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同盟軍がアシタノ城に本拠地を置くようになってから、すでに幾ばくかの時が経っていた。

皆はすっかり、ここが廃墟だった事を忘れるくらいの発展をしていた。


同盟軍リーダーU主は仲間を引き連れて酒場へとやって来た。

「レオナさーん!○○さーん!こんにちは!!」

U主はにこにこと元気に挨拶をした。

「おや、お揃いで」

レオナはキセルをふかした。

「こんにちはU主くん!」

それににっこりと返すのは○○の日課になっている。

「うっわ!お姉さん綺麗だね」

金髪を短く切り揃えた整った顔立ちの若者が○○の手を握った。

「へ?」

そんな事を言われ慣れていない○○は困った様に笑った。

「俺、シーナ!宜しく!」

若者ーーシーナはウインクをしながら軽く自己紹介をする。

「えっと、私は」

「お前に教える名前なんてないとよ」

○○が声を出そうとしたが、○○からシーナを引き離しながらフリックは冷たく言い放つ。

「なんだよーフリックさん!邪魔しないでくれよー」

シーナは不満そうに口を尖らせた。

「うるさい、寄るな」

フリックは辛辣に言う。

「ねぇ!お姉さん!俺とお付き合いしない?」

シーナは軽い動きでひょいとフリックを潜り抜けると○○の手をもう一度取る。

「あー。私、年下には興味ないの」

○○はにっこりと「ごめんね」と笑った。

「えー……。そんな事言わずにさぁー」

シーナは一瞬つまらなそうな顔をしたが、すぐに立ち直る。

「馬鹿なの?嫌がってるでしょ?」

ルックまでもが冷たくシーナに言った。

「お前、顔は可愛いのに相変わらず言い方きっついのな!」

シーナは不満気にルックを振り返る。

「クスクス、面白い人だね。U主くん、これからどこか行くの?」

○○はU主とナナミを見た。

「はい!トラン共和国へ同盟を結びに行ってきます!」

U主はにこにこと答える。

「トラン共和国!」

○○は驚きながらフリックとビクトールを見上げた。

「ああ、解放戦争があった所だ」

フリックは頷いた。

「へぇ!」

○○は驚きの声をあげた。

「でね!今回は解放軍メンバーを集めたんだよ」

U主は楽しそうに声を出した。

「本当はハンフリーさんを連れて行きたいんだけどね」

U主はちょっと困った様に笑った。

「?」

「ハンフリーは解放軍の初期メンバーだからな」

ビクトールが説明する。

「え?そうだったんだ」

「うん!でも、ちょっとブライトが風邪ひいちゃって、フッチくんが不安そうだったから」

ナナミは眉尻を下げた。

「そっか、それは心配だね」

○○はナナミを見る。

「で、ルックを連れて行くんだ」

U主はにこにこと笑った。

「……面倒だけどね」

ルックはプイッとそっぽを向く。

「まあまあ、良いじゃない、ルック」

○○はにっこりとルックに向いた。

「でも、良いなぁ、トラン共和国!で?どこに行くの?」

「大統領に会いに行くから首都のグレッグミンスター!」

U主が力強く答える。

「俺の親父だぜ」

シーナは親指で自分を指す。

「え?シーナくんのお父さんが大統領?」

○○驚いてシーナを見る。

「血が繋がってる様には見えないね」

ルックは冷たく言い放つ。

「酷っ!」

シーナはルックを見る。

「あれだ、親の七光りって奴だ」

フリックもしれっと言う。

「フリックさん?」

シーナは寂しそうにフリックを見る。

「親は二人とも人格者なんだがな。受け継いだのは紋章と剣技だけだな」

ビクトールはニヤニヤと言う。

「……」

とうとうシーナは押し黙った。

「あ、あはは」

U主は困った様に笑った。

「で、でも、グレッグミンスターって凄い都会なんでしょ?一度は行ってみたいな」

