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ハイランド皇国、狂皇子と呼ばれるルカ・ブライトを同盟軍リーダーU主が倒してしから一夜が明けた。
「おい、待て○○!!」
焦った声を出すのは同盟軍の要にもなっている青雷のフリック。
「あ、○○さん!フリックさん!おはよう!」
「あ!ナナミちゃんにテンガアールちゃん!アイリちゃんにメグちゃん!みんなお揃いでどこか行くの?」
散々フリックを無視していた○○が少女達に笑顔で挨拶をした。
フリックは仕方なく口を挟まずに後ろに立ち止まる。
「これからハイ・ヨーさんの所でお菓子の練習!」
メグが嬉しそうに笑った。
「良いね!」
○○は楽しそうに笑った。
「出来たらヒックスにあげるんだ」
テンガアールはにこにこと笑った。
「そうだ、ニナを見付けたら先に行ってるって言っておいてよ」
アイリがフリックを見上げた。
「なんで、俺が……」
フリックは眉間にシワを寄せる。
「わかった。伝えておくわ」
○○がにっこりと笑った。
「じゃあ、みんな頑張ってね」
「「「「うん!」」」」
○○はまた歩き出す。
「って、待て!」
その後をフリックがまた追いかける。
「……フリックさんと○○さんて付き合ってるね」
メグがニヤニヤと2人を見る。
「え?付き合ってないって言ってたよ」
ナナミは不思議そうに言う。
「えー?!そうなの?」
メグが意外そうに声を出す。
「それは昔の話でしょ?」
テンガアールもニヤリと笑った。
「やっぱり発展途上だったか」
アイリも納得したように頷いた。
「???」
ナナミは一人不思議そうにしている。
「おはようございます!」
○○は酒場のドアをくぐる。
「おはよう、○○」
レオナはキセルをふかしていた。
カウンターにはビクトールも座っていた。
「○○!」
フリックが酒場へと入って来る。
「……」
○○はエプロンを無言で付け、厨房へと入る。
「おい!」
フリックは焦った声を出す。
「……お前らまだやってんのか?」
ビクトールは呆れた様に声を出す。
「なにやってんだい?」
レオナは不思議そうにフリックと○○を見た。
「だから、悪かったって!」
「ちょっと、部外者は入って来ないでよ!」
○○はフリックを厨房から追い出す。
「……」
「……」
「……あんた、○○に何したんだい?」
レオナが呆れきった顔でフリックを見た。
「……酒」
フリックは落ち込み気味にビクトールの隣に座る。
「まったく……」
レオナはため息をつくとフリックに酒を出す。
「何があったか知らないけど、許してやったら?ありゃ、相当参ってるよ?」
レオナは仕方なく○○に近寄る。
「知らない」
○○は冷たく言い放つ。
「そんなに怒ることないだろ?」
ビクトールも見かねて声を出した。
同室ゆえに一番被害を受けているのは彼かもしれない。
「お!怒るよ!だってね、レオナ!フリックったら!!」
「なんだい?」
○○は大きな声でレオナに向かう。
「ーーーーーーー。い、言えない……」
○○は真っ赤になって口を閉ざす。
「………………フリック、あんたが悪い」
レオナはよしよしと○○を撫でながらフリックを半眼で見た。
「なっ!?い、いや、俺が悪いけど……」
フリックは戸惑いながら声を出した。
「もー!フリックさんは反省の色が見られるまで触らないでください!」
「っ!!いや、反省はしてるぜ?」
「じゃあ、もうしない?」
「……」
「……やっぱりもう無理」
「いや!反省はしてる!反省は!!」
「……」
「お前だってよろっ」
ーースコーン
○○はおたまを思いきりフリックに投げ付けた。
「レオナー!」
わーんと泣きながらレオナにくっ付く○○。
「あー、はいはい。痴話喧嘩なら他所でやっとくれ」
レオナは呆れながらも、よしよしと頭を撫でる。
