28
「あれ……?何かしら?」
○○は窓から何か見えた気がして窓を開けた。
「あ……あれは、まさか……!」
見えるのは暗闇に紛れて立つ、多くの人間達だ。
そして、服装は
「は、ハイランド軍!!」
○○は急いでリュックサックを持つと、部屋から出て、階段をかけ降りた。
「フリック!ビクトール!!」
「おいおい、どおした?」
ただならぬ○○の勢いに、ビクトールは酒瓶を置いた。
「そ、外に!」
「落ち着けって」
フリックが○○をなだめる。
「外に、ハイランド軍が!いっぱい!そこまで!」
「っ!そうか!」
ビクトールは酒を飲んでいた事を感じさせない速さで動いた。
「俺は少し街の中を見てから行く!お前達は先にサウスウィンドゥを目指せ!!」
ビクトールは手早くそう言うと、宿から出て行った。
「私もビクトールに着いていきます!」
アップルはそう言うと、ビクトールを追いかけた。
「○○、レオナ、行くぞ」
フリックは2人に声をかける。
「私はU主達を待つよ。アナベルの所に行ってるからね。ピリカもいるし」
レオナはピリカを撫でると、ピリカも頷いた。
「じゃあ、私も……」
○○がそう言うが
「ほら、行くぞ!」
フリックに引っ張られ、宿を出た。
「ふ、フリック!」
「あいつらは大丈夫だ。それにU主とジョウイは真の紋章を宿しているから役に立つ」
フリックがぐんぐんと進む。
「真の紋章?」
○○が不思議そうに声を出した。
「しっ!」
「もぐっ」
がさりと、フリックは○○の口を手で覆い、草かげに飛び込んだ。
「よし!ミューズを押さえろ!!」
「「「おーー!!!」」」
ハイランドの小隊長が叫ぶと、次々にハイランド兵士達がミューズの門をくぐった。
「……」
(ミューズは落ちるな)
フリックが冷静にハイランド兵士達を見ていた。
あっと言う間にミューズの街の中からは叫び声や怒号が聞こえ始めた。
それを聞くと○○の体は恐怖で震えていた。
「○○」
フリックはそっと囁き後ろから抱き締めた。
「怖いか?」
フリックの言葉に○○は頷いた。
「だな。だが、一人で行けるか?」
フリックの声に○○が驚いて振り返った。
「え……」
○○の瞳が不安に揺れる。
「いつまでもここにいても仕方がない。俺が活路を開いてやるから先に行け」
フリックはそう優しく言う。
「で、でもそれじゃあフリックが!!」
○○は眉根にシワを寄せて、フリックを見上げた。
「しっ!」
「ごめん」
フリックは人差し指を立てた。
「俺は大丈夫だ、そんなに柔じゃねーよ」
「……」
「それに」
「それに?」
にっこりとフリックは笑った。
「あいつに似合う男になるまでは死ねないぜ」
「っ……そうだね」
○○は胸にぐさりと刺さるのを感じた。
「出来るな?」
「うん!」
フリックの言葉に○○は頷いた。
「よし、良い子だ」
フリックは優しく○○の頭を撫でるとすっと手を頬まで這わせる。
「っ!」
とたんに○○は触れられた所に熱が集まるのを感じる。
「○○、お前は死ぬなよ」
フリックの目は真剣だが、翳りが見えた。
「フリックの心配屋!」
「おまっ!」
○○がフリックのおでこに巻かれたバンダナを指で弾いた。
「大丈夫、私意外にタフだから」
○○はにこりと笑って握り拳を作り、右腕に力瘤を作る仕草をした。
「そうだな」
フリックは頷いた。
「よし、じゃあ、俺が出たら10秒数えてから出るんだぞ」
「うん!」
「ここから南に行くとコロネの村があるそこで待ってろ」
「サウスウィンドゥじゃないの?」
「コロネから船に乗るんだ」
「わかった!」
「よし!」
フリックは頷くと、辺りを見回した。
「じゃあな」
フリックは一度○○の頭を撫でると草かげから飛び出した。
「いたぞー!」
「あれ!」
「青雷のフリックだ!」
「手柄だぞ!!」
ハイランド兵士達は次々とフリックを追い始めた。
「フリック……。よし!」
○○は辺りが静かになったのを確認すると草かげから飛び出した。
そして、誰もいないミューズの門から無事に外に出られた。
「はぁはぁはぁ」
力の限り走って、ミューズから少し離れた所で立ち止まった。
「はぁ、ふぅー」
深呼吸をすると、辺りを見回した。
「やはり、逃げ出して来た者もいるか」
「っ!!!」
突然声をかけられ、心臓が飛び出す程に驚いた。
ゆっくり声の方へ振り返ると一人の男がたっていた。
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