68
フリックは○○を○○の部屋へ入れ、鍵をかける。
「……」
「念のためだろ?」
○○の視線にフリックは苦笑した。
フリックは○○を抱き寄せて、手を頬に添え口付ける。
「ん……」
○○は結局は大人しくフリックを受け入れる。
フリックは満足そうな顔をすると、手を頬から首へと動かす。
「っ痛っ!」
「どうした?」
○○の顔が痛みに歪む。
フリックは心配そうに覗き込む。
「けほっ……大丈夫……けほっ」
○○は困った様に笑いながら、咳き込む。
「……大丈夫じゃないだろ」
フリックはチラリと○○のワンピースのハイネックを引っ張る。
「っ!これは……」
フリックは焦りながら○○のワンピースのチャックを下ろした。
「…………」
○○はフリックに首に付いた青黒い痣を見られて落ち込んだ。
「……」
フリックはストンとベッドに腰かけた。
「……」
○○はフリックの反応にショックを受けた。
「○○」
フリックは顔をあげて、手を○○に差し出す。
「……っ!」
○○がフリックの手を取ると、勢いよくフリックは○○を引っ張り、自分の膝の上に向き合う様に乗せた。
「悪かったな」
フリックは○○を抱き締め小さく呟く。
「な、なんでフリックが謝るの?!」
○○は慌ててフリックを見る。
「…………俺がもっとしっかりしていればお前にこんなモン付けさせなかった」
フリックは声を出す。
「いや、でも」
「俺がもっと強ければお前が囮なんてしなくて済んだ」
フリックは○○の声を遮る。
「……」
「俺が……」
「えい!」
「っ!?」
フリックが落ち込んでいる所に○○がフリックの脇腹を突く。
「フリックのせいじゃないよ!」
○○は怒った。
「でも……」
「なら、私がもっとちゃんと戦えればフリックは私を信用してくれる?」
「……」
「私がもっとしっかりしてればフリックは私を送り出してくれるの?」
「……」
○○の言葉にフリックは眉間にシワを寄せる。
「私だって、フリックにもっと頼りにされたいのに!」
○○は怒る。
「……」
フリックは複雑そうに押し黙る。
「無理だよね。きっと、フリックは私がビクトール並みに強くなっても心配しそうよね」
○○はクスクスと笑った。
「そ、それは……」
フリックはムッと声を出す。
「でも、今回はちょっと怖かった、かな」
○○はフリックの首筋に頭を付けた。
「……俺と別れた後、何が合ったか聞いても良いか?」
フリックは○○の腰を抱く。
「うん……」
○○はフリックにくっ付いたまま話始めた。
シンに魔法をかけ、シードとクルガンを誘き寄せた事。
クルガンに殺されかけた事、シードに助けられた事。
そして、シードが自分に本気な事
「……」
フリックは相槌を入れながら、静かに聞いた。
「…………あ、あのフリック」
「ん?」
○○は深呼吸すると、意を決して口を開いた。
「私と別れる?」
「……」
フリックは眉間にシワを寄せる。
「だ、だって。嫌でしょ?と、言うか、私はフリックやシードにそんなに思ってもらえる様な人格者じゃないよ?」
○○はフリックの顔を見ずに続ける。
「こんな、どこにでもいる、普通の人間なのに……」
○○は困った様に笑った。
「○○」
フリックは低い声を出す。
「お前、シードに惹かれたのか?」
「っ!!!」
フリックの言葉に○○は胸をつかれた。
フリックの事が一番好きな事には代わりない。
しかし、一瞬でもシードの真っ直ぐな心に揺れ動かなかったとは言えない。
「……分からない」
○○は涙を流した。
「でも、フリックが好き……。私は、フリックが好きなの」
○○は声を絞り出した。
「でも、シードに「フラれるまで待つ」って言われて、そうかと納得しちゃったの……」
○○が少しでも動くと、溜まった涙はぽろぽろと落ちた。
「………………フリック。私、今ならまだフリックの事っ」
フリックは○○の唇を無理矢理奪う。
「っん……ふ」
○○は驚きはしたが、フリックを素直に受け入れる。
「お前は何か勘違いをしていないか?」
フリックは○○を至近距離から覗き込む。
「え?」
「俺は別にお前を嫌いになったり、ましてや、フッたりなんかしないぞ?」
フリックはニヤリと笑った。
「だ、だって私」
「まぁな、お前だって女だ。顔が良い男にそんなストレートな言葉を言われたら戸惑うが、悪い気はしないだろ」
フリックはぶっきらぼうに言う。
「だがな、それくらいでお前を手放せるほど、俺も人間なっちゃいないんだ」
フリックは噛み付く様に口付ける。
「んん!」
「俺はあんな野郎に負けないほどお前の事が好きだぜ、○○」
「っ!!!」
フリックの言葉に○○は驚き、先程とは違う涙を流す。
「あ、ありがとう!フリック!」
○○はフリックに抱き付いた。
「……しかし、俺もずいぶんと信用されてないな……」
フリックは不貞腐れた様に呟いた。
「そ、そんな事……」
○○は焦りながらフリックを見る。
「よし、今日はお前の体をもって、ちゃんと教えてやる」
フリックは軽々と○○をベッドに押し倒す。
「え?あ、と。お、お手柔らかに」
○○は少し怯えた様に声を出す。
「それは聞けないな。明日は立てないと思えよ」
フリックはニヤリと笑った。
「っ!!!仕事ある!!」
○○は顔を赤青にして、焦る。
「大丈夫だ。俺からレオナに言っておくよ」
フリックはにっこりと、とても楽しそうに笑った。
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