70
「○○さーーん!!」
「っわっと!ナナミちゃん!お帰り」
酒場で仕事をしている○○に飛び付いて来たのはナナミであった。
「U主様もお帰りなさい」
にっこりとU主を見る。
「ただいま!○○さん、様付け止めてくださいよ。一応命の恩人なんですから」
○○は困った様に笑った。
「ん!じゃあ、いつも通りU主くんで」
○○はにっこりと笑った。
「あ!フリックにビクトールも!」
「俺達はついでか?」
「冷たいなー○○!」
フリックとビクトールは不満気に笑った。
「えっと……なんか、人数多いね……」
○○は後ろの人達を見た。
「そうそう!○○さん!こちら、マチルダ騎士団のマイクロトフさんに、カミューさん!!」
「こんばんは」
「宜しくお願いします、レディ」
マイクロトフは真面目に、カミューは優雅にお辞儀をした。
「ミューズの丘上会議の時のイケメン!!」
○○はナナミに呟いた。
「ね!偉い?」
「良くやったわ!」
2人はクスクスと笑い合った。
「後、こっちがハンフリーさんにフッチ!」
「…………………………よろしく」
「元竜騎士のフッチです。よろしくお願いします」
ハンフリーとフッチがそれぞれお辞儀をする。
「で、こっちが酒場のレオナさん!パーティ編成でお世話になります!」
「宜しく頼むよ」
レオナは妖艶な笑みをした。
「で、こっちが酒場のコックさんの○○さん!」
「宜しくお願いします!あ、ご飯食べて行くの?」
○○はU主に聞く。
「うん!レストランいっぱいだったから」
U主はにっこりと笑った。
「嘘つけ、酒場に直行したのはお前だろ?」
ビクトールはニヤリと笑った。
「だって!○○さんのご飯食べたかったから」
U主はにっこりと笑った。
「ありがとう!じゃあ、テーブルくっ付けるね」
○○がテーブルに近付くとフリックが後を追う。
「これか?」
「うん、ありがとう」
○○はフリックににっこりと笑った。
「じゃあ、座って待ってて?とりあえずお酒と……ジュースは3つ?」
○○はU主とナナミとフッチを見る。
「じゃあ、少々御待ちください」
○○はにっこりと笑うと、去っていく。
すでに食事のピークは過ぎ、つまみや酒に移行しているので、○○の仕事は少なくなっていた。
「はい、まずはジュース」
「ありがとう!」
「ありがとうございます」
「ありがとう!」
U主、フッチ、ナナミは嬉しそうに受け取った。
「で、お酒が」
「お、さんきゅ」
「……………………あぁ」
「ありがとうございます」
「ありがとう」
「悪いな」
ビクトール、ハンフリー、カミュー、マイクロトフ、フリックが受け取った。
「食事はどうする?」
○○は見渡した。
「あー、適当に作ってくれるか?」
フリックが○○を見上げる。
「分かった。ごゆっくり」
○○は唐揚げやフライ、卵焼きや、シチューやオムライスなども作って適当にテーブルに並べた。
「ねぇねぇ!○○さんも座ろうよ!」
「え?いや、まだ私、仕事中……」
「リーダー命令」
「…………はい」
U主の笑顔に○○は苦笑した。
○○はレオナに了解を取ると、フリックとナナミの間に椅子をもって来て座った。
「こんなに大人数だと楽しいね」
ナナミは上機嫌で笑った。
「ねぇねぇ!フッチくんの抱っこしてるのは……」
○○はうずうずと聞いた。
「あ、はい、ブライトと言います。一応竜です」
フッチは赤ちゃん竜のブライトを掲げた。
○○は席を立ち、フッチに近寄る。
「ねぇ、触っても良い?」
「はい」
フッチは頷いた。
恐る恐る頭を撫でると、気持ち良さそうに目を閉じるブライト。
「っ!可愛い!!」
「うわっ!」
「ぶっ!」
○○はブライトをフッチごと抱き締める。
「……フリック」
ビクトールは呆れて声を出す。
「あはは!○○さん、ムクムクの時と同じ反応!」
ナナミは可笑しそうに笑った。
「だ、だって、可愛い!!」
○○はキラキラとブライトとフッチを見た。
フッチは顔を真っ赤にして固まっている。
「成功!」
「お前、このために酒場に?」
ビクトールは喜ぶU主に呆れる。
「まさか!」
U主はニヤニヤと笑った。
「……」
フリックは眉間にシワを寄せ、頭を抱えている。
「クスクス、こんなに賑やかな食事は久しぶりだね、マイク」
カミューはクスクスと笑いながら声を出す。
「そうだな。最近は特に……な」
マイクロトフも静かに頷いた。
「すみません、騎士の皆さんには騒がし過ぎますよね?」
○○は苦笑してカミューとマイクロトフを見た。
「いえ、我々も楽しめます」
カミューはにこりと○○に微笑んだ。
「…………さすがです」
○○はカミューの笑顔にカッと熱が上がり釘付けになる。
「おい、○○……」
フリックが呆れながら○○を見た。
「ふふ、フリックも格好いいよ」
○○は楽しそうにクスクスと笑う。
「……やっぱり。お前、俺の酒飲んだろ」
