その後の時間
「副社長」
○○がベックマンのデスクに近付いた。
「どうした?」
ベックマンは書類から目を離した。
「あの、ご相談したい事が」
「なんだ?」
○○にしては歯切れの悪い言い方にベックマンは真剣に聞き返す。
「個人的な事なので……」
「なら、仕事が終わってからで良いか?」
「お願いします」
「分かった」
○○はベックマンの言葉に神妙な顔で頭を下げると自分のデスクに帰った。
「…………なぁ」
ルゥがヤソップに声をかける。
「なんだよ」
ヤソップが振り返る。
「ベンと○○って付き合ってるんじゃねェのか?」
ルゥが不思議そうに声を出す。
「そう言ってたな。指輪もはめてるし」
ヤソップが頷く。
「何でよそよそしいんだ?」
「……職場だからだろ?」
「個人的な相談なんて、2人の時にすれば良いのにな」
「……そうだな」
2人は不思議に思った。
「どうしたんだ?」
ベックマンが家のソファーに座る○○に声をかけた。
「……これなんですが」
○○はおずおずと出したのは預金通帳。
「……」
ベックマンは煙草に火をつけてから、それを受け取った。
中を開くと大金が振り込まれており、入金したのはシャンクス。
「●●の両親のお墓のお金を振り込んで貰った筈なんです」
借金の残りの金もシャンクスが払い切ったのだ。
「ですが、多過ぎて……。抗議をしたら『●●の実家を管理してたからそのお礼』とか言うんです」
○○は困りきった顔をした。
「あァ、そう言う事か。有り難く貰っておけ」
ベックマンは通帳を○○に差し出す。
「……良いのかしら」
○○は困った顔のまま通帳を受け取った。
「当たり前だ。それだけの事をしたんだ」
ベックマンが頷く。
「……なら、有り難く貰っておく事にする」
○○は通帳を開いて金額を見た。
「何か好きな物を買えば良いだろう」
ベックマンは紫煙を吐き出した。
「……」
○○はそっとため息をついた。
「どうした?」
「私、この為に頑張ってたのかしら?」
○○は不思議そうに声を出した。
「……○○は俺の為に生きれば良い」
ベックマンは○○を抱き寄せた。
「……そうなんだけどね」
○○は自分を不思議に思いながらもベックマンに身を委ねる。
「何か好きな物を買えば良い。何かないのか?」
ベックマンが苦笑しながら聞く。
「うーん。あ、車が欲しい」
「車?」
ベックマンは○○を見る。
「えぇ、私車は大好きなの。白ひげにいた時も良く車で外回りしてたわ」
○○はそうだと手を打つ。
「そうか。なら、一緒に見に行ってやろう」
「本当?」
「あァ」
「ふふ、頼りにしてるわ、副社長」
○○は嬉しそうに笑った。
「これにしようかな」
「ワンボックス?」
「うん。背が高いし、ボンネット短いのは魅力的」
「……そうか」
「不満?」
「……いや」
「私、天涯孤独だから家族がたくさん出来たら良いな」
「…………」
「……副社長は仲間に入れてあげないから良いですよ」
「拗ねるな」
「もう、知りません」
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