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「よお、レオナ」
「おや?どうしたんだい?フリック」
酒場に入ったフリックを見て、レオナは不思議そうに声を出す。
「あ?あぁ、朝起きたらバンダナがなくてな。知らないか?」
フリックはキョロキョロと探した。
「あぁ、そう言えば昨日ここに落ちてて、あのニナって子が持って行ったよ」
レオナはニヤニヤとキセルを吹かした。
「ちっ、あいつ……」
フリックは不機嫌な顔で舌打ちをした。
「ところで、○○知らないかい?まだ来てないんだよ」
レオナは心配そうに声を出す。
「あぁ、○○なら今日は来れないぜ。まだ寝てる」
フリックは当たり前の様に言った。
「珍しい。砦にいた時でさえ、そんな事はなかったのに。風邪かなにかかい?」
レオナは不思議そうに声を出す。
「……いや」
フリックはニヤリと笑った。
「…………………………」
レオナは今のフリックの顔で理解した。
「まぁ、程ほどにしておやり」
レオナは呆れた様に言った。
「次はな」
フリックは頷いた。
「私から言える事は、泣かすんじゃないよ」
レオナはニヤリと真剣な顔で笑った。
「もちろんだ」
フリックはそれだけ言うと、バンダナを探すべく酒場を後にした。
「○○も大変だねぇ」
レオナはふーっと紫煙を吐き出した。
「おはよう、レオナ」
○○は次の日早く、酒場の厨房に立っていた。
「おや、もう良いのかい?」
レオナは妖艶な笑みをした。
「う、うん!もう大丈夫!やっぱり私には遠征とか大変で」
○○は照れた様に笑った。
「ふふ、それだけかい?」
「っ!!!」
レオナの言葉に○○は顔を赤くした。
「ふふ、じゃあ、今日からまた宜しく頼むよ」
「は、はい!」
レオナの言葉に○○は頷いた。
アシタノ城には沢山の人々が集まりだした。
レストランを経営するハイ・ヨーも仲間に加わり、○○の負担も減り、客層も分担された。
おもにハイ・ヨーのレストランは少年少女や酒を飲まない者達が集まる。酒場には酒を好む大人が集まる。後はレオナ目当ての客も酒場には多かった。
「俺は酒場派だな!レオナさんは勿論、○○の手料理にはやっぱり男が作るのとは違う味がする!!」
「あー!それわかる!」
「俺も!!」
○○の料理はなかなか好評のようである。
「なぁ、○○!唐揚げ!」
「あ、はーい!」
○○は今日もくるくると働いた。
傭兵の砦の時と違い、同じ物を人数分作るのではなく、注文の品を作るので忙しい。
リューベではそれが当たり前だったのだが、人数の違いに○○は戸惑いながらもなんとかこなして行った。
「注文の入りまーす!」
「はーい!」
ウエイトレス達も良く働き、酒場は繁盛していた。
「オムライスにカレーにしょうが焼き定食上がりました!!ってか、レストランに行ってよ!!」
あまりにも食事が多く、○○は目を回していた。
「○○!俺達はシチュー五人前!!」
傭兵の砦の時からの傭兵が注文する。
「はぁい!」
「やっぱり○○の料理じゃないと、食った気しなくてさー」
傭兵は笑いながら言った。
「ありがとう!!」
○○は嬉しそうににっこりと笑った。
「あー、癒される」
「何だろうな、特別美人って訳でも無いんだけどな」
「なんつーか、魅力的だよな」
「不思議な魅力な」
「それそれ!」
傭兵達は○○を見ながら口々に言った。
「ふふ、残念だけど○○には手ぇ出さない方が身のためだよ」
レオナは妖艶な笑みをして、キセルをふかした。
「「「っ!!!」」」
その場にいた何人かがショックを受けた。
「シチューお待たせしました!」
○○は自らにこにことシチューを運んできた。
○○はいつものワンピースにエプロンをしている。
「○○!!」
「え?何?」
傭兵の声に○○は驚く。
「い、一体誰のモノになっちまったんだ?!」
「はぁ?」
○○は呆れた声を出す。
「くそっ!傭兵の砦が出来た時からの古株だから油断してた!」
「俺達の認める奴じゃなきゃダメだぞ!!」
「お、俺は!俺は!」
男達は口々に言った。
「………………シチュー冷めるよ」
○○は呆れながら笑った。
「狙ってた女を取られるってよりも、大切にしてた愛娘を取られる父親みたいだね」
レオナも呆れながら笑った。
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