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「っ!……」
○○は目を覚ますと、すぐそばにフリックが眠っていた。
「……」
○○はキョロキョロと辺りを見回す。
どうやら自分の部屋らしい。
昨晩はU主、ナナミ、カミュー、マイクロトフ、ハンフリー、フッチ、ビクトールそしてフリックと食事をした。
「そうだ」
そこで、フリックの酒を間違えて飲んでしまった。
厨房で仕込みが終わったら、意識が遠くなったのだ。
「……」
○○はどうやらフリックに運ばれてここまで帰って来た様だ。
「ありがとう、フリック」
○○はフリックの寝顔ににっこりと笑った。
「それだけか」
「へ?っ!」
確かに規則正しく寝息を立てていたフリックから、急に少し掠れた声がした。
○○はフリックの腕の中に閉じ込められた。
「……お、起きてたの?」
○○は寝起きの色気あるフリックにドキドキしながら聞いた。
「いや、起きた」
フリックはそう言いながらあくびをした。
「昨日……」
○○はおずおずと声を出す。
「あ?あぁ。厨房で寝てたぞ」
フリックが笑った。
「やっぱり。ごめんね、フリックが運んでくれたんでしょ?」
「ああ」
○○の言葉にフリックは頷いた。
「お、重かったよね。ごめんね」
○○は困った顔をする。
「いや、そんな重くもないよ」
フリックは○○を抱き寄せる。
「お前の乱れた姿が良かったぜ」
フリックは小さな低い声で言った。
「っ!!!嘘!!」
○○は焦った様に叫ぶ。
「おい、ビクトールが起きるぞ」
フリックがチラリとドアに視線を送る。
「だ、だって……」
○○は赤い顔で小さく抗議した。
「ここまで連れてきて寝かせたのは良いが、俺を離さなかったのはお前だぞ」
フリックはやれやれと笑った。
「そ、それでフリックはここにいるんだ。ごめんね。寝にくかったでしょ?」
○○は申し訳なさそうに声を出す。
「………………確かに寝にくかったな。お前は寝ちまうから手も出せないしな」
フリックはニヤリと笑った。
「う…………」
○○は顔を真っ赤にしてた。
「どうした?顔が赤いぞ」
「っ!フリックの意地悪」
○○はフリックを睨み付ける。
「一晩中好きな女が隣にいて、何もしないでやったんだぜ?どこが意地悪だ」
フリックは不機嫌そうに呟いた。
「…………」
○○は顔を真っ赤にしたまま押し黙る。
「んん」
フリックは○○に口付ける。
最初は触れるだけを繰り返し、徐々に舌を絡ませ、濃厚なものにする。
「はぁ……やるか?」
フリックは唇を離してそう呟いた。
「い、嫌よ。ビクトール隣にいるし!」
○○は小声で言う。
「いるからなんだよ?鍵はかけてあるぜ」
フリックがニヤリと笑った。
「っ!!だ、だって……」
「聞かせてやれば良いだろ?」
「っ!!!」
フリックの言葉に○○は頭がパンクしそうになる。
「なぁ……」
「…………」
フリックの色香にクラクラと流されそうになるが、そうはいかない。
「…………フリック……」
○○は照れたようにフリックを見る。
「なんだ?」
「わ、私、フリックの事大好きよ?」
○○はもじもじと言う。
「だから、フリックのそう言う姿は誰にも見せたくないし、もちろん聞かせたくないの」
「……」
「それがビクトールでもね。フリックの事が大切だから」
○○は恥ずかしそうににっこりと笑った。
「だ、だから、ビクトールが……、隣に人がいる時は嫌……かな?ダメ?」
○○は上目遣いでフリックを見る。
「はぁ……。分かった。俺だって○○を他の奴に見せたくない」
フリックは仕方がないとため息をついた。
「ごめんね、フリック」
○○は内心ホッとしながら謝った。
「今日は謝ってばかりだな」
フリックはそう言うと優しく撫でた。
「そうだね。じゃあ、ありがとう、フリック」
○○はにっこりと笑った。
「……ったく。まだ早いから寝直すぞ」
フリックは○○を逆側に向かせ、背中から抱き付いた。
「……え?」
○○は首筋にフリックの息を感じて戸惑う。
「うるさい、寝ろ」
フリックはそれだけ言うと首筋に唇を押し付ける。
「っ!!」
○○の反応に気を良くしたフリックは首筋に繰り返し口付け、時折痕を残す。
手は○○の腹から胸に移動したり、足の方へ降りたりと動かした。
そのたびにぴくりと反応する○○の体を楽しそうに堪能した。
○○は必死に口を押さえて声だけは出さないようにしていた。
「ーーーーっ」
フリックは突然触るのを止め、くるりと背中を向ける。
「?フリック?」
○○は不思議そうにフリックを振り返る。
「寝る。このままじゃ、本当に止まらなくなるからな」
フリックはそう言うと目を閉じた。
「……ありがとう」
○○は嬉しそうに笑うとフリックの背中にぴったりとくっ付いて目を閉じた。
「お休み」
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