54
グリンヒルの町を通り抜けニューリーフ学院までやって来た。
受付は、眼鏡をかけた女性だ。
「あらあら、こんな時期に入学ですか?珍しいわね。えっと……」
女性はフリックを見上げる。
「戦争で足止めくっちまってね」
フリックはそう言いながら書類を渡した。
「……………。確かに、書類は揃ってるみたいですね。ようこそ、ニューリーフ学院へ。 貴方達を歓迎しますわ。私は受付のエミリアです。所で………」
エミリアはフリックを見上げる。
「な、何だい?」
フリックは何か不備があったかと、内心慌てる。
「この子達……貴方の子供?」
エミリアは真面目な顔で聞いた。
「そんな事あるかよ。俺はつきそいだよ、付き添い!」
フリックはまたかと思い、強い口調で言った。
「ぷふふ!」
「……またなの?」
○○が笑うとルックは冷めた目で見る。
「○○、笑ってるが子沢山の産みの親はお前になるんだぞ!」
フリックはイライラと○○を見た。
「そっか、そうなるね!」
○○はなるほど!と笑った。
「あら?貴方達夫婦なの?」
エミリアはフリックと○○を見た。
「どう見ても夫婦だろ!」
フリックは少し慌てた様に言う。
「そうですか、失礼いたしました。では、入学する皆さんは、校舎の生徒寮に入ってもらいます。 最初の2週間は準備期間ですので、付き添いの方は校舎の東の宿舎をお使い下さい。 良いですか、準備期間に問題を起こした学生は、学院から追い出される事もありますからね。良い子にするんですよ」
エミリアはにっこりと笑った。
「わかりました」
U主が答える。
「は――――い」
ナナミも元気に答える。
「「はーい」」
ヒックスは歯切れよく答え、テンガアールは元気に答える。
「解ったよ……」
ルックの脇を○○がつつくと、ルックも仕方なく答えた。
「良いお返事ですね。それじゃあ、中を案内しますね。ついて来て下さい」
エミリアの案内で、校舎を見て回る。
一階は鍛冶屋、紋章師、鑑定屋の教室になっている。
二階が教室になっていた。
見学が終わると、外に出て疲れたピリカを連れ、学生寮に行く事になった。
学園の入り口では少女達が騒いでいた。
「何だぁ?」
フリックは不思議そうに見た。
「あああ――、あの時の”運命の人”!!ああ、夢の様です。こんな所で再会出来るなんて。何故ここに?あ!もしかして私に会いに………」
先程助けた少女がフリックへ一直線にやって来た。
「何だお前は!」
フリックは眉間にしわを寄せる。
「ああ、ごめんなさい。私の名前は二ナです。え、えっと……あの…、あの、あなたのお名前は?」
少女ーーニナはしおらしくそう聞いた。
「ちょ、ちょっと……」
フリックは慌てながら、一歩引く。
「ほらほらあの人よ!!ね、格好良いでしょ、ね!」
ニナは嬉しそうに笑った。
「そ、そうかなぁ…」
ニナの友達の少女は、フリックの戸惑いの表情に辛口評価だ。
「ねぇ、ねぇ、フリックさん早く行こうよぉ」
ナナミが痺れを切らせて言う。
「フリックさんっておっしゃるんですね。素敵なお名前ですね。所で何をなさってるんですか? あ、あれ本当に私に会いに…」
夢見る少女は止まらない。
「あ……あぁ、校内の見学に……」
フリックはたじたじと答える。
「それなら私が案内します!もうどこでも、この学院の中だったら隅々迄知り尽くしてるんだから。ね、行きましょう、フリックさん!!」
フリックはニナに引きずられて行ってしまった。
「何なの一体………」
ナナミは不思議そうに2人を見た。
「う――ん……」
ヒックスは困った様に笑った。
「フリックさんって結構モテるんだね」
テンガアールはにこにこと笑った。
「前にリューベに来た時にちょっとした騒ぎになってたよ」
○○はクスクスと笑った。
「そうなの?!さすが、我が戦士の村出身!」
テンガアールは誇らしげに笑った。
「あ、れ?同郷なの?」
○○はテンガアールを見た。
「そう!僕とヒックスとフリックさんは同じ戦士の村出身だよ」
テンガアールはにこにこと笑った。
「へー、あ、じゃあ、もしかしてヒックスくんの剣も……」
○○がヒックスを見る。
「え、ええ。【テンガアール】と言います」
ヒックスは照れた様に笑った。
「おや、良いねぇ」
○○はニヤリと笑った。
「おばさん臭いからその笑い止めなよ」
ルックが冷たく言う。
「ルックくんたら、冷たいわね」
○○はクスクスと笑った。
「でも、良いの?○○さん?一応目の前で旦那さん他の女の子について行っちゃったよ」
テンガアールがどうしたものかと、フリック達が消えた方を見た。
「まぁ、子供じゃないし大丈夫でしょ?」
○○は苦笑しながら言った。
「子供じゃないから、困るんじゃない?」
ルックが興味なさそうに聞く。
「……まさかのフリックでも、あんな子供には手を出さないでしょ……」
○○はルックの言葉に不安そうにした。
「……」
ヒックスは少し顔を赤くして困った顔をする。
「ねぇ!行こうよ!ピリカちゃん疲れたって!」
ナナミが振り返る。
「そうね。まぁ、引率は私でも平気でしょ。行こうか!」
○○は子供達を引き連れて学生寮へ向かった。
「ん!じゃあ、私は生徒じゃないから、ここでお別れね」
○○はにこりと笑った。
「うん!○○さんお休みなさい!」
ナナミとピリカは手を振る。
「うん!明日ね、お休みなさい」
○○も手を振ると、保護者用の建物へ向かった。
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