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「おはようございます!」
○○が目を覚ますと、すでに朝の支度を終わらせたカスミがいた。
「おはようございます……」
○○はボーッとする頭を動かそうと起き上がる。
「……昨日はどうでした?」
カスミは心配そうな顔をする。
「うん、坊っちゃんくんにとっても私にとっても良い体験になったよ」
○○は朝の支度をしながらにこりと笑った。
「そうですか」
「ねぇ、カスミちゃん」
「はい?」
「坊っちゃんくんを支えられる存在になってね」
○○はにこりと笑うと、風呂場に入った。
「っ!!え?え?」
カスミは顔を真っ赤にした。
「おはよう、3人とも早いね」
○○とカスミが一階の食堂に行くと、ビクトールとフリックそしてU主が食事をとっていた。
「おはようございます!」
「あぁ、おはようさん」
「眠れたか?」
ビクトール達と同じ席に腰を下ろした。
「はい、私はよく寝ました」
カスミはにこりと笑った。
「私も!疲れてたから」
○○もにこりと笑った。
「おはよう!いっぱい食べて行ってね!」
宿屋の女主人のマリーが豪快に笑った。
「マクドールのぼっちゃんのお客様ってあんた達の事だったんだね」
マリーはビクトール、フリック、カスミを見て笑った。
「今日はちゃんとお金持ってるんだろうね?」
マリーはビクトールを見てニヤリと笑った。
「大丈夫!大丈夫!」
ビクトールはそう笑った。
「おや?あんた達は見ない顔だね」
マリーは○○を見た。
「マリー、こっちはジョンストン都市同盟のリーダーU主。こっちはコックの○○だ」
ビクトールが2人を紹介する。
「宜しく!」
「宜しくお願いします」
U主と○○は頭を下げた。
「こっちがここの宿屋の女主人のマリー。門の紋章戦争にも参加した」
フリックがマリーを紹介する。
「宜しくね!」
マリーはにこりと笑った。
「さぁ!しっかり食べてね!」
マリーの運んでくる料理を食べ、用意を済ませるとマクドール邸へ行く。
「おはようございます」
「おはよう」
グレミオと坊っちゃんを加え、一行は城へ向かった。
「コウ!もう良いのかい?」
「うん!苦い薬飲まされちゃったけどね」
坊っちゃんが聞くとコウは笑いながら舌を出した。
「もう大丈夫ですよ。このリュウカンがいましたからね。さて、私は先に失礼するとしましょう」
そう言ってリュウカンはゆっくりとした足取りで出て行った。
閲覧を終え、廊下に出た時だった。
「あ……」
「どうでした?」
○○の目線を追ったフリックはそこである人物を見つけた。
「あ!アレンにグレンシールじゃないか!」
「お!本当だ!」
フリックの声にビクトールが反応する。
「これはこれは坊っちゃんさま、U主殿、ビクトール殿、フリック殿、カスミ殿」
「ようこそ」
赤い軍服に黒髪の男と緑の軍服に茶髪の男が一行に近付いて来た。
2人とも、目の覚める様な美形だ。
「……」
「お前はまたか……」
2人をじっと見つめている○○にフリックは呆れながら呟いた。
「ち、違うよ!この2人に言付けが……」
「言付け?」
「坊っちゃんさま、そちらの方は?」
アレンの疑いの目と、グレンシールの不思議そうな目が○○を見る。
「こちらは○○さん。同盟軍の酒場でコックをされてる方だ」
坊っちゃんがにこりと笑った。
「ね、ねぇ、坊っちゃんくん、何て言えば良いのかしら?」
○○はこそこそと坊っちゃんに耳打ちをする。
「うーん……この2人に……」
坊っちゃんも悩み始める。
アレンもグレンシールも坊っちゃんの父、テオ・マクドールの直属の部下で、テオの事を崇拝している。
余計な事は言いにくいのだ。
「言付けと言われましたが、誰から?」
グレンシールが一歩○○に近付く。
「うっ!あ、あの!『二人の事を心配はしていない。後は自分の思うままに』との事です!」
○○はそれだけ言うとフリックの後ろに隠れる。
「何で隠れるんだよ」
フリックは○○を振り返る。
「だ、だって」
○○はフリックのマントをぎゅっと掴んでいる。
「……」
「……それは誰から?」
グレンシールが不思議そうにし、アレンが聞いた。
「……父さんからだ」
坊っちゃんは真剣な目付きで言った。
「え?」
「……」
アレンは複雑な表情だ。喜んで良いのか、テオの名を語った事に怒れば良いのか計りかねない様だ。
「ですが、坊っちゃんさま、テオ様はもう……」
グレンシールは冷静に言う。
「うん。もちろん解ってる。信じる信じないは任せるよ」
坊っちゃんはにこりと笑った。
「……ちなみに他の方にも言付けを預かってるんですが……」
坊っちゃんはフリックの後ろから困った顔をする。
「え?そうなの?」
坊っちゃんも不思議そうな顔をする。
「誰ですか?」
グレミオも興味深く聞く。
「えっと、金髪で髪の長い赤い軍服の綺麗な女性なのですが……」
○○は名前が解らない様で、そう説明した。
「ソニアさまか」
「で?なんと?」
グレンシールが頷き、アレンが聞いてくる。
「え……。っ!い、言えません」
○○はたちどころに顔を真っ赤にして、そう言った。
「……ふむ」
「……まさか、本当に?」
グレンシールとアレンは○○の事を信用する目で見ていた。
「どのように言付けを預かったのかは分かりませんが、有り難く受けとりました」
グレンシールが優雅な仕種でお辞儀をする。
「坊っちゃんさまも信用されてるし、我々も貴女を信用しますよ」
アレンはにこりと笑った。
「あ、ありがとうございます」
○○はフリックの後ろから出てホッとしたように笑った。
「ねぇねぇ、○○さん!結局坊っちゃんさんのお父さんは何て言ったの?」
「え……」
「確かに気になります!」
「か、カスミちゃんまで。えっと……大人の男の人にそんな事言われたら、かえってその人の事好きになっちゃう様な……」
「お前、顔真っ赤だぞ?」
「……」
「さすがテオ様です!」
「やっぱり父さんカッコイイ!!」
ちなみにU主、○○、カスミ、○○、ビクトール、フリック、グレミオ、坊っちゃんの順
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