02
「っ、あのオヤジ、あれで病人か?」
エースは顔を引き吊らせた。
「ねぇ、エース」
「舌噛みたくなかったら、喋るな!お前を拐った奴なんか比べ物にならないくらい厄介だ!」
「っ、」
エースの真剣な顔にくるとんは黙って頷いた。
「エース!!止まれ!!」
ロジャーは再びエースを追い始める。
「っ!キッド!!」
エースは右の道にキッドを見付けて足でブレーキをかけながら曲がった。
「何してんだ?」
キッドはキラーと共に次の講義へ向かう途中の様だ。
「追われてる!」
「その様だな」
エースの声にキラーがロジャーを見る。
「面倒事はごめんだ」
キッドが嫌そうに手を振る。
「んな事言うな!」
エースの珍しい焦り声にキッドがすっとロジャーの前に立つ。
「ほほぅ、なかなか気合いの入った髪だな。シャンクスを思い出す」
ロジャーはニヤリとキッドを見た。
「え?シャンクスさん?」
バイト先の常連であるシャンクスの名前が出て不思議そうにするくるとん。
「お!お嬢さんはさっきの親切な子!シャンクスも知ってるのかい?」
ロジャーが楽しそうに笑った。
「キッド!悪い!頼む!」
エースはそれだけ言うと走り去った。
「なるほど、こんな所で伝説の怪物に出会えるなんざ、俺は運が良いな」
ニヤリとキッドが笑った。
「運が、悪かったな」
ロジャーもニヤリと笑った。
「…………違いない」
キラーは冷や汗が流れるのを感じた。
「っはぁ、はぁ、はぁ、はぁ」
駐輪場まで来ると、エースは肩で息をした。
「だ、大丈夫?エース……」
こんなに弱まったエースを見るのは初めてだった。
「とにかく、はぁ、逃げるぞ」
エースは鞄からバイクの鍵を出し、ヘルメットを外す。
「エース」
「っ!!!」
にこりと笑うルージュにエースはびくりと体を震わせた。
「久しぶりね」
ルージュは楽しそうに声をかけた。
「…………あァ」
エースはルージュに背を向けながらも頷いた。
「その子、彼女?」
ルージュがちらりとくるとんを見る。
「あァ」
エースが頷く。
「付き合ってるの?」
ルージュは少し寂しそうに声を出す。
「…………大学を出たら結婚するつもりだ」
エースはしっかりとし声でルージュを正面から見た。
「ふふ、やっとこっち向いた」
ルージュは嬉しそうに笑った。
「……」
「大きくなったね!そっか、もう結婚とか考える年なのね」
ルージュは染々と声を出す。
「……そりゃ、前からずいぶん経ったからな」
エースはポツリと呟いた。
「ごめんね、なかなか会えなくて」
ルージュがそっとエースを抱き締める。
「っ」
くるとんはそれに衝撃を受けた。
どう見ても元カノとの再会だ。
「お袋、俺はもうガキじゃねェ」
「あら!エースはいつまでも私達の子供よ!」
…………
…………
…………
「………………へ?」
くるとんは思わずポツリと呟いた。
「おー!ルージュ!エースを捕まえたか!」
ロジャーが少し土埃がついたズボンでやって来た。
「えぇ!あなた!」
ルージュは嬉しそうに笑った。
…………
…………
…………
「……………………あなた?」
くるとんは再びポツリと呟いた。
「あァ!さっきの貴女がエースの恋人ね?!」
ルージュはにこりとくるとんの手を取った。
「初めまして、エースの母、ルージュです!」
ルージュは嬉しそうに笑った。
「おォ!!やるなぁ!エース!エースの父、ロジャーだ!」
ロジャーはにかりと笑った。
「え、えぇぇぇ?!」
くるとんは大声で叫んだ。
「はぁ……」
エースはテンガロンハットを深くかぶるとため息をついた。
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