フリックは空になったジョッキを見た。
「ふふ、何か楽しいね」
○○はすでに顔を赤くしていた。
「お前、弱いんだから……」
フリックはため息をついた。
「決めた!」
「ん?どうしたの?U主??」
突然U主が叫び、ナナミが聞く。
「フリックさん!カミューさん!マイクロトフさん!3人には美青年攻撃をしてもらいます!!!」
U主は高々と宣言した。
「……」
「……」
「……」
笑顔のカミューと、驚くマイクロトフと、嫌そうなフリックは無言になる。
「ぷくく!美青年攻撃!!!」
○○は何がツボにハマったのか、笑い始めた。
「誰がやるか!!」
フリックが怒りに任せて叫んだ。
「あれ?でも前もやってましたよね?アレンさんとグレンシールさんと」
フッチが不思議そうに声を出す。
「ねぇ?ハンフリーさん」
「……………………ああ」
フッチの疑問にハンフリーは頷いた。
「お前、坊っちゃんと同じ思考回路だな」
がははとビクトールが笑った。
「トランの英雄とですか?!嬉しいです!」
U主は明るく笑う。
「良いじゃない、フリック」
○○はにっこりと笑った。
「……」
フリックが半眼で睨むが○○は気にしていない。
「だってよ!見て!」
○○は隣り合って座る騎士を見る。
「あの美形に並ぶんだよ?生半可な美形じゃ無理だよ!」
○○は大真面目に言った。
「無理無理!!フリックさんしか無理だよねー!」
「ねー!」
ナナミの言葉に○○は笑った。
「……うるせぇ、酔っ払い」
フリックは呆れて声を出す。
「フリック殿、女性にその言い方は……」
マイクロトフが眉間にシワを寄せ、フリックをたしなめる。
「マイクロトフさん!」
それを聞いた○○は勢い良く立ち上がる。
「はっはい?!」
マイクロトフは突然呼ばれて驚く。
「中身までイケメンなんてズルいです!!」
「え?す、すみません」
○○の迫力にマイクロトフがたじたじと謝る。
「そこは謝るところじゃないよ?マイク」
カミューはクスクスと笑った。
「でもさ、U主。青、青、赤ってバランス悪くない?」
ナナミはU主を見た。
「うーん、そうですね。フリックさんかマイクロトフさん緑になります?」
U主が声を出す。
「あ、それだとグレンシールさんとかぶります」
フッチが真面目に声を出す。
「そうなの?じゃあ黄色?」
U主が考えてから言う。
「ぷぷ!黄色いフリック」
○○が笑った。
「誰が黄色になるか!」
フリックが嫌そうに声を出す。
「じゃあ、マイク黄色になるかい?」
カミューがクスクスと笑う。
「………………」
マイクロトフはカミューには否定したいが、リーダーであるU主を否定して良いのか真面目な彼は悩んだ。
「っと、私は明日の仕込みがあるのでこの辺で。皆さんはごゆっくり」
○○はにこりと微笑むと席をふらりと立ち上がる。
「おい、大丈夫か?」
フリックが○○の様子を見る。
「大丈夫!」
○○は笑顔で厨房へ去っていく。
「うーん!お腹もいっぱいになったし、○○さんも行っちゃったし、そろそろ寝ようか?」
U主は伸びをする。
「そうだね!私も疲れちゃった!」
ナナミとU主が席を立つ。
「じゃあ、僕も」
フッチがブライトを抱いて立ち上がる。
「そうだな。お子様は早く寝な」
ビクトールは笑って手を振った。
残ったビクトール、フリック、ハンフリー、カミュー、マイクロトフは酒を飲み進めた。
同じテーブルにフリック、マイクロトフ、カミューと美形3人が集まっているので、ウエイトレスが代わる代わる酒を運び、酒には困らなかったのだ。
「フリック」
「なんだ?」
レオナに呼ばれフリックは席を立つ。
「あれ、どうにかしておくれ」
「あれ?」
レオナが親指で指す方を見ると、厨房の床に座って寝息を立てている○○の姿があった。
「…………」
「仕込みが終わった瞬間寝ちまってね」
レオナは苦笑した。
「仕方ないな」
フリックは○○の前にしゃがみこむ。
「おい、こんな所で寝ると風邪引くぜ」
「ん……うん」
フリックの声に○○は少し反応する。
「ったく」
フリックはやれやれと○○を抱き上げる。
「宜しく頼むよ」
レオナはニヤリと笑った。
「あぁ」
フリックはそのまま一度テーブルに戻る。
「悪いが先にあがるぜ」
フリックは苦笑した。
「おや、寝てしまったんですね」
カミューがにこりと笑った。
「ガキかよ」
ビクトールが笑った。
「………………」
ハンフリーは珍しい物を見るようにフリックを見た。
「手伝いましょうか?」
「いや、大丈夫だ」
マイクロトフの申し出をフリックは断り、酒場を後にした。
「な?驚いたろ?」
「……ああ」
ニヤニヤと笑うビクトールの言葉にハンフリーが驚きを隠さないまま頷いた。
[ 70/121 ][*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]