02
「凄い!!立派な桜の木だね!」
田中はシャンクスの手を引き、根元まで足を進めていた。
「だろ?」
シャンクスはあまりの田中の態度の違いに苦笑した。
「うん!素敵!ソメイヨシノだね!」
田中は首が痛くなる程に見上げた。
「この前ラーメン食いに行ったんだよ」
シャンクスも桜を見上げた。
「バギーさんの?」
「そう。バギーの」
田中の視線に気付きシャンクスは田中と目を合わせた。
「そしたらさ、この場所を教えてくれた」
シャンクスはイタズラっぽく笑った。
「…………どんな方法だったかは聞かないでおくわ」
「それが良いかもな」
シャンクスは何事も無いように頷いた。
「ここは市の公園なんだが、なかなか手が行き届かなくてな。昼間は散歩客でいっぱいらしいんだが、夜は誰もいない穴場だそうだ」
シャンクスが聞いてきた事を説明する。
「そうなんだ。…………電気切れかけだもんね」
田中は今しがた歩いてきた道を振り返る。
真っ暗でぞくりとした。
「桜はこんな頼りない光でも輝くんだな」
シャンクスは目を細めて桜を見上げた。
「うん。私、桜って好き」
田中は言いながらシャンクスに寄り添った。
「田中」
シャンクスは腰を折り田中に顔を近付ける。
田中はそっと目を閉じた。
ーーぐー
「…………ぷっ!!」
「悪ィ……」
見事なシャンクスの腹の虫に田中は吹き出した。
「今日は忙しかったから昼飯も食ってないんだよ」
シャンクスは照れ臭そうに苦笑いをする。
「そっか、お疲れ様!夕飯はどうするの?」
田中はシャンクスを見上げる。
「お!そうそう!弁当貰ってさ!」
出して来たのは名前をよく聞く高級焼き肉店の弁当だった。
「これ!名前聞いた事ある!」
叙○苑と書いてあるそれを興奮気味に見た。
「桜に焼き肉じゃ情緒がねェとな言われたがな」
だっはっはっ!とシャンクスは弁当片手に笑った。
「良いよ!嬉しい!食べよう!」
田中は弁当の入っていたビニール袋を地面に敷く。
「いただきます!」
「召し上がれ」
「ふふ、いつもと逆だね」
田中はにこりと笑った。
「たまには良いだろ」
シャンクスは弁当の蓋を開けた。
「うん!」
田中は桜を見上げながら焼き肉を口に入れた。
「凄い!冷めても美味しい!」
田中は驚きながらお肉とご飯、キムチを食べた。
「俺もさ、ここのは好きだな。今度店にも行こうな」
シャンクスは頬を膨らませながら言った。
「うん!それも楽しみにしてる!」
田中は幸せそうに笑った。
「あ」
弁当を食べ終わり、田中は立ち上がる。
ひらひらと花びらがシャンクスの赤い髪に舞い降りた。
「綺麗」
「ん?」
田中のうっとりとした声にシャンクスが不思議そうに田中を見上げた。
「あ!」
その拍子に桜の花びらがシャンクスの赤い髪から落ちた。
「今ね、シャンクスの髪に花びらがついてて綺麗だったの」
残念と田中は笑った。
「綺麗か?」
シャンクスが自分の髪を撫でた。
「うん!シャンクスの赤と花びらの白が凄く綺麗」
田中はシャンクスの赤い髪を撫でた。
「田中……」
シャンクスは田中を引き寄せるとそのまま口付けた。
「なら、もっと見せてやる」
「へ?」
シャンクスはニヤリと笑うと田中を抱き上げた。
「ちょっ!シャンクス怖っ!」
「まァ、気にすんな!」
「き、気にする!」
シャンクスが動くのが怖くて田中はシャンクスの首にしがみついた。
シャンクスはヒョイヒョイと田中を抱えたまま桜の木に登った。
「ほら!どうだ?」
田中を桜の太い枝に座らせる。
「うわぁぁ!!!」
目の前に広がる桜の花は先程までとは比べ物にならないほど美しく近かった。
シャンクスの赤い髪に桜のピンクがとてもよく映えた。
「シャンクス綺麗!素敵!」
田中は興奮気味にシャンクスを褒めた。
「そうか?」
シャンクスは田中の髪を耳にかけた。
「俺にはお前の方がよっぽど綺麗に見えるよ、田中」
シャンクスは言いながら田中に口付けたを贈った。
「あ!写真!」
田中は携帯電話を取り出した。
「一緒に撮って?」
田中がにこりとシャンクスを誘った。
「よし!」
シャンクスが田中の肩を抱いて近付けた。
「撮るよー。ハイ、チーズ!」
ーーカシャッ
「うん!シャンクスカッコイイ!」
田中は満足そうに画面を確認して保存を押した。
「田中」
「ん?」
振り返った所を口付ける。
ーーカシャッ
「よし!良いのが撮れた」
シャンクスは満足そうに画面を確認して保存を押した。
「や!ちょっと!」
田中は顔を赤くしながら慌ててシャンクスの携帯を奪おうと試みる。
「消してやんねェよ!」
シャンクスはイタズラっぽく舌を出して笑った。
「なァなァベック!これ見ろよ!」
「仲が良くて羨ましいな」
「だろだろ?」
「だが、その待ち受け画面は田中が怒らないか?」
「怒った顔も可愛いよな!」
「…………そうか、それは良かったな」
[ 2/3 ][*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]