02

(嫌な席に座ってしまった)

職場での飲み会は殆ど断っていたが、会社の上役も出る飲み会で断りきれずに来たのだ。

(面倒だ)

セクハラギリギリのおやじとして有名な上役が隣にいた。

酒を飲まされ面白くない下品な会話にも笑顔で答える。

まだ、直接触って来ないだけましだろうと酒を飲み続けた。








「ほんじゃ、ベック俺は先に帰るぞ」

アルコールが入り、上機嫌でシャンクスはベックマンの肩を叩いた。

「あァ、後は任せろ。それは?」

シャンクスの手に持った物が気になり聞く。

「これか?もちろん●●へのお土産だよ」

シャンクスは愛しの妻に土産だと嬉しそうに笑った。

「そいつは喜ぶな」

ベックマンが火のつかない煙草をくわえた。

「だろ?だろ?!まァ、明日は休みだしな!」

るんるんと音が鳴りそうなシャンクスが嬉しそうに言う。

「そいつは良かったな」

ベックマンが少々呆れ気味に言う。

「お前も早く結婚しろな!」

じゃ、お疲れ!とシャンクスは飲み会のはけた店から出て行った。

既に飲み会は終わっていて、二次会へ行く者、帰る者などで会場には人がいなかった。

ベックマンは最後の支払いと後始末を任されていた。
下の人間にやらせれば良いのだが、この店のオーナーがベックマンと知り合いであったので、彼がその役を買って出たのだ。

「あの……」

店員がベックマンに話しかける。

「どうかしたか?」

「トイレで寝ていらっしゃる方がいるのですが」

どうにかして欲しそうな困った顔で店員がベックマンに言う。

「……どこだ?」

「こちらです」

やれやれとため息交じりにベックマンが言うとさっそく店員が案内する。




「…………□□か?」

珍しいモノを見るような目で、トイレに踞る○○を見る。

「おい、起きろ」

ベックマンが軽く○○の肩を揺らすが全く反応はない。

「起きろ!おい!」

今度は強く揺さぶる。

「あい?」

○○は完全に目を開けない状態で声を出す。

「帰るぞ」

ホッとしながらベックマンは声をかける。

「…………」

「おい」

再び目を閉じる○○。

「すまないが、タクシーを呼んでくれるか?」

ベックマンが後ろにいた店員に声をかける。

「は、はい!」

店員は慌ててトイレから出て行った。






ほどなくしてタクシーがやって来た。

ベックマンは○○を抱き抱えたまま乗り込んだ。

「家はどこだ?」

「ん?家はタンス……」

「………………」

意味のわからない答えにベックマンは眉間のシワを深くさせた。

ベックマンは取り合えず、自宅マンションをタクシーの運転手に言う。





「着きました」

運転手がベックマンに振り返る。

「悪いが、こいつが起きたら道を聞いてくれ」

「こ、困りますよ!」

ベックマンの言葉に運転手が慌てる。

「うん…………」

「起きたか?」

運転手の声に○○が反応をした。

「…………また、私を置いていくの?」

○○は意外としっかりとした声を出した。

「…………」

その言葉と熱っぽい眼差しに思わず言葉を無くすベックマン。

「お客さん!彼女を置いてくなんて!!!」

○○の言葉に運転手が「酷い男だ」とベックマンを非難気に見た。

「…………はぁ」

ベックマンはため息を漏らすと金を払い○○を抱き上げた。

「何でこうなっちまうのか……」

ベックマンはやれやれとため息を漏らすと腕の中で眠る○○を見た。

「ったく、可愛い顔しやがって」

チッと舌打ちをしてマンションへと入って行った。

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