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「魚欲しいな。レオナ、ちょっと仕入れに行って来るね」

○○はそうレオナに言うと調理場から離れるためにエプロンを外す。

「あぁ、行っておいで」

レオナはにこりと言った。








「こんにちはヤム・クーさん!」

○○は地下を通り抜けた先にある船着き場近くのヤム・クーの所にやって来た。

「こんにちは、○○さん。魚ですか?」

ヤム・クーはそう声を出した。

「はい!今日は魚をメインにしようと思いまして」

○○はにこにこと笑った。

「そうですかい。やっぱり魚は取れ立てが美味しいですからね」

ヤム・クーもにこりと笑った。

「お、酒場の姉ちゃんじゃねーな」

漁師小屋からタイ・ホーも出てきた。

「こんにちは、タイ・ホーさん!」

○○はタイ・ホーにもにこりと挨拶をした。

「○○さん魚が欲しいそうですよ」

ヤム・クーがタイ・ホーに言った。

「なるほどな。たまには酒場にも行くか」

タイ・ホーは顎髭を撫でた。

「それは良いですね」

ヤム・クーも頷いた。

「それは私も楽しみです」

○○は嬉しそうに笑った。

「そうかい?……姉ちゃん、チンチロリンやってくかい?」

「……兄貴……」

タイ・ホーの言葉にヤム・クーが呆れ気味に呟いた。

「チンチロリン?」

○○は不思議そうに繰り返す。

「あぁ。ちょっとした賭け事さ」

タイ・ホーはニヤリと笑うと懐からサイコロを取り出した。

「え……でも、私、賭けられる物もないですよ?」

○○は困った顔をする。

「大丈夫だ!そうだな。一晩中お酌ってのどうだ?」

タイ・ホーはニヤリと笑った。

「お、お酌?」

○○は困った様に笑う。

「……兄貴」

ヤム・クーはため息をついた。

「で、姉ちゃんが勝ったら俺が解放軍時代の話でもしてやるぜ、一晩中」

タイ・ホーがニヤリと笑った。

「……それは、気になりますね」

○○は心を動かされる。

(あれ?今のってどっちにしろ兄貴と○○さんが一晩中一緒じゃないか?)

