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「早くないか?」

ビクトールが○○の手を引きながら聞く。

「うん!大丈夫。ビクトールが持って来てくれたこの木がちょうど良い杖になって!便利」

○○はニコニコと笑う。

ビクトールは約束通り○○を連れて古城を案内している。

○○はビクトールの手と星辰剣、そしてビクトールに貰った杖を頼りに古城を歩く。

「とりあえずレオナの酒場が良いだろう」

ビクトールは手を引きながら言う。

「うん!しかし、階段の多いお城だね」

○○は階段に四苦八苦しながら歩く。

「敵に侵入されにくくする為だ。だから、城主の部屋は上にある」

ビクトールは説明しながら○○の様子を見る。

「ふーん」

「あ、待てっ!」

「っ!!」

○○は階段にある小石にもちろん気付かずに踏む。

「っぶねー……」

ビクトールが○○を抱き止め、手すりに掴まり、何とか階段を転げ落ちるのは免れた。

「あ、ありがとう。目が見えないのってやっぱり不便ね」

○○はビクトールにしがみ付いたまま笑った。

「はは、だな」

ビクトールはよっこらせと○○を荷物の様に担ぎ上げる。

「うっ!!」

○○は驚いてビクトールにしがみ付いた。

「ほれ、階段終了」

ビクトールはぽすんと○○を下ろした。

「ビックリした!ねぇ、何かするなら、する前に言って……」

○○はドキドキとする胸を押さえる。

「あー……気が向いたらな」

ビクトールは面倒臭そうに言った。

「ちょっと……」

○○は不安そうにビクトールの方を見た。






「レオナいる?」

ビクトールにドアを開けて貰いながら○○は中に声をかけた。

「おや、ちょうど良い所に来たね」

レオナは呆れながら○○に言った。

「ん?どうかしたの?」

○○は不思議そうにレオナに近付いた。

「あ、ご飯作ってるの?」

鼻に入る匂いに○○は嬉しそうに言った。

「何だけどね……」

レオナはフーッとキセルをふかした。

「助けてくれ!」

傭兵が○○に助けを求めた。

「え?」

どうや、傭兵達が作った料理の味が悪いらしい。

「味見させて?」

○○が言うと傭兵の一人がスプーンでそれを掬い、○○に食べさせるが

「熱っ!」

「わ、悪い。大丈夫か?」

○○は涙目になりながら大丈夫と頷いた。

「よ、よし、冷ますぞ」

傭兵がふーふーと冷ましてから○○の口にスプーンを持っていく。

○○は不安そうに舌で温度を確認してから口を開ける。

「……」

「……」

「……」

「……」

傭兵達(ビクトール含め)は○○の様子をジーっと見る。

「うん?味が濃いのね。とりあえず、お水を追加して」

○○は舌の上で料理を転がしながら味を見る。

「……」

「……」

「……」

「……」

「ん?みんなどうしたの?」

動く気配のない傭兵達に不思議そうに聞いた。

「っ!いや!み、水だな?」

「どれくらいだ?」

「とりあえず茶碗一杯分くらいか?」

慌てて傭兵達は口を開いた。

「あ、うん。そしたら、また味見させて?」

「っ!!」

「ま、待てっ!」

「お前やれよ!」

「お前がやれよ!」

突然言い争いを始めた傭兵達に○○は訳が分からずに首を捻る。

「……お前の行動がエロいんだと」

ビクトールがニヤニヤと言った。

「はぁ?ただの味見でしょ?」

○○は呆れた声を出した。

「た、隊長!」

「何でそんな正直に!」

「……」

傭兵達に呆れる○○。

「お、ここにいたか」

酒場の厨房に入って来たのはフリックだ。

「あ、フリック!お帰りなさい」

○○はフリックの声に反応した。

「ただいま。お前達何してんだ?」

「隊長!」

「助けてくれ!」

傭兵達は今度はフリックにすがり付く。

「は?」

フリックは訳が分からずに声を出す。

「いやな、○○がエロいと言う話を……」

「あぁ?」

ビクトールの言葉にフリックは声低く唸る。

「「「ひぃ」」」

傭兵達はフリックの怒りの顔に怯える。

「酷いよね、みんないじめるんだよ」

○○は困った顔をする。

「ほぅ?」

フリックは○○の言葉に傭兵達を睨み付ける。

「いや!」

「なんか、すみません!!」

「ホント、すみません!!」

傭兵達はフリックに全力で謝る。

「……で?結局何なんだ?」

フリックは呆れた様に○○を見た。

「ご飯の味見してたの」

○○が言う。

「そ、そう言えばそろそろ良いんじゃないか?」

先程の水を入れてから、また鍋は沸騰した。

「隊長!○○に味見させてやってください!」

傭兵の一人がフリックにスプーンを差し出す。

「何で俺が……」

「「「俺達には無理です!!」」」

フリックの言葉に間髪入れずに即答する。

「……ほれ」

フリックはスプーンを○○の口近くに持っていく。

「……熱くない?」

○○は不安そうに声を出す。

「あぁ、そうか」

フリックはふーふーと少し冷ます。

「これで良いな」

フリックは○○の口元にスプーンを差し出す。○○はやはり舌で温度を確認してから口を開ける。

「どうだ?」

フリックはスプーンを引き抜いてから聞く。

「うん!これで良いんじゃないかな?美味しいよ!」

○○はにこりと笑った。

「垂れてる」

「え?どこ?」

「こっち向け、ここ」

「ありがとう!」

フリックに向かいにこりと笑いかけた。

「……何で平気なんだ?」

「隊長おかしい……」

傭兵達は口々に言う。

「それは、やっぱり色男だからじゃないか?」

ビクトールはけらけらと笑いながら言った。

「な、なるほど!あれくらいのアピールは普通なんですね!!」

「「「羨ましい!!」」」

傭兵は口を揃えた。

「一体なんなの?」

○○は目が見えないので余計不思議そうにする。

「ほっとけ。ただの馬鹿達だ」

フリックはやれやれとため息をついた。

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