12

●●とシャンクスが気付かない内に○○の姿はなくなっていた。

「あれ?○○は?」

●●は不安そうにキョロキョロと辺りを見回した。

「先に帰った」

ベックマンが煙草を携帯用灰皿につめた。

「…………○○、おかしくなかったですか?」

●●が心配そうにベックマンを見上げる。

「…………さァ。俺には分からん」

ベックマンは無表情に言う。

「あの子、昔から何て言うのかな。ああ見えて愛に飢えてるって言うか……寂しがり屋さんなんです。だから、1人で帰るなんて……」

●●の少し顔色が悪い。

「……わ、私やっぱり心配だわ。シャンクス、実家には来週で良い?」

●●は○○の後を追いたいとシャンクスを見上げる。

「なら、俺が行こう。ほら」

ベックマンが車の鍵をシャンクスに投げる。

「お。宜しくな!」

シャンクスがにかりとベックマンに笑った。

「大切な部下だからな」

ベックマンは○○の消えた方へと早足で向かった。

「必死になっちゃってな!」

シャンクスが楽しそうにベックマンを見る。

「……大丈夫かな、○○。まだ私の事怒ってるのかな?」

「何でそう思う?」

シャンクスは不思議そうに聞き返す。

「だって、仕方がなかったとは言え、連絡もしないで。私だけ幸せになって……」

ポツポツと●●は不安そうに口を開く。

「大丈夫だ。もしお前を嫌ってるなら墓なんか建てないし、実家も掃除なんかしない。ましてや俺達をここまで案内しないだろ」

シャンクスは安心させる様に●●の頭を撫でた。

「……うん」

「それに、ベックに行かせてやれよ」

シャンクスがニヤリと笑った。

「え?」

「あいつがあんなに1人の女に執着するのは珍しいからな」

だっはっはっ!とシャンクスは楽しそうに笑った。









ベックマンは早足のまま歩いて行く。

すると、川を挟む大きな橋に出た。

「あれは……」

橋の柵の向こうに○○がいた。

「っ!まさか!」

ベックマンは走り出した。

「○○!!!」

「へ?!」

ベックマンが○○を掴む。
だが、勢いが良過ぎた。

「っ!きゃぁぁぁぁ!!!」

「っ!!」

ベックマンはとっさに○○の頭を抱き抱える様にして、


ーーボチャーン


落ちた。










「信じられない」

「…………すまない」

濡れた自分を抱くように○○はイライラと声を出した。

それに、ベックマンがすまなそうに答える。

「こんな季節に寒中水泳とか、本当に勘弁して欲しいのですが!ただでさえ泊まるなんてないから、着替えなんてないし!タオルなんて持ってないし!!」

○○はイライラと捲し立てる。

「私が自殺するとでも思ったんですか?!」

○○はじろりとベックマンを睨む。







先程橋の上でミャーミャー鳴く声が聞こえ、キョロキョロと辺りを見回すと子猫が柵の向こうにいい。

呼んでも足がすくんで動けない様で、仕方なく柵の向こうに行った。

子猫を戻したところを勘違いしたベックマンが在られて、そのまま落ちたと言う事だ。




「…………寒い」

本格的に寒さで青白くなった○○が呟いた。

「大丈夫か?」

ベックマンが眉間にシワを寄せる。

「ダメです……」

○○はカタカタと震える体を自分で抱き締めた。

「…………」

ベックマンが辺りを見回した。

「行くぞ」

ベックマンは○○を促した。

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