外側からの存在確認
妊娠も7ヶ月になり、お腹も大分目立ち始めた頃。
悪阻も治まり、のんびりと過ごしていたある日の事。
その日は梅雨に入っていた事もあり、家の中で名前事典を読んでいた時だった。
「ふーん。色んな名前があるのね」
○○はペラリとページを捲り、暖かいミルクを口に運んでいた時だ。
もぞりとお腹が動く感覚。
「ん?」
何かの間違えかと思い、そっと辞典を置くとジッとお腹を見る。
すると、もぞりとやはりお腹の中が動く感覚がした。
「っ!!これが胎動!!」
今まで胎動と言うモノを感じなかった○○には感動的な瞬間だった。
早い人だと5ヶ月頃に解ると言われていたが、○○は悪阻の苦しさや、6ヶ月に入ってもわからないでいたのだ。
「っ!あ、また!ぐにーって!」
○○は感動のまま携帯を手に取る。
写るはずも無いが動画を起動させた。
「あはは!また!元気に動いてる!」
病院に行く度に「赤ちゃん動いてますか?」と聞かれていて心苦しかったので、○○は一人部屋でキャッキャッ!と騒いだ。
「ただいまー」
シャンクスは靴を脱ぎながら部屋へと入る。
「今日は遅くなっちまったけど、会社の子が差し入れてくれたドーナツ持ってきたぞー!」
シャンクスは迎えがない事を不振に思いながらテクテクとドーナツの袋を持ったまま居間へと進む。
内心返事のない事に焦りながらも、もしかしたら寝ているのかもと足を速めた。
「おーい、って、いるじゃねェか」
シャンクスは居間に入るとソファーで寛ぐ○○を見付けてホッとする。
靴があったので出掛けては無いだろうが、少し心配していた。
「…………!」
○○はシャンクスの方を向くと「お帰りなさい!」と口をパクパクとさせた。
「なんだ?喉痛ェのか?」
シャンクスは眉間にシワを寄せて○○を見ながらスーツの上着を脱いだ。
「……!!」
○○は満面の笑みを浮かべると手で「来い来い」とシャンクスを呼ぶ。
シャンクスはなんだ?と思いながら近付く。
すると○○はシャンクスの手を自分の腹に当てた。
「わかる?」
○○は静かに声を出した。
「?なにが?」
シャンクスは不思議そうに○○を見る。
「っ、そっか」
○○は服をペラリと捲ると直接シャンクスの手を自分の腹に当てた。
「?…………?」
シャンクスはそれでも解らずに手を遠慮しながらも強めに腹に押し付ける。
「やっぱ解んね、っ!!動いた!」
シャンクスは驚いた様に○○を見た。
「ね?ね!これが胎動みたいよ!」
○○は嬉しそうにシャンクスに笑いかけた。
「はぁ、これがな。おっ!また」
シャンクスは楽しそうに大きな手を広げ、もっと感じようと静かにした。
「ふふ、今元気!あ、でもそろそろまた寝ちゃうかな?」
シャンクスが帰ってくる少し前から動いていたので、そろそろ胎児は眠りに着く頃だ。
「ヘェ、こうして実際動くのが解ると『いる』んだなァって思うな」
シャンクスは染々と○○の腹を撫でた。
「ね!私もやっと解って嬉しいよ!」
○○は嬉しそうに自分の腹をぽんぽんと叩いた。
「お休み」
○○は優しくお腹に話しかけた。
「聞こえるのか?」
シャンクスは不思議そうに腹を見た。
「何かね、耳が最初に発達するみたいだよ!だからお腹の中にいた時の声を覚えてるんだって!だからシャンクスも覚えてもらう為にちゃんと話し掛けてね?」
○○はクスクスとシャンクスを見た。
「よし!俺はシャンクス!お前の父ちゃんだぞー!」
シャンクスはよしよしと腹を撫でた。
外側からの存在確認
「じゃあさ、アレの音も聞かれてるのか?」
「アレ?」
「…………」
「っ!その指止めて!い、一応本には大丈夫みたいな事書いてあったけど……」
「いや、何か他の妊娠夫婦よりヤってるみたいだからさ。まァ『父ちゃんも母ちゃんも仲良いな!』くらいに」
「なんか嫌!生々しい!」
「何だよ可愛い反応しやがって。んじゃ、確かめるか?」
「ど、どうやって?」
「ん?産まれて来たら聞く」
「っ!虐待!」
「冗談に決まってんだろ?」
「もー!シャンクスの馬鹿ぁ!!」