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「……食べないのか?」

「……」

ネクロードは食事を与えたが、○○は無視をする。

「この城の裏には野菜が自生していてね。芋や人参以外にもまだあるのだよ」

ネクロードは無表情で話続ける。

「近くには岩塩もある。まぁ、人間でない私には関係ない」

ネクロードは真っ赤な液体の入ったグラスを持ち上げる。

「やつらが来たら我々の結婚式と言う訳だ」

ネクロードはグラスを掲げてから、グイッと煽った。

「……ねぇ」

「なんだ」

○○は冷たい床に座ったままネクロードを睨み付ける。

「何故ここを滅ぼしたの?」

○○は静かに声を出した。

「ふふ。ここはな、人間達が多く、とても栄えていた。豊かな作物、交易物資、裏には湖も広がる。それに、この城は昔赤月帝国の攻撃にも耐えた由緒正しき物だ」

ネクロードはノースウィンドゥの街がどれ程素晴らしく栄えていたかを語る。

「ふふ。それが突然、知り合い、友人、恋人、家族によって喰い喰われ滅びる恐怖。最高に素晴らしい!!!」

ネクロードは実に楽しそうに笑った。

「…………外道」

「私にとっては最高の誉め言葉だ」

○○の言葉にネクロードは笑った。

「叫び声、悲鳴、怒号。どれもこれも甘美な音楽だ」

ネクロードはパイプオルガンを奏でる。

「この音に勝るとも劣らない。あぁ、上等なワインより喉を潤す」

ネクロードはうっとりと真っ赤な液体の入ったグラスを掲げる。

「解るかい?この芸術が」

ネクロードは○○を振り返る。

「解らないわ」

○○は恐怖に負けじとネクロードを睨み付ける。

「……人間には解らないものか。まぁ、安心するが良い。結婚式にはお前の血を啜る。お前も吸血鬼になればこの素晴らしさが解るようになる」

ネクロードはそう笑うと、飽きることなくパイプオルガンを弾き続けた。

(ビクトール……)

○○は窓の外を見上げ、ビクトールを思った。




いつの間にか寝てしまったのか、○○は地べたに座ったまま目を覚ました。

「お目覚めか?やつらが来た。準備をしよう」

ネクロードはバサリとマントを翻した。

○○は窓から下を覗き込むと、豆粒ほどの小ささだが、6人の影を見た。

「あれ?一人多い」

○○は心の中で人数を数えた。

ビクトール、U主くん、ナナミちゃん、アイリちゃん、フリードさんの5人だったはず。

「じきにここまでたどり着くだろう。そうでなくてはつまらない」

ネクロードは使い間に準備を進めさせながら言った。

「ふふ、せっかくの結婚式だ。花嫁らしい服装も必要だな」

ネクロードは使い間に命じると、美しい白のウエディングドレスを用意させた。

「これに着替えるが良い」

「嫌」

ネクロードの言葉に間髪入れずに答えた。

「……立場が解っていないのか?」

ネクロードはバサリとマントを翻し、○○の座る前に片膝を立てて座る。

「お前は我花嫁。お前は私の贄だ」

ネクロードは○○の顎を掴んで無理矢理視線を合わせる。

「……」

「ふふ、強情な女は嫌いではない、が、素直になるのも美徳と言うものだぞ」

ネクロードは立ち上がるとドアに向かう。

「私は一旦出よう。素敵な花嫁姿を楽しみにしている」

ネクロードはそう言い残し、部屋から出て行った。

○○はネクロードなら簡単に自分を死よりも恐ろしい目に合わせる事が出来る事に気付く。

「……ウエディングドレス……か」

○○は立ち上がると上質なそれに近付いた。

「うわ……高そう」

○○は嫌そうにウエディングドレスを見た。
美しい刺繍が施され、最高級のパールが惜しげもなく使われている。きっと普通の時なら誰もが羨むドレスだ。

「……着る……か。こんな機会もないし」

○○は少しうんざりしながらも、自分の服を脱ぐと、ウエディングドレスに袖を通した。
ビクトールの姿を見てから、少し恐怖が薄れたのも事実だ。

それにウエディングドレス自体には罪はないと、女性である○○はウエディングドレスに少なからずうきうきとしているのも事実だった。

「あ、ピッタリだわ」

○○は自分のウエディングドレス姿を大きな姿見で見た。
シンプルで上品な上半身のデザインに対し、下半身はふわふわとしたスカートが可愛らしさを表現している。

「髪とか化粧とか……はぁ、それは本番に取っておこうかな」

○○はせめてと、持っていたシュシュでアップに髪をまとめた。
フリックから貰ったパールのネックレスとシュシュがウエディングドレスに映えた。



ーーーカチャリ


ドアが開き、ネクロードが再び姿を表せる。

「なかなか美しいではないか」

ネクロードは○○を姿見越しに見る。

「……」

○○はネクロードを無視する。

「ふふふ、さぁ、準備をしよう。奴等も割りと早くたどり着きそうだ」

ネクロードはにたりと笑った。

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