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「行くよ!!えい!!」

ビッキーの声とともに浮遊感を味わい、気が付くとラダトの町に立っていた。


「……凄い!!」

○○は初めての体験に嬉しそうに声をあげた。

「初めてでしたか?」

ショートカットの黒髪の女の子がにこりと笑った。
年齢よりも落ち着いて見えた。

「そうなの!ビッキーちゃんって凄いね」

○○は嬉しそうに振り返る。

「あ、私酒場でコックしてます○○です」

「私はロッカクの里の忍者、カスミです」

2人は自己紹介をすませる。

「ほら!2人とも置いてくぞー」

「はーい!」

「はいっ!」

ビクトールの声に○○とカスミは慌てて後を追う。


ラダトからは船でバナーの村に行くようだ。



「あぁ、じゃあカスミちゃんも門の紋章戦争からビクトール達の事知ってるんだ」

○○はカスミから色々と聞いていた。

「はい。坊っちゃんさまと一緒に戦いました」

坊っちゃんの名を口にする時にほんのりカスミの頬は桜色に染まった。

「っ!可愛い!」

「○○さん?!」

○○はカスミに抱き付くと、カスミは焦った声を出す。

「カスミちゃんは坊っちゃんさまの事が好きなのね?」

ポツリと耳元で呟いた。

「っ!!なっ!なっ?なにを?!」

忍者らしい素早さで立ち上がり、忍者らしからぬ慌てっぷりだ。

「おいおい、カスミ。揺れる」

ビクトールが呆れながら声を出す。

「ご、ごめんなさい」

カスミは顔を真っ赤にしてすとんと座った。

「○○、お前は何をやらかしてるんだ?」

フリックも呆れた様に声を出した。

「え?な、なんにも?」

○○がまさかこんなに慌てるとは思わずに驚いていた。

「だ、誰にも言わないでください」

カスミは顔を真っ赤にしたままポツリと呟いた。

「うん!」

こうして見ると、年相応の女の子だと○○は微笑ましく思った。

カスミと○○は楽しくお喋りをしていた。
あっと言う間にバナーの村に着いた。


「着いたぞ!」

船頭に礼を言って船を降りた。

「○○さん!少し見て回ろうよ」

U主がぐいぐいと○○の手を引く。

「え?でも」

「だってカスミさんとばっかり話して、僕つまらない……」

不貞腐れた様なU主があまりにも可愛くて○○は腕を広げる。

「U主くん!」

きゅんと胸が鳴る。弟がいたらこんな感じだろうかと○○は思った。

「こら、その抱き付く癖をどうにかしろ」

フリックが眉間にシワを寄せ、○○を止める。

「何で止めるのよ、フリック!あんなに可愛いのに!!」

○○はフリックを不満気に見上げる。

「ちっ」

「ほら、あいつはああ言う奴だぞ?」

フリックが舌打ちをするU主をため息混じりで見る。

「フリックさん!○○さんの独り占め反対!」

U主はフリックに抗議した。

「うるさい。仕方がない、俺達はそこで少し休憩を取るから、その間なら遊んで来て良いぜ」

フリックがやれやれと声を出した。

「おお!フリックさん話せばわかるね!じゃあ、○○さん、デートしようね!」

「うん!」

U主は○○を連れて歩き出した。

「ったく」

フリックはため息をついた。





「あ!お兄ちゃんもU主さまみたい!僕ね、U主さまにあこがれてこの服作ってもらったの!」

町を歩いていると小さな子供がそうU主に話しかけてきた。
少年は赤い服に黄色いスカーフを巻いていた。

「カッコイイね!」

U主は上機嫌に少年に言った。

「あのね、ナイショなんだけど、U主さま今ここに来てるんだよ」

少年は声を小さく呟いた。

「??本当?」

自分はここにいるのにと不思議そうな顔をした。

「あっちの池だよ!」

少年はぐいぐいとU主の手を引く。

仕方なくU主と○○は少年に着いていく。

「すみません、今ここをお遠しできません」

金髪の長い髪を後ろで束ね、頬に十字の大きな傷のある青年が細い道を塞いだ。

「グレミオさん!通してよ」

「コウくん!ぼっちゃんをのんびりさせてあげてください」

青年ーーグレミオが少年ーーコウに優しく言った。

「うー……。あ!じゃあ、僕が向こうから叫ぶから、あのグレミオさんがいなくなったら通って!」

そう言うとコウは坂道を登って行った。

「おい!そろそろ行くぞ?」

ビクトールとフリックが食堂から出てきた。

「あっ!ちょっと待って!」

○○が言うと今度は4人で先程の細道に行く。

「何度こられても困ります」

グレミオは困った様な顔をした。

「お、お前!!」

「グレ」

「助けてーー!!特にグレミオさぁーーーん!!!!」

山の上からコウの声がした。

「へ?コウくん?!今行きます!!」

グレミオは慌ててその場を後にした。

「あいつがここにいるって事は!」

ビクトールとフリックが細道の先へと進む。

「お前!坊っちゃんじゃないか?!」

「え?」

ビクトールの声に釣りをしていた少年が驚きの声をあげる。
年の頃はU主の少し上だろうか。

「久しぶりだな!」

フリックも嬉しそうに声をあげた。

「び、ビクトール!フリック!!生きてたの?!」

坊っちゃんは心底驚いた様な顔をして立ち上がった。

「そればかりだな」

フリックがビクトールを睨み付ける。

「ま、まぁ、久しぶりの再開なんだ。あ、紹介する。今、都市同盟のリーダーやってるU主と酒場のコックの○○だ」

ビクトールが後ろの2人を前に出す。

「で、こっちが解放戦争のリーダー坊っちゃんだ!」

「宜しく」

「こ、こちらこそ宜しくお願いします!」

トランの英雄を目の前にU主は珍しく緊張気味だ。

「宜しく、坊っちゃんさま」

「さまは止めてよ」

○○の言葉に坊っちゃんはにこりと笑った。

「そう?じゃあ坊っちゃんくん」

「………………新鮮」

坊っちゃんが驚きながら笑った。

「ぼ、ぼ、ぼ、ぼっちゃん!!!」

グレミオが慌てて帰って来た。

「どうしたんだ?グレミオ。そんなに慌てて」

坊っちゃんがグレミオを落ち着かせようと静かに声を出す。

「い、い、今!コウくんが山賊に!って、ビクトールさんとフリックさんじゃないですか?!……幽霊?」

グレミオは恐る恐る聞いた。

「違う!!」

フリックが怒鳴る。

「生きていたんですか?!良かった!!」

グレミオがホッとした顔をした。

「で?コウがどうしたんだ?」

坊っちゃんは厳しい顔付きで言った。

「今、コウくんが山賊に拐われました!」

グレミオは再び焦った声を出す。

「え?助けに行こう!」

坊っちゃんは歩き出す。

「ま、待って!僕も行きます」


ーーキーン


「っ!!」

「っ?!」

U主と坊っちゃんの手が触れ合った瞬間、真の紋章同士が反応した。
○○も目をつぶり、それを確認した。

「紋章同士が引かれあってる?!」

○○が声を出す。

「君も真の紋章を……。一緒に行こう」

坊っちゃん は頷いた。

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