01

朝起きて食事をとる。
料理が苦手な○○は食パンにマーガリンをぬってインスタントの珈琲を飲む。

食事が終わると洗顔。
丁寧に洗い、化粧水はたっぷり。
保湿クリームも欠かせない。

化粧をバッチリと決める。
服も隙なく着こなす。


前に勤めていた会社を本社栄転の直前に辞めてしまった。

大手だったが、まぁ今ではこれまた大手に育った赤髪に勤められているから良いだろう。



「よし!時間ぴったり」

私は荷物を手に部屋を出た。

高いヒールをカツカツと鳴らして駅へ向かう。

いつもの電車に乗り、会社へ。

「おはようございます」

「おはようございます!□□さん!いつ見てもお綺麗ですね」

男性社員が声をかけてくる。

「ありがとう」

にこりと完璧な笑顔で答える○○。

洗礼された美しさ、努力を惜しまぬ美への探求心。

仕事もそつなくこなし、彼女は社会での地位を確立していた。



しかし、完璧さゆえに彼女は孤独であった。







「これ、夕方までに仕上げてね」

○○は企画書の訂正を部下に渡す。

「えぇ?!無理ですよ!」

部下の若い男が冷や汗をたらす。

「無理とか簡単に言わないの。出来るか?出来ないか?そうじゃないでしょ?」

○○はにっこりと笑みを深くした。

「やるの」

○○の綺麗な口元から溢れ出た言葉に男は顔を赤くする。

「は、はい!!」

頑張ります!と叫ぶと男は席に戻った。





「で、出来ました……」

「お疲れ様」

男の仕事を然り気無くサポート等をした○○はにこりと微笑んだ。

「ありがとう、お陰で助かったわ」

○○は言いながら出来上がった企画書をチェックする。
問題はなさそうだ。

「これを今度の会議に回すわ」

「あ、ありがとうございます!!」

男は頭を下げた。

「じゃあ、お疲れ様」

○○はそれを大事に持つと席を立つ。

「お疲れ様でした!」

男は頭を再び下げた。



フォローも仕事も出来、上司にも部下にも一目を置かれていた。

「…………はぁ」

○○はついため息をついてしまう。

「いけない!ため息は幸せが逃げちゃう!前向き、前向き!」

○○は自分にカツを入れた。


孤独と言うよりは、自分で相手との距離をおいていた。

誘われても上手に断り壁を作った。


理由はそれなりにあった。


まず第一に彼女には家族と言う物がいなかった。

物心付いた時から施設にいて、大勢の子供と暮らしていた。

施設の隣には同じ年の女の子がいて、彼女とその家族は○○を温かく迎え入れてくれた。
お陰でグレずに済んだのだ。

しかし、彼女が大学生の時に事件は起きた。
彼女が○○を見捨てたのだ。

見捨てたと言うと語弊があるが、彼女は突然何も言わず姿を消したのだ。

今でも○○は彼女が何故自分に何も言わず姿を消したのかは知らないが、心の底では信じていた。

「何故自分をあてにしなかったのか?」

それが一番知りたい事だった。

そして、彼女の家族も亡くなった。

○○がひとりぼっちの時に側にいたのが仕事場で知り合った男だった。

声も体も大きく、料理が趣味だと言った男は○○を優しく撫でた。

2人は惹かれ合い付き合った。


しかし、この男女癖が悪かった。

美人に弱く、誘われるとホイホイと付いていく。

笑顔が多く、話好きで冗談も上手い。

○○は次第に彼を信用出来なくなって行った。


そこで、本社栄転間近だったが、彼のいる本社から逃げるように仕事を辞めたのだ。


それから○○は自分に厳しく、他人とは一線引く様な性格になった。


もう、傷付くのが怖かったのだ。

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