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また、夜があけた。

○○の足は何とか腫れは収まりつつあった。

「足出せ」

フリックの言葉に素直に足を出す○○。

「ちょっと歩きにくいが、固めておいた方が楽だからな」

フリックは手早く包帯を巻いていく。

「よし、どうだ?」

「うん!痛くない!ありがとう」

○○は足踏みをした。

「本当は、部屋にいた方が良いんだぞ?」

フリックは心配そうに○○を見る。

「ありがとう、でも少しでも役に立ちたいもの」

○○はフリックを見つめる。

「…………今日は俺から離れるなよ」

フリックはため息交じりに微笑んだ。

「うん、そうする」

○○はにこりと笑った。







ニナの襲撃にも会わず、2人はU主達に合流した。


「ん??どうした?」

落ち込み気味のナナミを見たフリックが不思議そうに聞いた。

「あ、あの……ニナさんが……」

ナナミは言いにくそうに口を開いた。

どうやら昨日の夜にニナからフリックが好きなのはナナミだ。と勘違いがあったようだ。

「……………… まいったなぁ…… どうしてそういう事になるんだ? 安心しな、ナナミ。 子供に興味はないよ」

フリックはため息交じりに笑った。

「良かったぁ…… ん?子供??」

ナナミは不思議そうに首をかしげた。

「ぷぷ、フリックさんたら、モテモテ」

○○は楽しそうに笑った。

「お前な……。さて、街のほうへ行ってみようぜ。 昨日知らせがあって、 フィッチャーと待ち合わせることになっているんだ」

フリックは街の方を親指で指した。




街の広場までやって来た所で、何やら人の塊を見た。

「…………… 」

ピリカがそれを不安そうに見ている。
どうやら取り囲まれているのはフィッチャーのようだ。

「おまえが、密告した野郎だな!!!! 」

「こそこそかぎまわって、うさんくさかったんだよ!!!!」

グリンヒル市民が口々にフィッチャーを罵る。

「そ、そんなぁ……そんなことありませんよぉ……」

フィッチャーは情けない声を出した。

「やっぱりそうだ。 こいつミューズなまりがありやがる。やっぱり、ミューズのやつらの仲間だ!!」

グリンヒル市民の怒りは収まらない。

「やめてくださいよぉーーーわたしは、関係ありませんよぉーーーー 」

フィッチャーは大声で叫ぶ。

「わ、わ、わ、どうしよう」

ナナミがわたわたと慌てる。

「早く助けてあげないと!」

○○も不安そうに見る。

「U主、○○。 お前達はここで待ってろ。俺に任せておけ」

フリックはそう言うと人の塊に入って行く。

「おいおい、なんだい?こいつが、なんかしたのかい?」

フリックは軽口を叩くように声を出した。

「なんだ、おまえは見ない顔だな。よそ者はあっちに行ってな」

グリンヒル市民は突然現れたフリックをしっしとやる。

「確かに、俺はよそ者で事情はわからないがグリンヒルとミューズは一緒に戦った仲じゃないのか?」

フリックは不思議そうに聞いた。

「ちっ、何も知らんくせに。ミューズのやつらがいなければ、 こんな事にはならなかったんだ。その上、やつらは俺たちを裏切って、密告までしてやがる!!!こいつも、そんなやつらの一人さ」

グリンヒル市民は吐き捨てる様に言った。

「あ、フ…いえ、旅の人、なんとか助けてくださいよぉ…… 」

フィッチャーはフリックに気付くと助けを求めた。

「ふーーーん、密告か…… 仲間をうらぎって密告なんて、人の風上にもおけないな」

フリックは真剣な顔で頷いた。

「そうだろう。お前さんは、わかってるじゃねぇか」

グリンヒル市民はフリックの言葉にうんうんと頷いた。

「そ、そんなぁ……なんで、私ばかり…… 」

フィッチャーは天をあおいだ。

「それだけの罪を犯しているんだ。リンチなんて生ぬるいことをしていないで、スッパリ首でも落としたらどうだ?おれの剣を貸すぞ」

フリックは愛剣【オデッサ】を腰から鞘ごと取り外し、差し出す。

「え?……そ、それは………」

先程まで威勢の良かった男は戸惑った。

「ほら、遠慮するな。憎いんだろ?違うのか?」

フリックは退く男に剣を掲げる。

「だ、だけど…… 」

男は冷や汗を流した。

「お前はどうだ?」

フリックは別の男に剣を差し出す。

「お、俺は……もう気がすんだから…… 」

別の男も戸惑って一歩下がる。

「ちっ、だらしのないやつらだ。じゃあ、俺が……… 」

フリックは剣を鞘から引き抜くと、高々と掲げる。

「ヒ、ヒィィィーーー」

グリンヒル市民たちは逃げ出した。

「ふん、うまいことやったね」

ルックが口を開いた。

「フリックさん。 かっこ良かったよ」

テンガアールが嬉しそうに笑った。

「おい、フィッチャー。いつまでそうしてるんだ」

フリックは剣を鞘にしまいながら言う。

「ひぃぃ………お、おたすけ……
ん??? あれ? わたし?生きてます?」

フィッチャーはあたりをキョロキョロと見回した。









「なるほどね。 テレーズの行方は手がかりなしか」

フリックはやれやれと首をふる。

「どこか、この近くに身をかくしているのはたしかだろうと思うんですけどね」

フィッチャーもやれやれと肩をすくめる。

「しかたない、学院にもどってもう少し情報を集めることにしようぜ。U主。フィッチャー、おまえも気をつけて情報を集めろよ」

フリックがフィッチャーに忠告する。

「いや、もうあんな目には会いたくありませんからね」

フィッチャーが嫌々と首を横に振った。

「あ、そうだ。それからもう一つ。 このグリンヒルをおとした王国軍の将軍が 2,3日中にもどってくるらしいです。 なにやら、キレ者らしいですから、 U主さんたちも気をつけてくださいね」

フィッチャーはそう言いうと○○に振り返る。

「そうだ、忘れるところでした。○○さん、これを」

フィッチャーは包みを差し出す。

「ん?私に?」

○○は不思議そうに受けとる。

「ええ、なるべく一人の時に開けてくださいね」

フィッチャーはそう言うと、足早に去っていった。


「ふぅ、手がかりなしかぁ……」

ナナミは疲れた様に息を吐いた。

「まぁ、仕方がないよ。また、私達も頑張って探そう!」

○○は包みを持ち直し、にこりと笑った。

「っと、俺達は先に行くぜ」

フリックは○○の腕を掴むと、足早に去っていった。

後ろからはニナの声がした。

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