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フリックはくすぐったい感覚で目が覚めた。

「あ、フリックおはよう」

フリックの目の前にはにっこりと笑い、指をこちらに向けている○○がいた。

「おはよう、朝か」

カーテンから射し込む日の光にフリックは目を細める。

「うん良いお天気みたいよ」

○○は楽しそうに笑った。昨晩の落ち込む雰囲気はもうなかった。

「機嫌は治ったか?」

フリックは○○の髪を遊ぶ様に指に絡ませる。

「うん。……やっぱり私、フリックが好きだわ」

○○はにっこりと笑みを深くした。何かを吹っ切った笑顔にフリックはホッとした。

「そうか」

フリックは○○を抱き寄せる。

「俺も○○が好きだぜ」

フリックはそう口にすると、○○の首筋に唇を付ける。

「ん、くすぐったいよ」

○○はクスクスと笑う。

「お前だって、俺が起きる前にしてただろ?」

フリックはニヤリと意地悪く笑う。

「だ、だって、全然起きないから。でも、指でちょっとつついただけよ?」

○○は頬を染めながら反論する。

「昨日は主導権握らせたんだ。今日は俺が持つぞ」

フリックは目を細める。

「っ!こ、こんなに良いお天気なのに?」

○○は顔を真っ赤にしてフリックを見る。

「ふむ。そうだな。じゃあ、出掛けるか?」

フリックは言うとベッドから起き上がり、床に散らばった自分の服を拾い上げ、腕を通す。

「でかける?」

珍しいフリックの行動と言葉に○○は不思議そうに上半身を起こした。

「あぁ。たまには良いだろう?」

フリックは気分良く笑う。

「あ、うん!」

○○は嬉しそうに頷くと自分の部屋に入って行った。


実質上これが初めてのフリックとのデートだと喜んで支度するが、結局いつもと同じ服装。同じ化粧。
せめてもの抵抗として○○はフィッチャーに貰った変装道具から香水だけは少しだけつけた。


「どこ行くの?」

○○はフリック達の部屋に行くと、準備の出来たフリックに聞いた。

「そうだな。サウスウィンドゥかクスクスか……。グレッグミンスターでも良いが、出来たら日帰りの方が良いだろう?」

フリックは考えながら声を出す。

「じゃあ、グレッグミンスターはお預けだね。サウスウィンドゥかな?」

○○も考えながら声を出す。

「まぁ、どちらにしろ行った事ある所ばかりだがな」

フリックは○○の頭を撫でる。
と、突然引き寄せて首筋に鼻を付ける。

「っ!」

「あの時の香水か」

フリックは鼻を付けたまま声を出す。

「そ、そうだよ。せっかくだから少しでもお洒落したいじゃない?」

○○は照れながらも嬉しそうに笑う。

「そうだな。じゃあ、行くか」

フリックと○○は連れだって部屋を出た。

レオナに出掛ける事を言い、城の外へと出る。

「馬で行くの?」

○○は馬小屋から馬を出してきたフリックに言う。

「ああ。ビッキーでも良いが、帰りが歩きになるからな」

フリックは先に馬へと跨がる。
手を伸ばし、○○も後ろに乗せると門に向かいゆっくりと馬を歩かせる。

「フリックと馬に乗るのも久し振りだね」

○○は嬉しそうにフリックの背中に抱き付いた。

「だな。よし、じゃあ飛ばすぞ!!」

「っ!!」

フリックは悪戯っぽく笑うと馬を器用に急発進させる。

○○は必死に掴まり、目をぎゅっと閉じる。

「ほら、○○!目を開けてみろよ!」

フリックの声につられて目を開ける。

そこはどこまでも続きそうな平野と遠くに古城が見える光景だった。

「きれい……」

○○はじっとその光景に目を奪われる。

「な?馬も良いだろ?」

フリックは手綱をしっかりと持ち、○○を振り返る。

「うん!フリック!ありがとう!」

○○は嬉しそうに笑った。







サウスウィンドゥにやって来た。

「まぁ、ここが一番交易が盛んで物流の流れも多いしな。何より邪魔するやつもいない!」

フリックは馬から降りながら言う。

「…………それってニナちゃん?」

○○はフリックの手を借りながら、苦笑して馬を降りる。

「そりゃそうだ」

フリックは当たり前だと頷いた。

「まぁ、今日はせっかくの初デートだしね?」

○○はクスクスと笑った。

「だろ?」

フリックも悪戯っぽく笑う。

「馬を繋いでくるから、少し待っててくれ」

「はーい」

フリックは馬をつれて街の外側にある馬を繋ぐ所に行く。

街を覗くとお洒落な服に身を包んだ女性達が目についた。
○○は自分の服を見下ろす。
ヒルダに貰ったワンピースの中でも一番新しい物を着てきた。それでもやはり、いつもと同じなので小さくため息をついた。

「服……買おうかな……でも、もったいないよね?」

○○は困った様に考えた。

傭兵の砦や、その前の時は動きやすさを最優先し、パンツスタイルばかりだった。

が、服をシードに破かれてからはヒルダに貰ったワンピース以外着ていなかったのだ。

服装にそれほど頓着しない○○でも、やはり好きな人の前では綺麗にしたいと言う気持ちはある。

だからこそ、せっかく来たからにはたまには服を買おうと密かに決心していた。

「チャンスがあったら、かな?」


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