バレンタイン破産宣告
「あ!伊達さん見つけた!」
○○は駆け足で伊達に近付いた。
「よう!○○ちゃん!どしたのよ?」
伊達はメダルタンクをガチャンと置いて振り返る。
「もちろん、伊達さんに用です。あ、後藤さんもこんにちは」
「○○さん、こんにちは」
後藤は生真面目に挨拶をする。
「相変わらずですね」
○○はクスクスと楽しそうに笑う。
「で?俺に何の用よ?」
伊達がにかりと笑う。
「そうでした!愛する伊達さんに、はい!手作りだよ!」
○○は荷物から包みを出して差し出した。
「お?何、これ?」
伊達は受け取った物を振る。
「あ!汁が溢れる!バレンタインですよ!」
○○は慌てて言う。
「「バレンタイン」」
伊達と後藤は同時に声を出した。
「後藤ちゃん、バレンタインと言えばチョコだよな?」
こそりと伊達が後藤に聞く。
「はい。そのはずです」
後藤もこそりと頷いた。
「しかし、チョコは汁が溢れません」
「だよねー」
うーんと不思議そうにする伊達と後藤。
「それより、せっかく○○さんが作ったんですよ?食べてくださいね」
後藤は真剣な顔付きで言う。
「俺、甘いの苦手なんだよねー」
伊達は難しい顔をして綺麗に包まれたそれを見る。
「…………嬉しくないですか?」
○○はがっくりと項垂れた。
「そんな事ない!そんな事!じゃあ、さっそく!」
伊達がびりびりと包みを破いた。
「…………おでん!!」
伊達は驚いた顔をしながら出てきた弁当箱いっぱいに詰まったおでんを見た。
「うん!伊達さん甘いの苦手でしょ?だったら、喜んで貰えるのが良いかなぁって!」
○○はにこりと笑った。
「おう!ありがとな!」
伊達はにかりと笑い、○○の頭を撫でた。
「あ!後藤さんにも」
「ありがとうございます」
後藤は丁寧に受け取った。
「本当は後藤さんにあげるの迷ったんだけど」
「なんで?」
○○のこそっとした言葉に伊達は不思議そうにした。
「だって後藤さんカッコイイからモテるでしょ?それに真面目だからお返しとか全員にしそうじゃない?」
「確かに」
「破産しそう」
○○は困った顔で伊達を見上げた。
「まーさか!いくら後藤ちゃんでも……」
伊達は笑い飛ばそうとしたが、相手はあの、後藤だ。
「チョコですか、わざわざ僕の為に?」
後藤は丁寧に包みを開けて中のチョコを取り出した。
「うん!せっかくのバレンタインにおでんだけってのもね」
○○は苦笑いをした。
「そうでしたか。ありがとうございます」
後藤は丁寧に頭を下げた。
「あのね、後藤さん。それにはお返しとか要らないからね」
○○は慌てて付け加える。
「そう……ですか?」
後藤は少し困惑気味だ。
「うんうん!」
「所で後藤ちゃん、それで何個目?」
伊達は気になって聞いた。
「32個目です」
「「32!!」」
伊達と○○が驚いて声を揃えた。
「後藤さん!それ全員に返さなくて良いのよ?」
「そうだぞ!後藤ちゃん!気になった女だけに返せば良いからな!」
○○と伊達は慌てて言う。
「いえ、義理ですが、日頃お世話になっている方達です。ちゃんとお返しします」
後藤は使命感に燃えていた。
「…………そ、そう」
「…………が、頑張って」
伊達と○○は何を言っても無駄だと思った。
「はい!頑張ります!」
後藤は真面目くさった顔で頷いた。
バレンタイン破産宣告「お!うまいね!」
「ありがとう!」
「こちらのコインチョコも美味しいです」
「良かった!その形かなりこだわったんだ!」
「…………やはりお返しを」
「い、いい!大丈夫!」
「やれやれ」
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