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「○○さーーん!!」

「っわっと!ナナミちゃん!お帰り」

酒場で仕事をしている○○に飛び付いて来たのはナナミであった。

「U主様もお帰りなさい」

にっこりとU主を見る。

「ただいま!○○さん、様付け止めてくださいよ。一応命の恩人なんですから」

○○は困った様に笑った。

「ん!じゃあ、いつも通りU主くんで」

○○はにっこりと笑った。

「あ!フリックにビクトールも!」

「俺達はついでか?」

「冷たいなー○○!」

フリックとビクトールは不満気に笑った。

「えっと……なんか、人数多いね……」

○○は後ろの人達を見た。

「そうそう!○○さん!こちら、マチルダ騎士団のマイクロトフさんに、カミューさん!!」

「こんばんは」

「宜しくお願いします、レディ」

マイクロトフは真面目に、カミューは優雅にお辞儀をした。

「ミューズの丘上会議の時のイケメン!!」

○○はナナミに呟いた。

「ね!偉い?」

「良くやったわ!」

2人はクスクスと笑い合った。

「後、こっちがハンフリーさんにフッチ!」

「…………………………よろしく」

「元竜騎士のフッチです。よろしくお願いします」

ハンフリーとフッチがそれぞれお辞儀をする。

「で、こっちが酒場のレオナさん!パーティ編成でお世話になります!」

「宜しく頼むよ」

レオナは妖艶な笑みをした。

「で、こっちが酒場のコックさんの○○さん!」

「宜しくお願いします!あ、ご飯食べて行くの?」

○○はU主に聞く。

「うん!レストランいっぱいだったから」

U主はにっこりと笑った。

「嘘つけ、酒場に直行したのはお前だろ?」

ビクトールはニヤリと笑った。

「だって!○○さんのご飯食べたかったから」

U主はにっこりと笑った。

「ありがとう!じゃあ、テーブルくっ付けるね」

○○がテーブルに近付くとフリックが後を追う。

「これか?」

「うん、ありがとう」

○○はフリックににっこりと笑った。

「じゃあ、座って待ってて?とりあえずお酒と……ジュースは3つ?」

○○はU主とナナミとフッチを見る。

「じゃあ、少々御待ちください」

○○はにっこりと笑うと、去っていく。



すでに食事のピークは過ぎ、つまみや酒に移行しているので、○○の仕事は少なくなっていた。

「はい、まずはジュース」

「ありがとう!」

「ありがとうございます」

「ありがとう!」

U主、フッチ、ナナミは嬉しそうに受け取った。

「で、お酒が」

「お、さんきゅ」

「……………………あぁ」

「ありがとうございます」

「ありがとう」

「悪いな」

ビクトール、ハンフリー、カミュー、マイクロトフ、フリックが受け取った。

「食事はどうする?」

○○は見渡した。

「あー、適当に作ってくれるか?」

フリックが○○を見上げる。

「分かった。ごゆっくり」

○○は唐揚げやフライ、卵焼きや、シチューやオムライスなども作って適当にテーブルに並べた。

「ねぇねぇ!○○さんも座ろうよ!」

「え?いや、まだ私、仕事中……」

「リーダー命令」

「…………はい」

U主の笑顔に○○は苦笑した。

○○はレオナに了解を取ると、フリックとナナミの間に椅子をもって来て座った。

「こんなに大人数だと楽しいね」

ナナミは上機嫌で笑った。

「ねぇねぇ!フッチくんの抱っこしてるのは……」

○○はうずうずと聞いた。

「あ、はい、ブライトと言います。一応竜です」

フッチは赤ちゃん竜のブライトを掲げた。
○○は席を立ち、フッチに近寄る。

「ねぇ、触っても良い?」

「はい」

フッチは頷いた。

恐る恐る頭を撫でると、気持ち良さそうに目を閉じるブライト。

「っ!可愛い!!」

「うわっ!」

「ぶっ!」

○○はブライトをフッチごと抱き締める。

「……フリック」

ビクトールは呆れて声を出す。

「あはは!○○さん、ムクムクの時と同じ反応!」

ナナミは可笑しそうに笑った。

「だ、だって、可愛い!!」

○○はキラキラとブライトとフッチを見た。
フッチは顔を真っ赤にして固まっている。

「成功!」

「お前、このために酒場に?」

ビクトールは喜ぶU主に呆れる。

「まさか!」

U主はニヤニヤと笑った。

「……」

フリックは眉間にシワを寄せ、頭を抱えている。

「クスクス、こんなに賑やかな食事は久しぶりだね、マイク」

カミューはクスクスと笑いながら声を出す。

「そうだな。最近は特に……な」

マイクロトフも静かに頷いた。

「すみません、騎士の皆さんには騒がし過ぎますよね?」

○○は苦笑してカミューとマイクロトフを見た。

「いえ、我々も楽しめます」

カミューはにこりと○○に微笑んだ。

「…………さすがです」

○○はカミューの笑顔にカッと熱が上がり釘付けになる。

「おい、○○……」

フリックが呆れながら○○を見た。

「ふふ、フリックも格好いいよ」

○○は楽しそうにクスクスと笑う。

