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ビクトール達はネクロードが奏でるパイプオルガンの部屋へとたどり着いた。
○○はネクロードのすぐ近くで座らせられている。
「ふふ、よくここまで上がってこれた物だ。では、褒美をやろう」
ネクロードがそう言うと、ビクトールの前にぼこぼこと一人のゾンビが沸き出した。
「ビクトール……助けてビクトール」
女性の姿に変わったそれは、ビクトールに助けを求める。
「……デイジー……」
ビクトールは眉をひそめ、その女性ーーデイジーに近付いた。
彼女こそが、ノースウィンドゥで、ビクトールと結婚をするはずだった女性だ。
「そう!ビクトール!助けて!ここは暗くて寒いわ」
デイジーはビクトールに近付く。
「な、なんて事を……!!」
○○はネクロードを睨み付けた。
「ふふふ、実に愉快だろう」
ネクロードはにたりと笑った。
「ビクトールさん!!」
U主がビクトールの背中に叫んだ。
「悪いな、余りにも昔過ぎてもう顔も思い出せない」
ビクトールはデイジーの肩に手を置いて、優しく笑った。
そして
ーーーザシュッ
「っ!!!」
デイジーの首をビクトールが一撃で撥ね飛ばした。
首は胴体から離れると、砂のように形を崩す。
「やい!ネクロード!俺様はこんなもんに引っ掛かるほど青臭くはないんだよ!!!」
ビクトールはネクロードに向かって吼えた。
「ビクトール……」
○○は静かに涙を流した。
「ちっ!星辰剣か。分が悪いな」
ネクロードは巨大な化け物を呼び寄せた。
「っく!!!待て!ネクロード!!!」
ビクトールが叫ぶ。
「今回は逃げよう。花嫁もお前に免じ返してやる」
ネクロードはにたりと笑うと○○を化け物の前に放り投げた。
「っ!」
「○○!!!」
ビクトールが叫び、床に落ちる直前に抱きとめた。
「ビクトール!」
「悪い、待たせちまったな」
○○はビクトールにそのまま抱き付く。
「ううん!」
「その格好じゃ戦えないな。下がってな」
「うん」
ビクトールに言われ、戦闘範囲から離れた。
ビクトールの持つ星辰剣と新たにいたカーンと言うバンパイアハンターの活躍で化け物は倒した。
が
「くそっ!逃がした!!くそっ!!!」
彼ら以外いなくなった部屋で、ビクトールはそう叫んだ。
彼らしくない取り乱しかただ。
「ビクトール……」
○○はビクトールに近付き、そっと背中に手を置いた。
「○○……。すまん」
ビクトールはゆっくりと顔を上げた。
「ビクトール殿、私は先に行きます。また奴の情報を掴んだら、お知らせ致します」
「頼むぜ、カーン」
カーンの言葉にビクトールは静かに答えた。
「じゃあ、行くか」
ビクトールが普段の彼らしく笑った。
「あっ!ちょっと待ってて!着替えて来るから」
○○がドレスの裾を持つ。
「あ?もう脱ぐのか?勿体ないが、あの野郎の服なんか嫌か」
「まぁね。ビクトールになら本番の時に見せてあげるわよ」
ビクトールの言葉に○○は笑った。
「それは、俺が隣でって事か?」
ビクトールがニヤリと笑う。
「うーん、まぁ、無くはない……かな?」
○○が考えながら言う。
2人の会話を聞きながらアイリとナナミは「おぉ!」と喜ぶ。
「なら、俺と結婚するか?今」
ビクトールは笑いながら言った。
「……冗談に聞こえなくなったら考えてあげる」
「俺はいつでも本気だぜ」
「……なら、無理かな」
○○は呆れた様に笑った。
「そいつは残念だ」
ビクトールも気にした様子なく笑った。
少女達は目をぱちくりして不思議そうに2人を見た。
「あ、ナナミちゃんかアイリちゃん、ちょっと手伝って貰って良い?」
○○は少女達を振り返った。
「良いよ!」
「何すりゃ良いんだい?」
ナナミとアイリと○○は隣の部屋へと入って行った。
「では、ネクロードも逃げてしまいましたし、サウスウィンドゥに報告しに帰りましょう」
フリードの号令で外へ出る。
「あれ?みんなどうしたの?」
ナナミは不思議そうにノースウィンドゥの入り口の方を見る。
そこには、フリック達が来ていた。
「レオナ!アップルちゃんも!!!」
「○○さん!」
「○○、あんたも無事かい」
再開を喜ぶが合流組の顔は晴れない。
「どうしたの?」
○○が不安そうに聞く。
「…………サウスウィンドゥが ハイランドの手に落ちた……」
フリックは眉間にしわを寄せてそう告げた。
「なんですって!! ほ、本当ですか? それで、グランマイヤーさまは?」
フリードは慌てた様にフリックに詰め寄る。
「ソロン・ジーの手によっ て…………」
フリックは事実を口にした。
「そんな……そんな馬鹿 な………… グランマイヤーさまが……」
フリードはガクンと力無く項垂れた。
「色々話す事もある。落ち着ける所はないか?」
フリックがビクトールを見る。
「あぁ、確かこの城の二階に大広間があったはずだ」
ビクトールが昔の記憶を探り出す。
「よし、とりあえずそこへ移動するぞ」
「こっちだ」
フリックの言葉にビクトールが動き、皆後に続く。
○○は皆疲れている事に気が付き、くるりと踵を返す。
「おい、○○行くぞ」
フリックはそれに気付き声をかける。
「え?私も?」
「当たり前だろう」
○○も迷いながらフリック達の後を追った。
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