04
宴が始まって数時間が経った。
「おい、ルフィ!こんな所で腹出して寝るな!」
ガーガーと気持ち良さそうにイビキをかいて眠るルフィをエースが揺り動かす。
「エース!可哀想だよ。部屋に運んであげよう?」
くるとんは席を立つ。
「そうだな。くるとんも来てくれ」
「うん」
エースはルフィを抱えるとまだ盛り上がりを見せるリビングから二階へと上がった。
「ほら、ちゃんと寝ろ」
エースは少々乱暴にルフィをベッドへ寝かせた。
「お休み、ルフィくん」
くるとんはルフィに布団をかけた。
「へ?」
部屋を出て、階段へ行こうとするくるとんをエースは自分の部屋へと連れ込んだ。
「どうしたの?」
くるとんは不思議そうにエースを見上げる。
「いや、2人になりたくてさ」
エースはくるとんと並んでベッドに腰掛けた。
「疲れたか?」
エースがくるとんを覗き込む。
「うん!でも、何か楽しいね!」
くるとんはにこりと笑った。
「そうか!良かった」
エースはホッとしたように言った。
「あのオヤジも人ん中どかどかと入って来るもんな。自分が気に入った相手なら尚更だ」
エースはやれやれと呆れた様に言う。
「……ぷ」
くるとんは思わず吹き出した。
「な、なんだよ」
「だって!それを言うならエースもじゃない!私の中にどかどかと入って来て、あっという間に私の心取って行ったじゃない!」
クスクスとくるとんは楽しそうに笑った。
「そっか、あの人がエースのお父さんなんだね」
くるとんはふわりと笑った。
その笑顔にエースはゆっくりと顔を近付ける。
くるとんもそれに答える様に目を閉じた。
ーーガチャ
「あー、気にせず続けてくれ!」
突然ドアが開いてロジャーが入って来た。
「っ!!!」
「……ふざけんな!クソオヤジ!!!」
くるとんはとっさにエースから離れ、エースはロジャーを睨み付けた。
「良いのか?良いならエース!来い!」
「は?ふざけんな!」
「良いから、良いから!」
「離せ!この、馬鹿力!!!」
エースはロジャーに引きずられる様に部屋から出て行った。
「お邪魔して良いかしら?」
エースと入れ違いに入って来たのはルージュだった。
「あ、はい!」
くるとんは緊張気味に頷いた。
「ここがエースの部屋か」
ルージュはくるりと見回してからくるとんの隣に腰掛けた。
「私ね、エースを産んだ時、ちょっと大変で、生死をさ迷ったの」
ルージュがポツリと話し始めた。
「子供を産むって、みんなやっている事だから簡単に思うでしょ?でもね、やっぱり母親は命懸け。それでも私はエースを産みたかった」
ルージュは懐かしがる様に目を細めた。
「それでもね、私はロジャーを選んだの」
ルージュはくるとんを見つめた。
「ロジャーはエースが産まれる何年か前に不治の病に侵されたわ」
「え?」
「田舎の空気が綺麗な所じゃないと生きているのも辛いはずなの。だから、私はエースを残してロジャーの元へ行ったわ」
ルージュがきつく手を握るのに気付いた。
「エース自身にも聞いたのこっちでガープさんやルフィくんと暮らすのと私達と一緒に行くの、どっちが良いって、そしたらね」
『オヤジは俺がいなくても平気だけど、ルフィはまだまだ一人じゃダメだ!だから、俺は行かねェ!!』
「って!」
クスクスとその時の事を思い出した様にルージュは笑った。
「親として悲しかったけど、私はもうエースを兄にできない体だったから」
ルージュは笑ったが、手は小さく震えた。
「くるとんさん」
「は、はい」
「エースは強がってるけど、内面はナイーブで優しい子よ。私はもう親として失格だから、こんな事言うのもなんだけど、」
ルージュは真剣な顔をした。
「エースを宜しくお願いします」
ルージュは深く頭を下げた。
「…………私はエースに何も出来ません」
「…………」
「ただ、そばにいるだけ。お母さんの様に生死を賭ける事も出来ないかも知れません」
くるとんはルージュを真剣に見た。
「エースを産んでくれて、ここに残してくれて、本当にありがとうございます」
くるとんは頭を深く下げた。
「っ!!!」
ルージュは目に一気に涙が溜まる。
「あ、ありがとう!私ね、女の子も欲しかったの!」
ルージュは溢れる涙を両手で拭いながら言う。
「はい!宜しくお願いします!!お母さん!!」
くるとんの目にも涙が溜まっていた。
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