ヤム・クーはそう思い当たり、首をかしげる。

「ほんじゃま、やるかい?」

タイ・ホーはサイコロを手の中で転がした。

「…………良いですよ」

○○は真剣な顔をした。

「待って○○さん!それじゃぐはっ!」

タイ・ホーが素早くヤム・クーを黙らせた。

「ほれ、じゃあ振ってみな」

タイ・ホーがサイコロを○○に渡しまた。

「じゃあ!行きます」

○○はサイコロを振った。







「おや、○○、どうしたんだい?男2人引き連れて」

レオナは○○とタイ・ホー、ヤム・クーを見た。

「えへへ……。チンチロリンに負けてしまいました」

○○は困った様に笑う。

「……あらまぁ」

レオナは呆れた様にキセルをふかした。

「とりあえず、座っててくれますか?仕事は片付けないと」

○○はそう笑った。

「それは、もちろんだ」

タイ・ホーは大人しく席に座った。

○○はなるべく早く仕込みを仕上げ、自分が仕事をしなくても良いほどにした。



そして先に呑み始めているタイ・ホーとヤム・クーの席に酒とつまみを持ってやって来た。

「お待たせしました」

○○はそう言って、同じテーブル座った。

「すいませんね、兄貴の我が儘に付き合ってもらって」

ヤム・クーはそう笑った。

「なんだよ、そりゃ」

タイ・ホーは不服そうに口を尖らせた。

「いいえ!楽しそうですから!さ、どうぞ」

○○はタイ・ホー、ヤム・クーの順にお酌をする。

「すいませんね、俺まで」

「そうだよな!こいつは関係ないぞ」

ヤム・クーの言葉にタイ・ホーが言う。

「クスクス、お二人とも仲が良いんですね」

○○は楽しそうに笑ってお酌をする。

「義兄弟だからな」

タイ・ホーは笑った。

「義兄弟!なんかカッコイイですね」

「そうかい?」

○○の言葉にタイ・ホーは楽しそうに笑った。

「はい!お二人はどうやって知り合ったんですか?やっぱり漁師仲間ですか?」

○○は興味津々と聞いた。

「いやー、ちょっとな」

「何、カッコ付けてるんですかい?昔、賭け事をしてた時に喧嘩をしましてね」

ヤム・クーがあっさりと言った。

「へぇ!それからはずっと?」

○○は楽しそうにヤム・クーを見た。

「へい、義兄弟の盃を交わしまして」

ヤム・クーがそう笑った。

「へぇ!凄いですね!」

「そんな事もないだろ?」

真っ直ぐな目で見られ、タイ・ホーはニヤリと笑った。



話は尽きず、タイ・ホー、ヤム・クーの話から、門の紋章戦争の話などを語った。

もう、すでに夜中の時間を回っていた。

「だからよ、あのビクトールとフリックが生きてたのには驚いたろ」

若干呂律が怪しいタイ・ホーはそれでも流暢に話していく。

「へぇ!そんな事が!!」

○○は驚きながらタイ・ホーの話を聞いた。

「フリックから坊っちゃんを庇って矢に刺さったのは聞いていたけど……」

○○はそう思い出した。

「カッコ良かったですぜ!」

ヤム・クーも懐かしそうに言った。

「さすが!ビクトールとフリック!!」

○○はにこにこと酔った赤い顔で言った。

すでに酒場の客はほとんどいなかった。

「さて、そろそろ寝るかい?」

タイ・ホーはそう提案する。

「そうですね、○○さん、送りやしょう」

ヤム・クーがそう言う。

「うー……」

○○はその場で眠りそうになる。

「お、おいおい、起きなって」

タイ・ホーは笑いながら○○を揺する。

「んー……ん?」

「……」

「……」

○○は酒酔いで顔を赤く染め、眠そうな目で何とか起きている、とろんとした目で2人を見た。
それに釘付けになるタイ・ホーとヤム・クー。

「……兄貴、ヤバイですぜ」

ヤム・クーが困った様に呟いた。

「……お前部屋まで運べよ」

「えぇ?!ズルいですぜ」

タイ・ホーの言葉にヤム・クーは抗議した。


しかし、結局は兄貴分に勝てるはずもなく、ヤム・クーは○○を支えて歩き出す。




「○○さん、部屋はここですかい?」

「うん……」

○○が鍵を取り出し、ドアにカチャカチャと入れる。

と、ドアが内側から開いた。

「○○帰って来たか……ヤム・クーじゃないか?」

中からフリックが出てきた。

「……え?あ?」

ヤム・クーはフリックに驚いた。

「フリック!」

「っ!!」

○○は嬉しそうにフリックへと抱き付く。それを見たヤム・クーはさらに驚く。

「なんだ、お前酔ってるのか?」

フリックは○○を見た。

「酔ってないよ?」

○○は真っ赤な顔のままフリックにすり寄る。

「全く……。悪いな、ヤム・クー」

「いえ……」

フリックがヤム・クーに苦笑する。

「あの、旦那」

「何だ?」

ヤム・クーが口を開いた。

「俺が言うのも何なんだけと、○○さんの事が大切なら、他の男の前で飲ませない方が良いですぜ」

ヤム・クーは苦笑した。

「…………肝に銘じておく」

フリックは眉間にシワを寄せた。

「じゃあ、俺はこれで」

「おう」

ヤム・クーはそう言って、去っていった。



「フリックぅ!」

○○はフリックにぎゅっとしがみついている。

「……お前は隙があり過ぎなんだよ」

フリックはため息をつくと、○○の唇を奪う。

「ん、はっ」

「お前、ビクトールともしてんだろ?」

フリックは自分のベッドに○○を押し倒し、激しく口付ける。

ビクトールは遠征中で、今は2人だけだ。

「うぅっ!」

○○は息苦しそうに悶える。

「全く……。俺にだって余裕なんか無いんだぜ」

フリックは○○のワンピースを脱がせながら言う。

「フリック……」

○○はとろんとした目でフリックを呼ぶ。

「ん?」

「大好きよ」

「っ、俺もだよ」

フリックは赤くなりながら頷いた。

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