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「坊っちゃんさま!!」
「あれ?カスミも来てたんだ」
宿屋から出てきたカスミとU主一行が出会った。
カスミは顔を赤く染め声をあげた。
「は、はい!U主さま達とご一緒にグレッグミンスターまで」
カスミは照れながらも声を出した。
「そうか。カスミもいたら心強いね!」
坊っちゃんはにこりと笑った。
「何かあったのですか?」
カスミは真剣な目をした。
「さすが鋭い。お世話になってる宿屋のコウが山賊に拐われたらしいんだ」
「お供します」
坊っちゃんの言葉にカスミは頷いた。
「……か、カスミちゃんカッコイイ」
○○はキラキラとした目で2人のやり取りを見た。
「……」
フリックは呆れた様にため息をついた。
「この山道を行くの?」
ここに来るのが初めてな○○が言った。
「そうだ。ほれ、さっさと歩く!」
ビクトールに促され、サクサクと歩いていく。
途中、モンスターにも出会ったがU主、坊っちゃん、ビクトール、フリック、カスミ、グレミオでほぼ戦闘は終わる。
なので、○○は山道を歩くだけだった。
「これ、縄ばしご!」
行き止まりに見えた絶壁には縄ばしごがかかっていた。
「これを登るんだ」
フリックが上を指差す。
「へぇ!誰がかけたのかな?」
○○は不思議そうに上を見た。
「じゃあ、俺から登るぜ」
ビクトールが巨体に似合わずひょいひょいと登って行く。
「じゃあ、次は僕が行こうか?」
坊っちゃんがそう言って登って行く。
「ぼっちゃんの後ろは私が!」
グレミオが登って行く。
「次はU主が行くか?」
フリックがU主を見る。
「僕は○○さんかカスミさんの後が!!」
「……」
「……」
「とっとと行け!!」
女性2人の冷たい笑顔とフリックの怒りの表情に「冗談なのに……」と不貞腐れてU主は登り始めた。
「じゃあ、俺は先に行くが、カスミ、悪いが最後は任せたぞ」
フリックはそれだけ言うと登り始めた。
「私が先で良いの?」
○○がカスミに聞く。
「はい!戦闘なれしてるのは私の方なので」
にこりとカスミは笑った。
「そ、そっか。役立たずでごめんね?」
○○は困った顔をする。
「いえいえ!行きましょう!」
カスミは笑顔で首をふり、促した。
「じゃあ、行くね」
縄ばしごは揺れる分、なかなか登りにくい。
○○は苦労してなんとか登りきった。
「はぁ。結構疲れる」
○○は地面に座って息を整える。
「よしよし、よく頑張った!」
ビクトールが○○の頭をぽんぽんと叩いた。
「では、先を急ぎましょう」
グレミオはカスミが登りきるのを見てから、声を出した。
「そうだね。コウが心配だ」
坊っちゃんは頷いた。
森を奥へと入ると、山賊らしい男達がいた。
「貴方達ですか?!コウくんを拐ったのは?!」
グレミオがそう声をあげた。
「だったらなんだ?最近は山賊業もうまくは行かないからな……」
山賊の頭がカスミと○○を見た。
「おっ!べっぴんさん2人も連れてるじゃねーか!その2人置いて行けば、さっきのガキは返してやるぜ?」
ニヤニヤと嫌な笑いを山賊がする。
「させる訳ないだろう」
フリックとビクトールが○○を隠すように立ち、
「コウを返せ!!」
坊っちゃんとU主がカスミを隠すように立つ。
「ちっ!ガキがガキを助けるなんざ、おもしろいな!はっはっはっ!」
山賊の頭が一人で笑う。
「??なんだよ、お前ら、笑えよ」
頭は後ろの子分達を振り返る。
「お、お頭。俺こいつら知ってる……」
「知り合いか?」
真っ青な子分達に気付かずに頭は声を出した。
「こっちは同盟軍リーダーのU主だ!!」
子分の一人がU主を指差す。
「え?あのルカ・ブライトを倒した?!」
頭が不思議そうに声を出す。
「こ、こっちはトラン共和国の英雄って……」
違う子分が坊っちゃんを指差す。
「え?あの赤月帝国を倒した?!」
頭がまたまた不思議そうに声を出す。
「いや、まさか!そんなはずは……」
頭はU主と坊っちゃんに近付いてジロジロと見る。
「お、俺知らね!!!」
「お、お、俺も!!!」
子分達はあっと言う間に逃げ出した。
「え?お前ら?!」
頭が逃げ出した子分を振り返る。
「待て!コウをどこへやった?!」
坊っちゃんが武器を構える。
「い、いや!あっちで化け物に襲われて!あのガキを囮に逃げてきたのさ!」
「っ?!」
「この、ゲス野郎め」
頭の言葉にビクトールが眉間にシワを寄せる。
「あっ!逃げ足は速いな!」
フリックが舌打ちをする。
「早く行きましょう!コウくんが心配です!!」
グレミオの声に皆頷いた。
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