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「あっ!いた!」
少し開けた場所で小さな人影が倒れていた。
「コウ!」
「コウくん!」
坊っちゃんとグレミオがしゃがみ込み、少年を助け起こす。
「どうですか?!」
カスミも心配そうに覗き込む。
「大丈夫!息はしてる!」
ホッとした様に坊っちゃんが声を出す。
「良かった」
U主もホッと胸を撫で下ろす。
「っ!何か来るぞ?!」
フリックが剣を抜きながらさらに奥を振り返る。
ゴロゴロと転がって来たのは巨大な芋虫系モンスターだ。
「っ!!」
○○は顔を真っ青にして一番近くにいたグレミオのマントにしがみつく。
「うっわ!!○○さん?!」
グレミオは焦りながら声を出した。
「む、虫!!虫ダメ!!」
○○はイヤイヤとグレミオのマントにしがみつく。
「ったく!お前は下がってろ!!」
フリックは眉間にシワを寄せ、叫んだ。
「グレミオ!○○さんを頼んだぞ!」
坊っちゃんが叫ぶと他の全員が戦闘体勢に入った。
「○○さん!こっちへ」
グレミオは仕方なく○○を安全な位置まで連れて行く。
「なっ!?」
「脱皮しやがった?!」
フリックとビクトールが焦った声を出す。
芋虫を攻撃していると、背中が割れ、蝶系モンスターに脱皮したのだ。
「っく!毒を吐きやがる!」
フリックがマントで口許を隠しながら言った。
「迂闊に近付けませんね……」
カスミも油断なく見ながら言う。
「っくそったれ!」
ビクトールはそう吐き捨てた。
「ぼっちゃん!このままでは!」
グレミオの声に反応し、坊っちゃんが意を決して紋章を発動させる。
「っ!!」
「○○さん!?」
坊っちゃんの発動と共に○○が辛そうに頭を押さえる。
「僕も!」
U主も紋章を発動させる。
だが、力を溜めているのか、なかなか呪文を唱えるまで時間のかかる、ソールイーターと輝く盾の紋章。
「いけない!」
カスミが今にも襲いかかりそうなモンスターに向かおうとする。
「ダメだ!迂闊に近付くな!」
ビクトールがカスミの腕を掴む。
「なら、この弓だ!」
フリックが弓矢を取り出す。
「大丈夫なんですか?フリックさん!コウくんにでも当たったら大変ですよ!」
グレミオがフリックを止める。
「じゃあ、どうするんだ?!」
フリックが叫ぶ。
「それ、俺に貸して!!」
「○○?!」
○○はフリックから弓矢を奪うと、馴れた手つきでモンスターに向けて弓を引く。
「っ!!お前?!」
ビクトールが焦って止めようとする。
「坊っちゃん!!どけ!!」
○○が叫ぶと躊躇わずに矢を放つ。
「っ!!」
坊っちゃんが難なくかわし、弓は真っ直ぐにモンスターへと飛び、動きを封じる。
ーーーキーン
そして、ソールイーターと輝く盾の紋章を同時に発動させた。
モンスターを無事に倒す。
「コウくん?!大丈夫ですか?」
グレミオがコウを抱き上げる。
「これは……どうしましょう、ぼっちゃん」
グレミオは坊っちゃんを振り返る。
「………………グレッグミンスターのリュウカン先生に見せよう」
坊っちゃんは静かに呟いた。
「っ!!そうですね。それが良い」
グレミオはコウを抱き上げ、立ち上がる。
「っ!」
「○○?!」
崩れ落ちる○○の体をフリックが抱き止める。
「……こいつ……。とりあえず、グレッグミンスターに急ごう」
ビクトールが顔を厳しく言った。
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