01

それは、一本の電話から始まった。



ーーピリリリリリ


「あ、シャンクスだ。もしもし!」

田中は携帯電話をとった。

『お、田中!夕飯はもう作っちまったか?』

シャンクスは少し焦りながら言った。

「え?いいえ。そろそろ始めようかと思ってたけど」

田中は不思議そうに声を出す。

『そうか、良かった。今日は外で食うから用意しなくて良いぞ』

シャンクスはホッとした様に言う。

「わかった。……遅くなるの?」

やはり、シャンクスの帰りが遅くなるのは寂しい田中。

『え?あァ、悪い。言い方が悪かったな。田中、一緒に今日は外で食べないか?』

シャンクスは楽しそうに誘った。

「え!良いの?」

田中は嬉しそうに声が高くなる。

『もちろん!俺が誘ってるんだしな』

シャンクスは電話越しに笑った。

「嬉しい!じゃあ、用意して待ってるね」

田中も電話越しに笑った。

『あァ。なるべく早く帰るから。あ!なるべく動きやすい服でな!』

「ん?歩くの?」

『たまには良いだろ』

「わかった!じゃあ、待ってるね」

『あァ、出る時にまた連絡する』

電話を切ると、田中はウキウキとしていた。

「何着ていこうかな!動きやすい服って言ってたからこの前のズボンに、でもやっぱりお洒落もしたいなぁ」

田中は上機嫌で着替えをし始めた。







シャンクスから「こらから帰る」コールを貰って、30分ほどしてから下の駐車場で待つ。
するとすぐにシャンクスの車が入ってきた。

「お!田中!準備良いな!じゃあ、行くか」

シャンクスも機嫌良さそうに笑った。

「はい!」

田中が助手席に乗ると、シャンクスは車を発車させた。

「どこへ行くの?」

田中は楽しそうに聞く。

「少し遠いが、きっと田中も気に入ると思うよ」

シャンクスはにかりと笑った。







シャンクスはぐんぐんと車を走らせていく。
日のある内に出たが、いつの間にか外は真っ暗になっていた。

「……ここ?」

山道を抜け、暗い公園へとたどり着く。
田中は少し不安そうにシャンクスを見上げた。

「あァ。よし、行くぞ!」

シャンクスは荷物を片手に持ち、もう片方の手で田中と手を繋いだ。

「……」

「大丈夫だって!俺がいるだろ!」

不安そうな田中の手を握り締めながらにかりとシャンクスは笑った。


消えかけの頼り無い電灯に照らされた道を歩く。

隣にはシャンクスがしっかりと手を繋いでいたが、やはり不安そうにキョロキョロと周りを見た。

「だっはっはっ!」

「っ!!!」

沈黙をしていたシャンクスが突然笑い出した。

田中はその笑い声に驚いてびくりとした。

「そんなにびくびくとするなよ!俺がいるだろ」

堪えきれない笑いを浮かべてシャンクスが言った。

「う、うん。解ってるよ?でも」

「俺はそんなに信用ないか?」

「ううん。シャンクスが強いの知ってるよ。ただ」

「ただ?」

シャンクスは先を促した。

「お化けとか出てきたら流石のシャンクスでも対抗出来ないでしょ?」

「…………」

真剣な田中の表情にシャンクスは驚いた顔で押し黙る。

「そいつは確かに無理だ」

シャンクスはキッパリと言い切った。

「うぅ……」

「でも、ほら!見てみろ!」

シャンクスが荷物を持っている方の手で道の先を指差した。

「…………うわぁぁ!!!」

田中はその光景に驚いて目をキラキラとさせた。






そこには頼り無い電灯に照らされた桜の木々が咲き乱れていた。


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