「……やっぱり。お前、俺の酒飲んだろ」

フリックは空になったジョッキを見た。

「ふふ、何か楽しいね」

○○はすでに顔を赤くしていた。

「お前、弱いんだから……」

フリックはため息をついた。

「決めた!」

「ん?どうしたの?U主??」

突然U主が叫び、ナナミが聞く。

「フリックさん!カミューさん!マイクロトフさん!3人には美青年攻撃をしてもらいます!!!」

U主は高々と宣言した。

「……」

「……」

「……」

笑顔のカミューと、驚くマイクロトフと、嫌そうなフリックは無言になる。

「ぷくく!美青年攻撃!!!」

○○は何がツボにハマったのか、笑い始めた。

「誰がやるか!!」

フリックが怒りに任せて叫んだ。

「あれ?でも前もやってましたよね?アレンさんとグレンシールさんと」

フッチが不思議そうに声を出す。

「ねぇ?ハンフリーさん」

「……………………ああ」

フッチの疑問にハンフリーは頷いた。

「お前、坊っちゃんと同じ思考回路だな」

がははとビクトールが笑った。

「トランの英雄とですか?!嬉しいです!」

U主は明るく笑う。

「良いじゃない、フリック」

○○はにっこりと笑った。

「……」

フリックが半眼で睨むが○○は気にしていない。

「だってよ!見て!」

○○は隣り合って座る騎士を見る。

「あの美形に並ぶんだよ?生半可な美形じゃ無理だよ!」

○○は大真面目に言った。

「無理無理!!フリックさんしか無理だよねー!」

「ねー!」

ナナミの言葉に○○は笑った。

「……うるせぇ、酔っ払い」

フリックは呆れて声を出す。

「フリック殿、女性にその言い方は……」

マイクロトフが眉間にシワを寄せ、フリックをたしなめる。

「マイクロトフさん!」

それを聞いた○○は勢い良く立ち上がる。

「はっはい?!」

マイクロトフは突然呼ばれて驚く。

「中身までイケメンなんてズルいです!!」

「え?す、すみません」

○○の迫力にマイクロトフがたじたじと謝る。

「そこは謝るところじゃないよ?マイク」

カミューはクスクスと笑った。

「でもさ、U主。青、青、赤ってバランス悪くない?」

ナナミはU主を見た。

「うーん、そうですね。フリックさんかマイクロトフさん緑になります?」

U主が声を出す。

「あ、それだとグレンシールさんとかぶります」

フッチが真面目に声を出す。

「そうなの?じゃあ黄色?」

U主が考えてから言う。

「ぷぷ!黄色いフリック」

○○が笑った。

「誰が黄色になるか!」

フリックが嫌そうに声を出す。

「じゃあ、マイク黄色になるかい?」

カミューがクスクスと笑う。

「………………」

マイクロトフはカミューには否定したいが、リーダーであるU主を否定して良いのか真面目な彼は悩んだ。

「っと、私は明日の仕込みがあるのでこの辺で。皆さんはごゆっくり」

○○はにこりと微笑むと席をふらりと立ち上がる。

「おい、大丈夫か?」

フリックが○○の様子を見る。

「大丈夫!」

○○は笑顔で厨房へ去っていく。

「うーん!お腹もいっぱいになったし、○○さんも行っちゃったし、そろそろ寝ようか?」

U主は伸びをする。

「そうだね!私も疲れちゃった!」

ナナミとU主が席を立つ。

「じゃあ、僕も」

フッチがブライトを抱いて立ち上がる。

「そうだな。お子様は早く寝な」

ビクトールは笑って手を振った。

残ったビクトール、フリック、ハンフリー、カミュー、マイクロトフは酒を飲み進めた。

同じテーブルにフリック、マイクロトフ、カミューと美形3人が集まっているので、ウエイトレスが代わる代わる酒を運び、酒には困らなかったのだ。








「フリック」

「なんだ?」

レオナに呼ばれフリックは席を立つ。

「あれ、どうにかしておくれ」

「あれ?」

レオナが親指で指す方を見ると、厨房の床に座って寝息を立てている○○の姿があった。

「…………」

「仕込みが終わった瞬間寝ちまってね」

レオナは苦笑した。

「仕方ないな」

フリックは○○の前にしゃがみこむ。

「おい、こんな所で寝ると風邪引くぜ」

「ん……うん」

フリックの声に○○は少し反応する。

「ったく」

フリックはやれやれと○○を抱き上げる。

「宜しく頼むよ」

レオナはニヤリと笑った。

「あぁ」

フリックはそのまま一度テーブルに戻る。

「悪いが先にあがるぜ」

フリックは苦笑した。

「おや、寝てしまったんですね」

カミューがにこりと笑った。

「ガキかよ」

ビクトールが笑った。

「………………」

ハンフリーは珍しい物を見るようにフリックを見た。

「手伝いましょうか?」

「いや、大丈夫だ」

マイクロトフの申し出をフリックは断り、酒場を後にした。

「な?驚いたろ?」

「……ああ」

ニヤニヤと笑うビクトールの言葉にハンフリーが驚きを隠さないまま頷いた。

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