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結局ニナから逃げたり、学園を探したりしたが、収穫はなかった。
仕方がないので、フリックと○○は一度部屋に帰ってきた。


「思うように行かないね」

○○はやれやれとベッドに腰を下ろした。

「そうだな」

フリックは少し考える様な仕草をする。

「どうしたの?」

「……いや。○○、少し出て来るが、お前はここにいろ」

フリックはそう言った。

「あ、うん。ちょっと足も疲れちゃったし」

○○は苦笑した。

「フィッチャーの包みでも開けてみな。俺がいない方が良いらしいからな」

「うん、行ってらっしゃい!」

フリックはそう言い残すと部屋を出て行った。








一時間ほどして、結局は何も情報はなくフリックは部屋に帰ってきた。
ドアの鍵を開けて中に入る。

「…………………………………」

「こんばんは」


ーーーバタン!!!


フリックは慌てて部屋のドアを閉めた。

「え?は?え?」

フリックは鍵を確認し、扉と部屋番号を確認、隣の部屋も確認したが、間違いなく自分の部屋だった。

「………………」

何かの見間違いだと思い、フリックはゆっくりと部屋のドアを開ける。

「ほっ」

誰もいない事を確認すると、部屋に入り、ドアを閉めた。

「どうしたの?」

「うわぁぁ!!」

突然ドア影から声をかけられ、フリックは大きな声で叫んだ。

「だ、誰だ!お前は!?」

フリックは慌てて人影から距離を取る。

珍しい銀色の髪を長く揺らし、薄紫色のくりくりとした瞳でフリックを見た。
体の線がハッキリと出るワンピースを着て、化粧は派手過ぎない上品なものをした女が立っていた。

「何をそんなに慌てているの?」

女はフリックに一歩近付き、にっこりと笑った。

「い、いや、だ、だってお前、何者だ?!どこから入って来た!?」

近付いて来る女に慌てながらもフリックは目を離せないでいた。

「え?そのドアから」

女は当然の様に今フリックが入ってきたドアを指す。

「いや、そうだろうが、じゃなくて!」

フリックはしどろもどろと声を出した。

「私、さっきの騒ぎで貴方に興味が沸いたの」

女はくすりと笑った。

「はっ?っ!」

フリックの背中が壁に当たる。

「とてもカッコ良かったわ」

女の伏し目がちな目がとても綺麗たった。

「っ!お、おい、やめ」

女は人差し指でツーっとフリックの胸を撫でる。

「ふふ」

女は楽しそうに笑った。

「いや、待て、俺は!」

フリックがわたわたと慌てるが、女は気にした様子なくフリックに顔を近付けた。

唇と唇が付きそうな距離。

「………………お、お前、まさか○○……か?」

フリックがようやく答えにたどり着いた。

「ピンポーン!正解!!」

○○は嬉しそうににっこりと笑った。

「び、びっくりした」

フリックはどぎまぎしながら、息を吐いた。

「もー、フリックったら全然気付かないんだもん。それに、これは浮気よ?」

○○は銀色の髪を揺らして怒った。

「いや、浮気じゃないだろ。しかし、凄いなこれ」

フリックは不思議そうに銀色の髪を引っ張る。

「痛いよ、フリック……」

「え?地毛?」

フリックは髪を見る。

「うん、染めたの。フィッチャーさんが持ってきてくれた変装道具!」

○○は嬉しそうに笑った。

「髪の毛の染料とほら、目も!」

○○は紫色の瞳をフリックに見せる。

「すげーな」

フリックはまじまじと○○を見る。

「包みに入ってたのは髪と目と、後これに合った化粧品が少し。あ、後」

○○は嬉しそうにフリックをしゃがませると、顔の近くに自分の首を持っていく。

「どう?」

「…………甘い匂いがする……」

フリックは突然の出来事に戸惑うが、鼻に入る甘い匂いにたどり着く。

「そう!香水も入ってたの」

○○はにこにこと笑った。

「……香水はいらないんじゃないか?」

フリックが不思議そうにする。

「えっとね、メモによると、匂いって、記憶を呼び覚ますらしいの。だから、体臭も変えると変装にはバッチリなんだって!」

○○がメモをフリックに見せた。

「へー、そんなもんか」

フリックはメモに目を通した。

「で?その服は?」

フリックは気になっていた服を指さす。

「あ、これは私の」

「見た事ないな」

フリックはツツーっと、ワンピース越しに○○の腰を触る。

「っ!ちょっ、ちょっと!」

○○はくすぐったいやら、恥ずかしいやらで顔を赤くする。

「珍しいな、こう言う服」

フリックは○○の反応に気を良くして背中まで手で撫でる。

「ひ、ヒルダさんに、ん、貰った……の」

○○はフリックの手に翻弄されながらも答える。

「へー、なるほど、な」

フリックがニヤリと笑うと喉を鳴らす。

「ちょ、ちょっとフリックさん?そろそろ止めて下さいませんか?」

○○は困った様な顔をした。

「止めて良いのか?」

フリックは自分と○○の場所をくるりと入れ替え、壁に○○を押し付ける。

「……任務中……」

○○は顔を赤くして、フリックを下から見上げる。

「……」

「そ、それにこの格好じゃ、やっぱりフリック、浮気……」

「なんでたよ。○○は○○だろう?」

ニヤリとフリックは唇を近付けた。
が、○○は顔を背ける。

「……」

「んんっ!!」

フリックは○○の耳を舐める。

「ちょ、ふり、く」

○○は焦った様に暴れる。

「ったく」

フリックが仕方なく離れた。

「ほっ」

それにホッとした○○は窓から外を見る。

「あれ?」

○○は不思議そうな声を出した。

「どうした?」

フリックは○○を振り返る。

「あれ、シンさん?」

「どこだ?!」

「あそこ」

○○の言葉にフリックが素早く反応する。

「居やがったぜ!」

フリックは嬉々として窓の外を見た。

「あっちは学園の方かしら?」

○○が窓を注意して見ていると、突然フリックが○○の首筋に噛みつく。

「っ!!」

驚いた○○が逃げようとするが、フリックはそれを許さずに、後ろの首筋に痕を残す。

「これでよし!」

フリックは満足そうに頷いた。

「ふ、フリック!」

○○は見えない首の後ろを押さえる。

「じゃ、行ってくる」

フリックが素早くドアに行く。

「わ、私も!」

「○○の足じゃ無理だ」

フリックはやんわりと○○を邪魔にした。

「そっか。なら、私は街の方に情報収集に行ってみるわ!」

○○がフリックに言う。

「……無理はするなよ!」

フリックはそれだけ言うと、部屋を出て行った。






***






今回の変装のモデルは幻水Vのクリス・ライトフェロー様です♪


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