52
「もう、何人増えても良いですよ」
フィッチャーはやれやれと喜ぶU主とナナミ、そしてピリカを見た。
「学園への侵入は学生に成り済ませる者にしてください」
シュウがそうU主に言う。
「あ、ねえ、シュウ。もう一人連れて行きたい人がいるんだけど……」
U主はにっこりと笑った。
「○○さーん!!」
○○が酒場で仕込みをしているとU主が入って来た。
「あ、U主くん!どうしたの?」
○○は同盟軍リーダーのU主を見た。
「これから一緒に来てくれる?」
U主がにっこりと笑った。
「これから?まだ、仕込みが……」
「リーダー命令!」
○○が困った顔をすると、U主はピシャリと言った。
「え?こんな所で?」
○○は驚いた様に笑った。
「後は任せて行っておいで」
レオナはニヤリと笑った。
「え?でもレオナ……」
「ありがとうレオナさん!」
U主は○○の腕を掴むと、走って酒場を後にした。
「ちょ、ちょっとU主くん!ここって会議とかする大広間じゃ!」
バンと勢いよく扉を開けると、中にはシュウ、アップル、フッチャー、ナナミ、ピリカ、ビクトールそしてフリックがいた。
「お待たせ!」
U主は上機嫌でシュウの前に○○を、連れて来た。
「……一緒に連れて行きたいとはその女性ですか?」
シュウの眉間にしわが寄る。
「うん!」
U主は上機嫌で頷いた。
対する何も聞かされずに連れて来られた○○は困った顔をする。
「確か、ここに初めて来た時にいた顔だな」
シュウは仕方なく○○に顔を向けた。
「あ、はい。酒場でコックをしてます、○○です」
○○はとりあえずシュウに自己紹介をする。
「……グリンヒルがハイランドの手によって落ちた。そこで、U主さま達にはグリンヒルへ潜入してテレーズ殿を助け出しに行ってもらう。そう言ったら、君を連れて行きたいと行って来た」
シュウはそう説明した。
「……あぁ」
○○は納得した。そう言えば前にグリンヒルへ行こうとU主と約束をしたのだ。
「僕、約束を守る男です!」
キリリとU主は言った。
「ねぇねぇ、シュウさん!○○さん凄いんだよ!U主の事目をつぶっても、暗闇でも居場所が分かるんだよ!」
ナナミは嬉しそうにシュウに報告する。
「?どう言う事だ?」
シュウはナナミの話に興味を引かれる。
「あのね、○○さん目を閉じると、真の紋章が見れるんだって!」
ナナミはね?と○○に顔を向けた。
「……本当か?」
シュウは○○を見た。
「は、はい」
○○は戸惑いながらも頷いた。
「ふむ、それは便利だな」
シュウは考えるように手で顎を撫でる。
「俺は反対だぜ!なんで危険な場所に○○を連れて行く意味がある!」
それまで事の成り行きを見ていたフリックが不機嫌に口を開く。
「私は賛成だわ!○○さんはあの、シードやクルガンからも逃れているんだから!」
アップルはシュウに声高く言った。
「「アップル」ちゃん!」
フリックと○○は同時にアップルを咎める声を出した。
「あの、猛将と知将をか……?」
シュウはますます興味を持つ。
「なら、問題ないじゃん!」
ナナミは嬉しそうに○○の袖を引いた。
「……」
○○は困った顔をする。
「……まぁ、では、この件は私が預かります。U主さまとナナミ殿はピリカを連れ、他のメンバーと打合せをしていてください。アップル頼んだぞ」
「はーい!」
「はい」
シュウの言葉にU主達が大広間を出て行く。
「では、私も先にグリンヒルへ向かいます」
「頼む」
フィッチャーはやれやれと外に出た。
「ほんじゃ、俺も先に行くぜ」
ビクトールも大広間から出て行った。
大広間には、○○とシュウ、そしてフリックが残される。
「まぁ、お前達の反応を見て大体は分かったが……」
シュウは○○を見た。
「お前に興味を持ったのはシードか?クルガンか?」
シュウはズバリと聞く。
「………………猛将」
○○はため息交じりに言った。
「シードか。クルガンの方は?」
「…………わ、私が猛将の弱味になり得るからと、殺されかけました」
○○は言い逃れは出来ないと素直にシュウに言う。
「なるほどな。皮肉だな、惚れた女が敵軍とは」
シュウは○○を見た。
「……」
○○はシュウの視線に耐えきれずに視線を外す。
「正直、軍師としてはお前を使わない手はない」
シュウは静かに口を開く。
「これから我らがリーダーに行っていただく場所は敵地のど真ん中だ。U主さまに有利になる事は出来るだけしたい」
「シュウ!」
シュウの言葉にフリックは怒鳴る。
「お前はグリンヒルでシードとクルガンに会った時、逃げ切る自信はあるか?」
フリックを無視する形でシュウは○○をまっすぐに見た。
「……逃げ切る自信はないわ」
○○は静かに口を開く。
「でも、まだ向こうが私に興味を持ってたら、U主達を逃がす事は出来ると思う」
「○○!!」
○○の言葉にフリックが○○に掴みかかる。
「お前、何を言ってるのか分かってるのか?!」
フリックは怒りをあらわに○○を睨み付ける。
「わ、分かってる。でも、今必要なのは、私よりもU主だから!」
○○はフリックの怒気を間近に恐怖を感じたが、気丈にそう言った。
「っ!お前っ!」
フリックはイライラと○○を睨んだ。
「…………まぁ、シードとクルガンがグリンヒルにいるとも限らん。危険だと思えばお前が助ければ良いだろう、フリック」
シュウはフリックを○○から引き離す。
「……」
フリックは納得しないまま、ため息をついた。
「わかった。ただし、お前は俺から離れるな」
フリックはそう○○に言った。
「うん、わかった」
○○は柔らかく笑った。
「ならば、お前達は年が近いしな、夫婦と言う事で潜入してくれ」
シュウはそう言うと、新しい書類を持ち、大広間から出て行った。
「……お前は危機感がないのか……」
フリックは大きくため息をついた。
「ううん。フリックと一緒だから、平気だよ」
○○はにっこりと笑った。
「もしかしたら、ここに帰って来る事もないかもしれないね。ちゃんと支度しなきゃ」
○○はにっこりと笑った。
「させるかよ」
フリックは小さく呟いた。
「ん?何か言った?」
○○は不思議そうにフリックを振り返る。
「ちゃんと俺が守ってやるって言ったんだよ!」
フリックはぶっきらぼうに言った。
「っ!うん!」
○○は心底嬉しそうに笑った。
[ 52/121 ][*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]