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一行はノースウィンドゥの城の大広間へとたどり着いた。


「く、くわしく話を聞かせてください 」

フリードはフリックを急かす。

「ああ……おまえらがサウスウィンドゥを出た後にソロン・ジーを大将とするハイランドの 一軍が サウスウィンドウを急襲した」

フリックはフリードを見ながら言葉を出した。

「勝ち目がないと判断したんだろうな。グランマイヤー市長は戦いを さけて全面降伏した」

フリックは一度呼吸を整える様に一息つく。

「次の朝には、城門に市長の首がつるされたよ……」

フリックは静かに真実を告げた。

「っ!」

「……」

誰ともなく、息を呑む音がした。

「俺のほうは女と子供連れなんで、正体がバレずに逃げ出せたんだが……」

フリックは少し表情を歪める。

「ふふふ……逃げ出せたのは誰の おかげ?」

リィナが妖艶な笑みでフリックに詰め寄る。

「わーーー!言うなーーーーー!!」

フリックは普段の彼らしく無い慌てきった声を出し、リィナを制止する。
そして、チラリと○○を見る。

「????」

ナナミが不思議そうに焦るフリックと楽しそうなリィナを眺める。

「ま、まあ、何とか逃げ出して、おまえらの後を追ったんだ。その途中でアップル、ツァイ、レオナとも出会えた」

フリックは誤魔化す様に早口で捲し立てた。

「我がサウスウィンドゥが……」

フリードは辛そうに項垂れた。

「お、おい○○!」

静かにドアに向かう○○にフリックは慌てて声をかける。

「何?」

○○はにっこりと笑った。

「いや、その、どうした?」

フリックは嫌な汗をかきながら声を出す。

「どうもしないわよ。ここで戦うにしろ、逃げるにしろ、籠城するにしろ、私は大切な事を思い出しただけよ」

○○はフリックに営業スマイルのまま、冷たく言い放った。

「た、大切な事?」

フリックは○○の様子に焦りながら聞き返す。

「そう。私には戦いでは役に立てないから……。じゃあね」

○○はパタンと、大広間から出て行った。

「あら、フラれちゃいましたね」

リィナがクスクスと楽しそうに笑った。

「姉さん……」

アイリははぁとため息をついた。




「ここね!」

○○は城の裏側に回っていた。
昔は畑だったのか、荒れてはいたが野菜が自生していた。

「わぁっ!結構ある!よーし!」

○○は嬉しそうに野菜を抜く。

「人参、あはは!形悪い」

まるで顔のような人参に○○は笑う。

「これは……ジャガイモかしら?」

○○は手を使って掘り起こす。

「あ、小さい。でも、十分……かな?」

○○はそれから見付けたかごいっぱいに野菜や豆を入れる。

「これかしら……」

○○は綺麗な石をそっと舐める。

「っ!しょっぱい。岩塩発見!」

○○は岩塩を手に城へと戻る。

「おっ!○○ちゃん!生きてたのか?!」

「おー!良かった!!」

城の所で声をかけられ振り返ると傭兵の砦の傭兵が数人やって来た。

「あー!みんな!生きてたんだ!良かった!!」

○○は嬉しさと懐かしさから声を高くした。

「当たり前だろう!」

「俺達は誰に鍛えられたと思ってるんだ!」

傭兵達は口々にそう言った。

「何かするの?」

「うん!みんな疲れているから、炊き出しでもしようと思って」

○○は収穫した野菜や岩塩を見せた。

「うおーー!!また○○ちゃんの飯が食える!!」

「俺も腹減った!!」

傭兵達は喜んだ。

「よし!俺らも手伝うぜ!」

「本当に?!助かるわ」

○○は嬉しそうに笑った。

「よし、何が必要だ?」

「えっと、実はまだ何もないの。包丁は持ってるけど。鍋は持ってるのだと小さいし、あ、火も!水も!」

○○は困った様に笑った。

「よし、なら俺は鍋とか探してみるぜ」

「じゃー俺は水でも探すわ。雨水溜まってるかもしれないしな」

「そっか、じゃあ俺は釜戸でも作ってやる!」

「よーし!俺は魚でも捕まえる!!」

傭兵達は次々に役割を決めて動く。

「みんな凄い!」

○○は嬉しそうに笑った。

「お前のお陰だよ」

傭兵の一人が笑った。

「え?」

「みんな負け続きで意気消沈してたんだ。でも、お前が楽しそうにみんなに飯を食わせてやろうって気持ちが俺達を元気付ける!」

傭兵はニヤリと笑った。

「そうだね、良かった。腹が減っては戦は出来ぬ!よね!」

○○がにっこりと笑った。

「だな!よし!やるか!」

「うん!」

○○は野菜を包丁で切り始めた。



「鍋あったぞー!」

「うわっ!大きい!!」

「水もあったぞ!一回沸かそう!」

「よし、なら鍋に入れろ!」

「ほら、釜戸も出来たぜ!」

「火をつけるぞ!!」

傭兵達の手際のよさで、あっと言うまに用意が出来た。

「おーい、○○コック!出来たぞ!!」

「あ、はーい!ありがとう」

○○は野菜や豆を鍋に入れた。

「魚、取れたぞ!!」

傭兵が帰って来た。上半身裸で、濡れていた。

「ねぇ!まさか潜ったの?!」

○○は驚いて傭兵を見上げた。

「おう!貝とかもあったぞ!」

傭兵は笑ってバケツを見せた。

「凄い!ありがとう!!これで良い出汁が取れるわ」

○○は嬉しそうに貝も鍋へ入れた。

「ちょっと煮込むわね」

○○は鍋と一緒に見付けて貰った大きなお玉でかき混ぜる。




「おぉ!良い匂いがして来た!」

傭兵が鼻をひくひくとさせた。

いつの間にか、サウスウィンドゥから逃れた者達もやって来ていた。

「もうすぐ出来ますよー。っ!」

○○は目に違和感を感じて擦る。

「どうかしたか?」

「ううん、大丈夫。さぁ!出来たわ」

○○が皿に出来たスープをよそり始める。

「いっぱいありますよー!」

○○はニコニコと笑う。

「○○さん!」

U主とアップル、ナナミが近付いて来た。

「みんな!これからの方針決まった?」

○○は手を休めずに聞く。

「はい。と言うか、それを決めてくれる人の所へ」

アップルはにこりと笑った。

「?」

「軍師か?」

○○が不思議そうにすると、傭兵が代わりに聞く。

「そうです」

「へぇ!楽しみだね!あ、じゃあ腹ごしにいかが?」

○○はにこりと皿を出す。

「頂きます!」

「ありがとう」

「わーい!」

3人は素直に受け取ると、スープを食べ始めた。

「ご馳走さま!」

「はい、お粗末様」

「じゃあ、行って来ます!」

「行ってらっしゃい!」

U主達は希望を胸にラダトへと旅立った。

「あ!フリック隊長!」

傭兵がフリックの姿を見ると手を上げて呼ぶ。

「これ、宜しくね」

○○はイライラとする気持ちを出さない様に傭兵にお玉を渡した。

「え?おい!」

傭兵は慌ててお玉を受け取った。

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