62
○○は部屋のベッドに寝転がり、天井を見上げていた。
目を閉じるとフリックの足音が聞こえて来た。
ーーカチャ
「お帰り、フリック」
○○はベッドの上で起き上がり、フリックを見た。
「○○……」
フリックは疲れた様にどさりとベッドへと腰かけた。
「どうだった?」
○○は元気の出しきれない声でフリックに聞いた。
「……あぁ、テレーズに会えたが……協力は得られそうにないな。明日グリンヒルを出よう」
フリックはため息交じりに言うと剣を置いて、マントを脱いだ。
「そっか……」
○○は残念そうに顔を伏せた。
「……もう、戻したんだな」
フリックはいつもの○○の髪に触る。
「…………うん」
○○は小さく頷いた。やはり調子は暗い。
「ん?どうした?」
フリックは○○の様子を不思議そうに見る。
「……………………」
○○は今にも泣きそうな顔でフリックの首に抱き付いた。
「ど、どうした?」
フリックは○○の行動に驚きながら声を出す。
「…………シードに……会った……」
○○は小さく呟いた。
「なっ!!何かされたのか?!」
フリックは眉間にシワを寄せ、○○に問い詰める。
「……………………」
「○○?!」
フリックは無言の○○に不安そうに声を掛ける。
「一応、変装でバレなかったなのに……」
○○はフリックに抱き付いたまま、先程まで有った事を話した。
ハイランド兵に絡まれ、助けてもらった事。
足のテーピングを巻いてもらった事。
その時話した事。
自分の事を諦めて無かった事。
そして、変装中の自分にも惹かれた事。
全てを洗いざらい話した。
「……あいつめ……」
フリックは見えないシードを睨んだ。
「もし、明日グリンヒルから出るまでに出会ったら……囮になれるね、私」
○○は困った様に笑った。
「そんな事、俺がさせ」
「でも!やっぱりU主が一番大切よ!リーダーを失なう恐ろしさをフリックは知ってるでしょ?!」
○○は真剣な表情でフリックを見つめた。
「っ!!」
フリックの脳裏にはオデッサの顔がちらつく。
「ずっと考えてたの。これはシードの気持ちを利用した卑怯な作戦だわ」
○○は口からすんなりシードの名前を出した。
「……」
フリックは○○の話を黙って聞く。
「私、フリックと気持ちが通じて嬉しいの」
○○はにっこりと微笑むとフリックに指を絡ませる。
「この気持ちが有れば、大丈夫」
○○はフリックを真剣に見つめた。
「……俺は……」
フリックは眉間にシワを寄せた。
「大丈夫、死ぬ事は無いだろうし。もし何かあっても、フリックがまた忘れさせてくれるでしょ?」
○○は覚悟を決めた顔で笑った。
「納得出来るわけ無いだろう!」
フリックは○○を怒鳴り付ける。
「私だって、納得なんてしてないよ」
○○は困ったように笑った。
「フリック、もしもの時だよ。もしも、そう言う事態になったら、迷わずU主を連れて逃げてね。フリックにしか頼めないもん」
○○は強い意思を持ってフリックを見る。
「……○○」
フリックは耐えきれずに、○○をベッドに押し倒し、唇を奪う。
「抱くぞ」
フリックは静かに言いながら自らのシャツを脱ぎ捨てた。
「うん」
○○は小さく頷いた。
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