「こうなったら!」
○○は酒場の扉を開けた。
「ニナちゃぁぁん!!フリックなら今は酒場にいるよおお!!!」
「お、おい、○○!!お前なんて事を!!」
フリックが嫌な汗を背中に感じるとドタドタドタドタと足音が近付いて来た。
「フリックさーーーん!!」
「っ!!本当に来やがった!!」
ニナの嬉しそうな声にフリックは嫌そうに声を出す。
「今日は貴女の味方よ、ニナちゃん!」
○○はにっこりとニナに笑った。
「○○さん!」
ニナは嬉しそうに笑った。
「フリックさん!今日はデートしましょう!」
ニナは恋する乙女の顔をしながらフリックに近付く。
「くっ!」
フリックは眉間にシワを寄せ、逃げ出そうとする。
ーーバターン
勢い良く酒場の扉が開けられる。
「おはようございます!」
入って来たのはU主だ。
「あ、ニナ!ナナミ達が探してたよ?」
U主は不思議そうにニナを見た。
「え?ああ!!そう言えば今日はハイ・ヨーさんの所でお菓子教室が!!」
ニナはフリックのマントを掴んだまま残念そうな顔をする。
「でしょ?みんな始められないって言ってたよ?」
U主が困った様に笑った。
「え……でも……」
ニナはせっかく捕まえたフリックを見て迷う。
「ニナちゃん」
○○はニナをにっこりと見た。
「今日、お菓子作ってどうするつもりだったの?」
「……フリックさんにあげようと思ったの」
ニナは素直に声を出した。
「そっか。フリック、許してあげるわ」
○○はフリックを振り返る。
「ほ、本当か?」
フリックは驚きながら声を出す。
「その代わりニナちゃんの作るお菓子を受け取る事!」
「は……」
「え……」
フリックとニナが同時に声を出す。
「じゃなきゃ、向こう一年間触らないで」
「っ!!………………わかった」
フリックはガックリと項垂れた。
「ほ、本当に?!」
ニナは嬉しそうにフリックを見上げる。
「…………ああ」
フリックはやれやれと頷いた。
「やったぁぁぁ!!!」
ニナは跳ねて喜ぶ。
「ただし!ニナちゃんはフリックをあまり困らせない事!」
「はーい!」
○○の言葉にニナは元気よく返事する。
「良い子ね。じゃあ、レストラン行ってきな?」
「うん!じゃあ、フリックさん!よろしくねーー!!!」
ニナはそう叫ぶと酒場から出て行った。
「「「おー!」」」
U主とビクトールとレオナは感心した様に拍手した。
「手懐けたね、あの暴走娘を」
レオナはそう言ってキセルをふかした。
「そう言えば今日はどうしたんだい?疲れてるんだろ?」
レオナはU主に向き直る。
「あ!はい!これからリフレッシュにグレッグミンスターでも行こうと思って、○○さんを誘いに」
U主はにこりと笑った。
「え!行きたい!」
○○は嬉しそうに頷いた。
「やった!僕は約束を守る男ですから」
U主はキリリと笑った。
「あ、レオナ良いかな?」
「もちろん、行っておいで」
レオナは頷いた。
「で?後は誰と行くんだ?」
ビクトールが酒を煽る。
「やだなー!デートだから2人ですー」
U主がにこにこと笑った。
「あぁん?」
フリックが思いきり不機嫌な顔をする。
「………………フリックさん、本気で怖いです…………」
U主はフリックに怯えて○○の後ろに隠れる。
「ちょっと、フリック」
○○はU主を背中に庇う。
「も、もちろん、ビクトールさんとフリックさんには来てもらう予定です」
U主がおずおずと言う。
「良いぜ!」
「任せておきな」
ビクトールとフリックが頷いた。
「今、トラン共和国からカスミさんが来てるんです。それで行きます」
U主がそう説明した。
「ほう!」
「懐かしいな」
ビクトールとフリックが声を出す。
「じゃあ、準備が出来たらビッキー前に集合です!」
U主はにこりと笑った。
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