48

深夜、○○は目を覚ました。

目が見えなくなった時に、ビクトールとフリックの足音が聞き分けられる様になっていた。

何やら重い物を運ぶ足音が部屋へと近付いて来た。

仕方なく目を開け、体をベッドから起こす。

ビクトール達の部屋に出て、そこから、廊下へと繋がる扉を開けた。

「お帰り、フリック……ビクトール?」

○○が扉を開けるとビクトールの腕を肩に担いだフリックだった。
ビクトールは酔っ払って、すっかり夢の中の様だ。

「○○、助かったぜ」

フリックが重そうにビクトールを引きずりながらそう言った。

「待って、今支える」

○○はフリックとは逆側を支えると、2人でビクトールをベッドまで運んだ。

「くっそ、重たかったぜ」

フリックはビクトールをベッドへ転がすと、その場へ座り込んだ。

○○は部屋の鍵を閉めると、水差しから水をコップにくみ、フリックへ差し出した。

「はい」

「あ、悪いな」

フリックがコップを受け取ると、一気に喉へと流し込んだ。

ビクトール、フリック共に酒の臭いをぷんぷんとさせている。
そうとう飲んでいる様だ。

「……飲み過ぎ」

○○は呆れながらそう呟いた。

「あぁ、こりゃ、明日は完璧に二日酔いだぜ」

フリックは苦笑した。

「途中まで普通に飲んでたんだが、ビクトールとリィナが呑み比べ始めやがって……」

フリックはビクトールを指差す。

「リキマルは飯食ったら帰っちまうし、リィナとアニタで……」

フリックは頭を押さえながら喋る。

「ふーん。良かったじゃない、美人に囲まれて呑めて」

○○はまた、イライラが甦った。

「あぁ?」

「鼻の下伸びすぎ」

○○が呆れながら言った。

「なんだ、そりゃ」

フリックは不機嫌に○○を睨み上げた。

「伸びてたわよ」

○○は指で鼻の下を触る。

「伸びてねーよ」

フリックはムッと反論する。

「別に良いじゃない、フリックだって男なんだし?」

○○は言いながら自分の部屋へと向かう。

「おい!○○」

フリックは起き上がり、○○の後を追った。

「何よ!フリックが誰に鼻の下伸ばしても関係ないものね!」

○○は言いながらドアを閉める。

が、

「待て」

低い声のフリックにそれは阻まれた。

「なっ!」

○○は慌てたが、その手を掴みフリックは○○を○○の小さな部屋へと押し入れ、自分も入った。

「で?誰が鼻の下を伸ばしたって?」

フリックは低い声で○○をドアに押さえつけた。
ゆっくりとドアに鍵をかけるフリック。

「っ!な、何するのよ」

○○がいつもと違うフリックに戸惑いながらも、気丈に見上げた。

「解るだろ」

フリックはそう言うと○○の唇を奪う。

「っ!んん!」

驚いていた○○の口は軽く開いていたので、フリックの舌の侵入を易々と許した。

「っ!ふ、り」

○○は両手でバシバシとフリックの胸を叩く。
口付けは酒の臭いも手伝いクラクラとした。

「っとに、少しは大人しくしろ」

フリックは暴れる○○に呆れながら自分のトレードマークでもある青いバンタナを外す。

「よっと」

フリックはそれで器用に○○の両手を縛りあげた。

「や、やだよフリック。外してよ、これ!」

○○の顔は不安そうに歪む。

「外したら暴れるだろう」

フリックはニヤリと笑うと口付けを再開した。

「っ、ん、は」

次第に○○は大人しくキスを受け始める。
それに気を良くしたフリックは手を○○の胸に当てる。

「っん!」

刺激を受け、○○の体はビクリとはねる。

「……○○」

フリックは○○の異変に気付いて唇を離す。

○○は静かに泣いていた。

「お、おい○○、泣くなよ」

フリックは慌てて○○の様子を見る。

「だ、だって、なんで、こんな……」

○○は縛られた手で自分の顔を隠した。

フリックは○○を横抱きにして、ベッドへ座った。

「フリックは……なんで、こんな事……するの」

○○は涙を見られない様にしながら聞いた。

「そりゃ、お前の事が好きだからだろう」

フリックはきっぱりと言い切った。

「え?」

○○はキョトンとフリックを見上げる。

「こうしてキスしたり抱きたいと思う女はこの世でお前しかいないぜ。だから、前だって」

フリックはそう言いながら○○の体を抱き締めた。

「……本当?」

○○は涙が止まり、フリックを見上げる。

「じゃなきゃ、抱かないだろ。いくら仲間でも」

フリックはそう静かに言った。

「……わ、私も」

「ん?」

フリックは○○の顔が見える様に抱いた腕を緩める。

「私もフリックが……好き」

○○はじっとフリックの青い瞳を見つめた。

「あぁ」

フリックは嬉しそうに微笑んだ。
そして、優しく口付ける。

「ん……」

○○もフリックの口付けを、素直に受け入れた。
今度は嬉しさからか、また涙が出た。

「よっと」

フリックは軽々○○を抱き上げると、ベッドに押し倒した。

「○○、好きだぜ」

フリックはそう言うと再び口付けと愛撫を再開させる。

「っ!」

フリックの手がワンピースのスカートから侵入し、背中に回る。
素肌を撫でられるたびに、○○はピクリと反応する。



そして




「すーすーすー」

フリックから寝息が聞こえて来た。

「え?フリック?」

○○は不思議そうに声をかけるが、フリックは気持ち良さそうに寝ている。

「ち、ちょっとウソでしょ?」

○○は呆れながらフリックの寝顔を見る。

「……せめて、降りるかこのバンタナ取るかしてよ」

フリックはしっかり○○の上に乗っかったまま抱き締めて寝てしまった。
もちろん、バンタナで拘束された腕もそのままだ。

「……まぁ、良いか」

○○は嬉しそうに笑いながら、フリックの首に腕をかけて、抱き付いて寝る事にした。




「おやすみ、フリック」

○○はバンダナのない額に唇を寄せた。

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