仲間入り!
「出立は?」
「すぐに!」
キュウゾウの言葉にカンベエは満足そうに頷いた。
「カンベエ様!この方は!」
キララは敵であるウキョウの直属の部下だったキュウゾウに不信感を持つ。
「まぁまぁ、キララ殿」
にこにこと笑うヘイハチ。
「そうだよ、キララちゃん。カンベエさんのお墨付きだし!きっと大丈夫だよ」
○○もヘイハチ同様に新しい仲間を歓迎している。
「そんな事を言って!髪を引っ張られたのは○○さんじゃありませんか!!」
キララは感情的に○○に食らい付く。
「ま、まぁ、そうなんだけど」
○○はキララの勢いに押され気味に呟く。
「髪は女の命。大切なものです!それを引っ張るなど……」
キララがなおも文句を止めずに口を開くとキュウゾウがゆっくりと近付いてくる。
「……」
「な、何ですか?!」
目の前にキュウゾウがやって来て、キララは負けじとキュウゾウを強い眼差しで見上げた。
「……通してくれ」
しかしキュウゾウはキララに目もくれずにそう呟く。
キララがおずおずと道を開けるとキュウゾウは迷う事無く○○の前で立ち止まった。
「え?わ、私?」
○○は不思議そうにキュウゾウを見上げる。目が合うと胸がきゅんと高鳴る不思議な感覚に陥った。
目を離したくない、温かい気持ちが○○の中に生まれた。
「キュウゾウ」
キュウゾウは静かな声で自分の名を告げた。
「え?あ、あぁ。うん。キュウゾウさんね」
「……」
「……」
「……」
「……?」
○○の言葉を聞いてもキュウゾウは黙ったまま○○をじっと見つめていた。
「自分は名乗ったから、名乗って欲しいんでげすよ」
見かねたシチロージがこそっと○○に耳打ちをする。
「あ!あぁ!なるほど、そうね。私の名前は○○。宜しくお願いします!キュウゾウさん!」
○○がにこりと笑って手を差し出し、握手を求めた。
「あぁ……」
キュウゾウは静かに頷くと○○の手を握り返した。
そんな2人のやり取りをシチロージ、カンベエ、ゴロベエ、ヘイハチは微笑ましく眺めた。
「…………あの、キュウゾウさん?」
「……」
「そろそろ手を……」
あまりにも長い握手に○○は戸惑いながらキュウゾウを見上げる。
「……手を」
「え?」
「離したくない、と、思う」
あまり感情の無いキュウゾウの言葉だったが、○○の胸はきゅんと高鳴った。
「うははーっ!!見せ付けてくれるね!!ご両人!!!」
キクチヨがそう楽しそうに囃し立てる。
「おっちゃま!おらたちも繋ぐですか?」
コマチがキクチヨの肩に乗ったまま楽しそうに手を出した。
「おう!そうだな!」
キクチヨもコマチの悪乗りに合わせて2人は手をつないだ。
「もう、コマチ……」
キララはコマチとキクチヨの行動に苦笑していた。
「仕方ないですね。ならば」
ヘイハチはにこりと笑って2人の手を一度離させる。そしてキュウゾウの左手に○○の右手を繋がせた。
「これならば、歩くのに支障はないと思いますよ!」
成し遂げたヘイハチは気分良く笑った。
「かたじけない」
キュウゾウは素直に頭を下げた。
「うーん、何ともまぁ、純粋だ」
ゴロベエはニヤニヤと笑っていた。
「…………いや、あの!その……」
○○は顔を赤くしながらも繋がれた手を離すと言う考えは浮かばなかったが、やはり恥ずかしさがあった。
「…………嫌か?」
キュウゾウの声に顔を上げるとそこにはほとんど表情は動いていないが、少し寂しそうな顔があった。
「い……や、……ではないけど」
○○は困ったようにキュウゾウを見上げた。
「そうか」
キュウゾウは無表情に近いが、満足そうに頷くと手を繋いだままにした。
「では、出発しよう」
まとまったと見たカンベエが声を出すと神無村へと歩き出した。
それにぞろぞろと歩き出した。
「行くぞ」
「あ、はい!」
キュウゾウは○○を見て軽く笑った。その笑顔に○○は自分も自然と笑顔になった。
***
髪を引っ張るのくだりは「出会い編」を書いたからです(笑)
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