、子供たちのはしゃぐ声もした。

「そういや、どっちだろうな?」

「え?」

「男と女」

「あぁ」

シャンクスの笑顔にちーは頷いた。

「今日の健診の時は先生まだ何も言ってなかったよ」

ちーはシャンクスを見上げる。

「じゃあ、女かな?単に早いだけか……」

「え?なんで女の子?」

ちーはシャンクスの言葉に不思議そうにした。

「だいたい『知りたい?』って聞いてきたら男なんだと」

「なんで?」

「ついてるから」

「…………あ!あぁ」

一瞬シャンクスの言う意味が分からなかったが、思い当たる節があり頷いた。

「疲れたか?」

シャンクスはベンチを見付けて立ち止まる。

「え?そうね、うん。少し」

シャンクスはちーをベンチに座らせた。

「飲み物買ってくる」

「一緒に行くよ?」

「良いよ。すぐそこだ。何飲みたい?」

「うーん、ノンカフェイン」

「了解」

シャンクスは早足でその場から立ち去った。


「本当に良いお天気」

ちーは気持ち良さそうに伸びをした。

ふと、気になり周りを見渡すと、見覚えのある人がベビーカーを押してこちらへとやって来た。

その姿に言い知れぬ不安がちーを襲った。

「あら、またお会いしましたね」

クスクスと女は笑った。

「…………」

ちーは目を反らした。

「残念。嫌われちゃいました?」

女は笑いながら言う。

「良いじゃない。結果的にシャンクスは貴女を選んだんだから」

女は追い討ちをかけるように言った。

「あ、あなたは」

「はい?」

ちーは少し震えた声を出した。

「あなたは何でその子がシャンクスの子だと嘘をつくの?」

ちーは何とか女を見上げた。

「嘘?どう言う事?」

女は心底不思議そうに聞く。

「だって!シャンクスは他の人には手を出してないって」

ちーの口調は少し荒くなる。

「……そう。秘密なのかしら?それとも貴女に嫌われるのがよっぽど嫌なのね」

女はくすりと笑った。

「私との事を無かった事にしても、この子を見たらすぐバレてしまうのにね?」

女は子供を愛しそうに見た。

「…………」

ちーは耳を覆いたくなったが、シャンクスを信じると決めた。

「何、でそん、な嘘を……」

ちーの声はかすれて行く。

「そうだな。何でそんな嘘をつく」

声がして2人は振り返る。
そこには不機嫌そうなシャンクスが缶ジュースを手に立っていた。

「シャンクス……」

「シャンクス!!」

女はぱぁぁっと目を輝かせるとシャンクスへ寄り添った。

「会いたかったわ、とても!」

女は嬉しそうに笑った。

「……あんたか」

シャンクスは女を引き離した。

「ふふ、お久し振りです」

女はにこりと笑った。

「俺はちーを裏切る事をしてない。更に言うなら、前の彼女にもだ」

シャンクスのきっぱりと言い切る声にちーは少なからず動揺をした。

元彼女とシャンクスとの話は有名で、社内でも良く噂を聞いた。

そんな彼女の話が突然シャンクスの口から出て、嫉妬と言う黒い感情が生まれた。

「あァ、でもちーの事があるから、裏切っちまったかな?」

シャンクスはちーの肩を抱いて困った様に笑った。

「とにかく、俺はちーに
だけは顔向け出来ねェ事はしてない」

シャンクスは女をじっと見た。

「…………なによ、なによ!私はただ貴方の事が好きで!!」

女は顔を歪めた。

「……俺はあんたの事を何とも思ってないよ」

シャンクスは優しい声で残酷に言い放った。

「っ!!私は、私は…………」

女は拳を強く握った。

「俺はちー以外の女を好きにはならねェ。かと言って、嫌いにもならねェ。そんな感情すら持たないんだよ」

シャンクスは言い聞かせる様に、しかし冷たく言葉を紡いだ。

「…………うぅ」

女はとうとう両手で顔を覆った。

「悪いとも思わない。あんたは俺の大切な女を傷付けたんだしな」

シャンクスの言葉は自分に向けられた訳でもないのに、胸が苦しくなった。

それを正面から浴びせられるこの女性がちーは可哀想になってきた。

「二度と近付かないでくれ。俺にも、彼女にも」

シャンクスは冷たい声で話を終わりにした。

「それでも!私は!!」

女はなおも食い下がろうとする。

「それ以上は止めておけ」

「シード!」

女を止めたのは、赤い髪の男だった。

「……あんたは?」

シャンクスが赤い髪の男を見る。

「俺?俺はこいつの旦那」

赤い髪の男が女を指差す。

「っ!違うの!親が勝手に!」

「それでも、籍は入ってるだろ」

赤い髪の男がやれやれと口を開く。

「あぁ!あんたがシャンクスな!こいつから良く話を聞かされる」

赤い髪の男が女を指差した。

「……旦那なら嫁をちゃんと繋ぎ止めてくれ」

シャンクスが赤い髪の男を睨むように言う。

「解ってるって。いくら親同士が決めたからって、俺だって結婚しちまった以上こいつを幸せにする覚悟はあるつもりさ」

赤い髪の男が頭をかく。

「まぁ、まだ時間はかかりそうだがな」

赤い髪の男は苦笑いをした。

「もう二度と会う事もないだろうがさ。報復とか考えないでくれよ。あんたの所に頭の回る奴がいるみたいだが、俺の所にもいる。喧嘩するには分が悪いだろ?」

赤い髪の男がニヤリと笑った。

「……二度と彼女に手出ししなきゃ何でも良い」

シャンクスはちーをちらりと見る。

「そうか!悪いな。よし!帰るぞ!」

「嫌よ!」

「わがまま言うなっての!」

赤い髪の男は女を抱えてベビーカーを押した。
一度振り返り手を振った。



「…………」

「……とりあえず、終わったな」

シャンクスは大きく息を吐いた。

「嫌な思いをさせたな」

シャンクスはちーの頭を撫でた。

「…………ううん。……さっきのシャンクス怖かった」

ちーはシャンクスを恐る恐る見上げた。

「そりゃ、お前を傷付けた相手だからな!それに、離婚寸前まで行ったんだぞ!手を出さなかっただけ褒めろ!」

シャンクスは不機嫌そうにした。

「……うん。ありがとう、シャンクス」

ちーはシャンクスに寄り添った。

「ちーも俺を信じてくれてありがとうな」

シャンクスは優しくちーを抱き締めた。

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