01

「おはよう!エース!」

可愛らしい女子生徒がエースに挨拶をした。

「おう!」

エースは手をあげて答える。

「何それ?」

クスクスと笑いながら指差すのはエースが小脇に抱えた大きなガラス瓶。
中には色とりどりの飴玉が入っていた。

「これ?ホワイトデー」

エースはにかりと笑った。

「そう言やお前もくれたよな」

エースは瓶の蓋をひねり中身をひとつ取り出した。

「えー!私本命だったのにー!」

ぶーと可愛らしい頬を膨らませる。

「チョコなんてどれも一緒だろ?」

(あいつのくれた奴以外は)

エースはそう胸中で付け加えながらずいっと飴玉を女子生徒の口許に運ぶ。

「ほれ、あーん」

エースの行動に女子生徒が顔を赤くしておずおずと口を開けた。

「旨いか?」

エースの指が唇に触れるより速く彼は指を離した。

「…………うん」

「そっか!じゃあな!」

エースはにかりと笑うと固まった彼女に手を上げた。



エースはバレンタインにたくさんのチョコをもらい、それを見かねたマキノがこの飴玉を用意したのだ。

ただし、渡し方の指導をしなかったせいで、彼女達は義理で返しているとは分からないだろう。





「確認したいんだが、お前馬鹿だろ」

一部始終を窓から見ていたキッドが呆れながらエースを見た。

「は?何がだよ」

エースは半分以上減った飴玉の瓶を机に置いた。

「馬鹿なライバルが一人減って良かったよ」

相手にならないとキッドはため息をついた。

「そう言やお前もお返ししたのか?」

エースはキッドを見た。

「あ?」

キッドがエースを睨み付ける。

「ほら、一年の女子。ココア貰ったろ」

エースが笑いながら言う。

「……あァ、あれな。さっきそこで会って購買部でペロキャン買わされた」

キッドは真面目な顔で言う。

「…………それ、ヤバくないか?」

エースはどう考えても脈ありなキッドの行動に呆れた。

「で?お前は?」

エースが不機嫌なローを見た。

「ひとつしか用意してない」

ローが当たり前だと声を出す。

「マジか?」

エースが驚く。

「こいつがチョコを受け取る事自体がおかしいんだよ」

キッドが嫌そうに声を出す。

「仕方ねェだろ」

「毎年それが嫌でサボる癖によ」

ニヤリとキッドが笑った。

「まァ、とにかく!抜け駆けなしの放課後結構だからな!」

エースが2人を睨む様に言う。

「解ってる」

「あァ」

キッドとローがニヤリと頷いた。

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