○○はあまりにもシーナが可哀想になり声を出す。

「じゃあ、○○さんも」

「ダメだ!」

「ダメだよ」

U主の言葉にフリックとルックが同時に声を出す。

「……ルックまで……」

○○がしゅんとルックとフリックを見る。

「まあまあ、良いんじゃねー?」

シーナが軽く言うとフリックとルックに睨まれる。

「………………怖ぇ」

さすがのシーナも押し黙る。

「はぁ……このメンバーなら平気な気もするがな」

ビクトールはやれやれと声を出す。

「俺達は遊びに行く訳じゃないんだぜ?」

フリックがビクトールを睨む。

「そうだよ。足手まといになりたいの?」

ルックは○○を見た。

「……そうね。今回は我慢する」

○○は寂しそうに笑った。

「「○○さん……」」

U主とナナミが○○を寂しそうに見た。

「どうせU主の奴は寄り道ばかりするんだから、貿易とか。そん時に行きゃー良いだろ?」

ビクトールがやれやれと声を出す。

「……」

ルックはそれに押し黙る。

「それなら良いじゃん!」

シーナは笑った。

「な?フリック」

ビクトールと一緒に○○もフリックをじっと見た。

「…………分かった。その代わり今回は諦めろよ」

フリックはやれやれと声を出す。

「「「うん!」」」

U主、ナナミ、○○が頷いた。

「ははは、ガキの集まりだな」

ビクトールが笑った。

「はぁ」

フリックがため息をつく。

「全く……」

ルックは呆れた顔をする。

「仕方ないか」

シーナも少し残念そうにする。

「ちょっと来い」

「え?うん」

フリックは○○を連れて酒場を出る。
そして、人気の無い所へと連れて行く。

「……」

そこは人が一歩中に入らないと見えない場所。

「どうしたの?」

○○は不思議そうにフリックを見上げた。

「……トラン共和国はここから少し遠い」

フリックは○○をじっと見る。
吸い込まれそうな青い瞳に○○の頬は熱を集める。

「うん。気を付けてね」

○○は寂しい思いを隠して笑った。

「……」

フリックは押し黙る。

「えっと……。砂漠超えじゃないのよね?大丈夫でしょ?」

○○は不安そうに聞く。

「あんな道二度と通りたくないぜ」

フリックは嫌そうに舌打ちをする。

「ふふ、私もフリックに倒れられたら困る」

○○は笑った。

「じゃ、なくてだな」

フリックは眉間にシワを寄せ、少し顔を赤くした。

「……………………寂しい」

○○はフリックの顔を見て呟いた。

「私、フリックとそんなに離れるの…………寂しいな」

○○は困った様に笑った。

「………………俺もだ」

フリックは呟くと○○に唇を寄せる。

「…………なんのつもりだ」

フリックは不服そうに声を出す。

○○はフリックの唇を手で塞いでいた。

「え?だって……ここで?」

○○は困った顔をする。

「…………誰もいないだろ」

フリックが○○の手を退けて無理矢理口付ける。

「んっ」

○○は恥ずかしそうに口付けを受けた。




「………………ねぇ、行くって」

「っ!!」

「っ!!!」

突然の声にフリックと○○は驚く。

「僕、先に行くから早くしてね」

ルックはそう冷たく言い放つと、さっさと去って行った。

「……」

「…………じ、じゃあ、行って来るぜ」

フリックは冷や汗かきながら声を出す。

「…………フリックの……バカ」

○○は真っ赤な顔で小さく呟いた。

「わ、悪かっ!!」

フリックの言葉を遮る様に○○からフリックへと口付けた。

「じゃあ!私仕事に戻るわ!お土産楽しみにしてる!」

○○はにっこりと微笑み酒場へと消えて行った。

「……………………反則だろ、それは」

フリックは赤くなった顔を片手で隠し、座り込んだ。

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