その後の時間2
「ただいまー」
シャンクスは玄関に入りながら声を出す。
「お帰りなさい!お疲れ様でした」
●●がにこりと出迎えた。
「いやー、参った」
シャンクスが苦笑した。
「どうしたの?」
「いや、ベックマンと○○さんがさ」
「○○?」
親友の名前に●●が心配そうにシャンクスを見た。
「飯食いながら話すよ」
シャンクスは●●の頭を優しく撫でた。
「わかった。準備するね」
●●はキッチンに入り、夕飯の支度を始めた。
「で?どうしたの?」
●●が食事を始めたシャンクスに詰め寄る。
「何かよ、ベックの奴合鍵を渡したらしいんだよ」
シャンクスは焼き鮭を頬張った。
鮭の程よい塩が体を癒す。
「へぇ!○○良かった!」
●●は自分の事の様に喜んだ。
「で、さ。『一緒に暮らそう』とか何とか言ったらしいんだよ」
シャンクスが味噌汁を飲む。
「……わかった。断られたんでしょ?」
「良く分かったな!」
シャンクスは驚いて●●を見た。
「たぶんだけど、○○この前ね、ベックマンに子供が欲しいみたいな事言ったんだけど、あまり良い返事が貰えなかったらしいの」
●●は苦笑しながらため息をついた。
「冗談だろ」
シャンクスが軽く言う。
「そうだろうけど……。○○って、昔から家族を持つ事に憧れてたし」
●●は心配そうに言う。
「うーん。そうか」
シャンクスは頭をかいた。
「まぁそれだけじゃないんだけどね」
●●はクスクスと笑った。
「○○、来てたのか」
ベックマンが家に帰ると○○がいた。
「……迷惑?」
○○は無表情で聞いた。
「そんなはずはない」
ベックマンはくすりと笑った。
「……良いの。今日はこれを返しに来ただけ」
○○はベックマンに貰ったばかりの合鍵を突き出す。
「……何故?」
ベックマンは眉間にシワを寄せた。
「私、結婚するなら子供が欲しいの。だから、子供が欲しくない人と結婚なんて出来ない」
○○は怒る事なく真剣に言う。
「……俺がいつそんな事を言ったんだ」
ベックマンは低い声を出した。
「この前よ、車屋で」
○○は鍵を突き出しままだ。
「冗談だろ」
ベックマンは煙草をくわえた。
「例えそうだとしても私はかなり勇気を出して言ったの。こんなモヤモヤした気持ちで付き合えないです」
○○はベックマンが受け取ろうとしない鍵をテーブルの上に置いた。
「悪かった。子供自体は欲しいが俺も年だからな」
ベックマンは紳士的な態度で頭を下げた。
「…………副社長はそんなに年でもないです」
○○は両親がいないせいか、年上に憧れを抱く事が多い。
「俺も子育てには参加したいからな。なら、すぐにでも籍を入れるか?」
ベックマンの真剣な顔に冗談では無い事が○○にも分かった。
「…………そんなに急いで答えを出さなくても良いです」
「答えを急かすのは○○だろう」
「…………」
ベックマンの言葉に○○は反省した様に押し黙る。
「すみません。思考が未成熟で」
○○は頭を抱えた。
「俺はそこを含めて結婚するんだ」
「…………副社長」
○○はベックマンに尊敬の眼差しを送る。
「さて、この鍵はどうする?」
ベックマンはテーブルに置かれた鍵を持ち上げた。
「…………受け取ります」
○○は手のひらを差し出した。
「でも、一緒には住みません」
「何故?」
「……」
「○○?」
「……私、嫁入りに憧れていまして。結婚する時は家から出て行きたいんです」
「……なるほど」
「はい。なので、副社長とは結婚するまで同じ家にいたくないです」
「…………そうか」
「はい!」
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