11

それから毎日の様に○○はシャンクスに連れられ、幹部達と一緒に昼食をとった。

色々噂は流れたが、気にする事は無かった。








「○○!」

そして、土曜日の昼過ぎ。

●●は嬉しそうに○○を呼んだ。

「…………●●」

○○はため息混じりにその車を見た。
どう見ても高級車だった。

「●●ってやっぱり大会社の社長婦人なんだね」

○○は嫌みではなくそう言った。

「え?これ?ベックマンさんの車だって!さぁ、行こう!」

●●は○○を引っ張って車の後部座席に乗った。

「いらっしゃい。じゃあ、どこ行くんだ?」

シャンクスが助手席から首を伸ばした。

「はい。ここへ」

○○は●●に見せない様に地図と住所を渡す。

「解ります?」

○○はシャンクスからベックマンに渡った地図を見ながら聞いた。

「任せておけ」

そう言うと車を発車させた。







和やかに会話を楽しみ、車は海の近くを走る。

「…………ここ……」

●●は窓の外を見て呟いた。

「あ、すみません。そこの花屋に寄って貰えますか?」

○○が道端の小さな花屋を指差す。

「了解」

ベックマンは通行の邪魔にならない所へ停車させる。

「すぐに済みます」

○○は1人車を降りる。


「なんだ!○○ちゃんか!凄い車だね!どこのヤクザかと思ったよ!」

花屋の店主がケラケラと笑った。

「あはは!やっぱり?」

○○は苦笑する。

「いつもので良いかい?」

「お願いします」

○○が言うと花屋の店主が手早く花束を用意した。


「すみません。お待たせしました」

○○は花束を抱えて車に乗る。

「お?誰かに会うのか?」

シャンクスが花束を見る。

「えぇ。……大切な人達に」

○○は悲しそうに笑った。






海の見渡せる丘の上に○○達は来ていた。

「…………○○」

「こっちよ」

その場所に戸惑う●●の手を○○が引っ張った。

その後ろを2人の男が静かに追いかける。



「…………これ」

「そう、お墓」

○○は周りより少し小さなお墓を見る。

「こ、これ!もしかして!」

●●は○○を振り返る。

「急に死んじゃったから、先祖代々の墓なんて知らないし。まだ新米のぺーぺーだったから、これ以上立派なお墓は建てられなかったわ。と、言うか正直まだ借金はあるの」

○○は笑いながら墓を綺麗にして花を供える。

「あの時、必死に守ったから何とか位牌とかは私のもとに残ったからね」

○○がしゃがんで手を合わせる。

「っと、危なっ!!!」

○○のその背中に●●が抱き付いた。

「あ、ありが、」

ぽろぽろと泣きなから礼を言う●●。

「わ、私。こわ、怖くて、いま、まで、お父さんと、お母さんの、こと、か、かんがえ、ないようにって」

下唇を噛みながら止めどなく流れる涙を我慢する様に●●は声を出す。

「本当は、もう、お骨も無いって思ってた!会えないって!思ってた!」

●●はぐずぐずと泣いた。

「うん。感謝しなさいよ」

○○は背中の暖かさを感じた。

「うん!うん!うん!」

●●は何度も頷いた。

「ちょっと、シャンクスさん」

○○がシャンクスを呼ぶ。

「これは私の役目じゃない」

○○はにこりと笑って●●をシャンクスに渡す。

「良かったな、●●」

シャンクスは優しく●●を包み込む。

「うん!」

●●はシャンクスに抱き付いて頷いた。

「借金はこの墓のか?」

シャンクスが○○に聞く。

「え?えぇ」

「なら、それは俺に払わせてくれるか?」

「……でも」

「頼む。●●の両親は俺の両親でもある」

シャンクスは頭を下げた。

「…………分かりました。●●と、おじさんとおばさんの事、宜しくお願いいたします」

○○は深く頭を下げた。

「ありがとう」

シャンクスは柔らかく礼を言う。

「ほら!●●!おじさんとおばさんにご報告は?結婚したんでしょ?」

○○はほらほらと●●とシャンクスを墓の前に押しやった。

「うん!」

「そうだ。後、これ」

「っ!これ!」

○○の差し出した鍵を驚いて見た。

「うん。●●の実家の鍵!ちゃんと掃除してるからいつでも中に入れるよ」

○○はクスクスと笑った。

「あ、ありが、とう!!」

●●は再びぽろぽろと泣き出した。

○○は2人の姿を見て、くるりと踵を返した。

「どこへ行く?」

ベックマンが○○を呼び止める。

「もう、私の役目は終わりました」

○○は振り返らずに声を出す。

「これまでは、お墓の借金と●●の家を守るために生きて来ました。だから、もう私は生きる意味がない」

○○は小さく言う。

「そう言うな。お前が生きる意味なんていくらでもある」

ベックマンが言う。

「……そうですね」

○○は足を進める。

「どこへ行く」

ベックマンが同じ事を聞く。

「いつもここからの帰り道は1人でしたから。2人を宜しくお願いします」

○○はそう言うと出口へと早足で去っていった。

[ 12/29 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -