隠密行動

「エースー!サボー!はやくー!」

大きく手を振り叫ぶのは大人用麦わら帽子を被るルフィ。

「少しは落ち着けってんだ」

チッと小さく舌打ちをするエース。

「嬉しいんだろ?久し振りに帰るフーシャ村だ」

余裕の笑みを見せるのはサボ。

3人は内緒でマキノのいる酒場まで行く事にしたのだ。

「ふん。こんなにうるさくちゃ内緒の意味がねェな」

エースは前を行く不出来な弟を見た。

「あいつに隠密行動は初めから期待しちゃいないよ」

サボもルフィの方を眺めた。

「はやくしろよー!」

ルフィは先程より大きな声を出した。

エースは地面を強く蹴るとあっと言う間にルフィに近付いた。

「うるせェ!!」

ガツンッとエースがルフィの頭を拳で殴る。

「いってェ!!」

「ゴムのくせに」

「まーまー、とにかく静かに行こうぜ。他のやつらに見つかっても面倒だ」

サボがエースとルフィの間に入った。

「そうだった!おんみつこうどうだな!」

ルフィはにししと手を握り両手の人差し指を立てた。

「なんだそれ?」

エースがルフィの取るポーズを見て呆れ気味に言う。

「にんじゃだ!」

嬉しそうにルフィが笑う。

「…………そうか。海賊王になる奴がひとり減って良かったよ」

エースが胡散臭げにルフィをしっしと手で払う。

「っ!やめた!ダメだ!海賊王になるのはおれだ!!」

ルフィは慌てて手を振った。

「あはははは!おもしれェな!お前ら!」

サボが2人のやり取りを見て腹を抱えた。

「ひとまとめにするんじゃねェ!!!」

エースがサボに向かって拳を突き出す。

「あぶねー」

サボは笑いを残したままひらりとそれをかわす。

「避けんな!」

「そりゃ無理だ!」

苛立つエースにサボはケラケラと笑った。

「なー!はやくいこうぜ」

ルフィは焦れながら言う。

「よし!なら競走するか?」

サボがにかりと笑った。

「おォ!おもしれェ」

エースもニヤリと頷いた。

「おれだってまけねェぞ!」

ルフィは両手を高く突き上げた。








ーーバタン!


「いらっしゃいませ。あら!」

酒場でグラスを磨いていたマキノが荒々しい扉の開く音で振り返った。

「おれがいちばんだ!」

「いいや、おれだな!」

「なにいってやがる!おれだ!」

ルフィ、サボ、エースが叫びながら入ってきた。

「ふふ、3人とも一番に見えたわ」

「「「それじゃあダメだ!!」」」

マキノの言葉に3人は同時に叫んだ。

「あらあら、いらっしゃい。ちゃんとダダンさんに言ってきたの?」

マキノはグラスを棚に戻しながら言う。

「いや」

エースが首を振る。

「おんみつこうどうだ!」

ルフィがにししと笑う。

「バレずに戻れば問題ねェよ」

サボは頷いた。

「そう?お腹減ってる?何か食べる?」

マキノはクスクスと楽しそうに笑う。

「おう!宝払いで!」

ルフィはいち早くカウンターに座りながら笑った。

「はい、楽しみにしてるわ」

マキノはにこりと笑った。

「「たからばらい?」」

兄2人が不思議そうに言いながらカウンターに座る。

「おう!おれは海賊になったら宝をみつけて、ここに払いにくるんだ!」

にししとルフィが笑った。

「なんで金なんか払うんだ?」

エースは不思議そうに頭を傾げる。

「エース店で金払ったことないもんな」

サボがケラケラと笑う。

「お店でお金を払うのは、自分が受けたサービスに対するありがとうの気持ちなの。特にみんな海賊になるなら酒場ではキチンとお金を払うこと」

「なんでだ?」

エースとルフィが不思議そうに頭を傾げる。

「海賊がお酒を飲めなくなるからよ。お店から出入り禁止になったらいくら海賊でも飲み食い出来ないでしょ?」

マキノはにこりと笑いながら3人の前に炒飯の乗った皿を出した。

「ふーん。まァ、酒はよくわかんねェけど、わかった。じゃあ、おれも宝払いで!」

エースはそう頷いた。

「じゃあ、おれも!」

サボはにかりと笑った。

「ふふ、3人とも期待してるわ」

マキノは嬉しそうに笑った。








「どうした?マキノ」

ぺろりと炒飯を食べ終わる。
ルフィは外をずっと見るマキノが気になり声をかけた。

「…………船だわ」

「船?」

「海賊か?」

マキノの言葉に3人は外を見る。

「いえ、あれは海軍の船かも」

マキノがポツリと呟いた。

「え?」

「げ?!」

「じぃちゃんか?!」

3人の顔色が一気に青くなる。

「ここにいるのがバレたらヤバイな」

「逃げよう!」

「間に合うか?」

エース、ルフィ、サボが慌てて席を立つ。

「間に合わないかも、そこの棚に隠れて!」

マキノの提案に乗り、3人はフロアーの端にある棚に急いで身を隠した。

狭く暗い中で3人は息を殺した。


ーーガタン


程なくして酒場のドアが開いた。

「あら、いらっしゃい。忙しくないんですか?」

マキノの声が聞こえるが、相手の声はしない。

「え?皿が3つ?今までお客様が来ていたの」

びくり。マキノの言葉に3人の体が震える。

マキノの声に合わせて皿を片付ける音がした。

「え?さぁ、私もルフィ達には会いたいけど」

マキノの残念そうな声がする。

「あ!そっちは……、そこは片付けてないから汚くて」

マキノの慌てた声が3人の棚の方へと聞こえる。

3人の心臓はドクンドクンと高鳴る。


ーーガチャッ


「「「うわーーー!!!」」」

3人は思いきり叫んだ。

ルフィは恐怖で白目を剥いて泡を吐いて倒れた。


「なんじゃ、お前ら」

棚を開けたのは村長。

「っ!!テメェ!!!」

エースは涙目で叫ぶ。

「年上にそんな言い方なんじゃ!!」

「痛ェ!!!」

ガツンと杖でエースの頭を叩いた。

「しかし、マキノにはいっぱい食わされた!」

サボがまだ動悸の収まらない胸を押さえた。

「…………」

マキノは申し訳なさそうに目を伏せた。

「お前らーー!!!」

「「なっ?!」」

恐ろしい声にサボとエースが振り返る。

「「じじぃ!!!」」

「ごめんなさい。本当に来てたの、ガープさん」

マキノはポツリと呟いた。

「「うわぁぁぁぁ!!!」」

2人は気絶したルフィを担いで駆け出した。








隠密行動








「待てぃぃ!!!」

ガープが3人を追いかけようと手を伸ばす。

「あ!ガープさん、新作のおつまみがあるんです。試食して頂けませんか?」

クスクスと楽しそうにマキノは笑った。

「ったく、お前はあいつらに甘いの」

ガープがため息混じりに言いながら席についた。

「ふふ、ガープさんも十分に」

マキノは楽しそうに笑うとガープと村長につまみを用意した。

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