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丸2週間をかけてトランへ同盟を結びに行ったU主一行が帰って来た。

新しくバレリアと言う美しい女将軍を引き連れて。

そして、同盟軍はとうとうルカ・ブライトを討伐する所まで来た。


「………………とうとう、ここまで来たんですね」

○○は静かにレオナに言った。

「そうだね。あの時はやられっぱなしだったからね」

レオナもピリピリとしていた。

酒場にはすでに人の気配はなく、レオナと2人で後片付けをしている。

「あの時とは全然規模が違いますよね。こんなに大きな軍になるなんて……」

○○は傭兵の砦を思い出していた。

「そうだね」

レオナはふと、○○を見る。

「あんたとフリックがくっ付くとも思わなかったかもね」

レオナは妖艶に笑った。

「っ!!わ、私だって、まさかフリックと付き合うとは夢にも思わなかった……」

顔を真っ赤にさせて○○が穏やかに呟いた。

「ふふ、私は時間の問題だと思ったけどね」

レオナは意地悪くキセルをふかした。

「……どこがでしょう……」

不思議そうにレオナを見た。

「あんたって、他の事では頭の回転なかなか速い癖に、色恋沙汰に関しては遅いねえ」

レオナは呆れた様に笑った。

「……」

「あ、自分に向けられる好意に……かい?」

レオナはニヤリと笑う。

「そ、そうかもしれない」

○○は冷静に自分を見直す。

「さて、じゃあ、おしまいにしよう!鍵かけるよ」

レオナはそう言うと○○と酒場の外へと出た。







「あれ?フリックは?」

○○は部屋に戻るとビクトールだけがテーブルの椅子に座っていた。

「良いじゃねーか、俺がいれば」

ビクトールはニヤリと笑った。

「あ、うん。そうだよね」

○○はにこりと笑うとビクトールの隣に腰かける。

「明日……」

「ん?」

「明日、は……頑張って?」

○○はビクトールを見上げた。

「あぁ、このビクトール様に任せておきなって!」

ビクトールはそう笑った。

「……私、ルカ・ブライトは間近では見てないけど」

○○がテーブルの上を見ながら声を出す。

「あんな奴見なくて正解だぜ」

ビクトールはそう吐き捨てた。

「…………怪我……はするよね、たぶん」

○○は不安そうにビクトールを見る。

「心配するなって」

ビクトールは優しく笑うと○○の頭をくしゃくしゃと撫でる。

「……うん」

○○は小さく頷いた。

「おいおい、戦う前からそんな顔をするなよな?」

ビクトールは○○を椅子ごと動かし、自分の正面に向かせた。

「っ!びっくりした」

○○は驚いてビクトールを見上げる。

「俺はさ、今まで色んな危ない状況もクリアして来たつもりさ。今回も同じだ。大丈夫」

ビクトールは真剣な眼差しを○○に向ける。

「うん。ビクトール。無事で帰って来てね」

○○はにこりと笑った。

「……ああ」

ビクトールは○○の頭をくしゃくしゃと撫でた。

「痛いよビクトール」

○○は非難がましくビクトールを見る。

「なんだよ?景気付けにちゅーくらいするか?」

ビクトールはニヤリと笑う。

「………………しない」

○○はじとっとビクトールを見た。

「そいつは残念だ」

ビクトールはハハハと笑う。

「あっ!でも、マッサージとかしようか?」

○○は立ち上がると椅子に座るビクトールの背後に立つ。

「お?それは良いな」

ビクトールは上機嫌で椅子に座り直す。

「うっわ、凄い筋肉」

○○はビクトールの肩を強弱をつけて揉んでいく。

「あ、でもあんまりこってない?」

○○は不思議そうに揉む。

「これでも訓練もやってるからな。でも、なかなか気持ち良いぞ」

ビクトールはそう言いながら目を閉じる。

「本当?良かった」

○○は機嫌良くビクトールの肩や腕を揉む。

「うーん、背中やりにくいな。ビクトールベッド行って」

○○がベッドを指差す。

「お?よし」

ビクトールはベッドの上でうつ伏せになる。

「うんっと」

○○はベッドの端に座ってビクトールの背中を揉んでいく。

「うー、効くなー」

ビクトールは呻き声を出す。

「本当は上に乗った方がやり易いんだけどね」

○○は無理な姿勢で力を入れる。

「別に乗っても良いぞ?」

ビクトールが頭を動かして片目だけ○○を見る。

「……重いよ?」

○○は困った顔をする。

「重くないだろ、○○くらいの体重じゃ」

ビクトールは笑った。

「……それじゃあ」

○○はビクトールの背中に跨がって座り、背中をゆっくりと押す。

「どう?」

「う……気持ち……良いぜ」

ビクトールの掠れる声に色気を感じながらも○○は背中や肩、腕や足などを揉みほぐす。


ーーガチャ


「………………」

帰って来たフリックがその様子に驚いて固まる。

「あ、フリックお帰り!もうちょっとで終わるから待ってて!」

○○の言葉にフリックは我に返る。

「……マッサージ……か?」

フリックは眉間にシワを寄せ、聞く。

「うん!そう!っと、はい!どう?」

○○がビクトールの上から退いた。

「あぁ、気持ち良かったぜ!ありがとな」

ビクトールはにかっと笑うと○○の頭を撫でた。

「良かった」

○○も嬉しそうに笑った。

「あ、フリックもやる?」

「○○の気持ち良いぞ」

○○とビクトールが
笑いながらフリックを見る。

「いや、良いよ。なぁ、○○。外で話さないか?」

フリックが○○に呼び掛ける。

「?良いけど……」

○○は不思議そうにフリックを見る。

「俺がどこか行くか?」

ビクトールがフリックに言う。

「いや、いい」

フリックはビクトールの申し出を断った。

チラリとビクトールを見ると「行ってやれ」と顔が言ってたので、○○はフリックと部屋を後にした。

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