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「あれ……?何かしら?」

○○は窓から何か見えた気がして窓を開けた。

「あ……あれは、まさか……!」

見えるのは暗闇に紛れて立つ、多くの人間達だ。

そして、服装は

「は、ハイランド軍!!」

○○は急いでリュックサックを持つと、部屋から出て、階段をかけ降りた。

「フリック!ビクトール!!」

「おいおい、どおした?」

ただならぬ○○の勢いに、ビクトールは酒瓶を置いた。

「そ、外に!」

「落ち着けって」

フリックが○○をなだめる。

「外に、ハイランド軍が!いっぱい!そこまで!」

「っ!そうか!」

ビクトールは酒を飲んでいた事を感じさせない速さで動いた。

「俺は少し街の中を見てから行く!お前達は先にサウスウィンドゥを目指せ!!」

ビクトールは手早くそう言うと、宿から出て行った。

「私もビクトールに着いていきます!」

アップルはそう言うと、ビクトールを追いかけた。

「○○、レオナ、行くぞ」

フリックは2人に声をかける。

「私はU主達を待つよ。アナベルの所に行ってるからね。ピリカもいるし」

レオナはピリカを撫でると、ピリカも頷いた。

「じゃあ、私も……」

○○がそう言うが

「ほら、行くぞ!」

フリックに引っ張られ、宿を出た。

「ふ、フリック!」

「あいつらは大丈夫だ。それにU主とジョウイは真の紋章を宿しているから役に立つ」

フリックがぐんぐんと進む。

「真の紋章?」

○○が不思議そうに声を出した。

「しっ!」

「もぐっ」

がさりと、フリックは○○の口を手で覆い、草かげに飛び込んだ。

「よし!ミューズを押さえろ!!」

「「「おーー!!!」」」

ハイランドの小隊長が叫ぶと、次々にハイランド兵士達がミューズの門をくぐった。

「……」

(ミューズは落ちるな)

フリックが冷静にハイランド兵士達を見ていた。

あっと言う間にミューズの街の中からは叫び声や怒号が聞こえ始めた。
それを聞くと○○の体は恐怖で震えていた。

「○○」

フリックはそっと囁き後ろから抱き締めた。

「怖いか?」

フリックの言葉に○○は頷いた。

「だな。だが、一人で行けるか?」

フリックの声に○○が驚いて振り返った。

「え……」

○○の瞳が不安に揺れる。

「いつまでもここにいても仕方がない。俺が活路を開いてやるから先に行け」

フリックはそう優しく言う。

「で、でもそれじゃあフリックが!!」

○○は眉根にシワを寄せて、フリックを見上げた。

「しっ!」

「ごめん」

フリックは人差し指を立てた。

「俺は大丈夫だ、そんなに柔じゃねーよ」

「……」

「それに」

「それに?」

にっこりとフリックは笑った。

「あいつに似合う男になるまでは死ねないぜ」

「っ……そうだね」

○○は胸にぐさりと刺さるのを感じた。

「出来るな?」

「うん!」

フリックの言葉に○○は頷いた。

「よし、良い子だ」

フリックは優しく○○の頭を撫でるとすっと手を頬まで這わせる。

「っ!」

とたんに○○は触れられた所に熱が集まるのを感じる。

「○○、お前は死ぬなよ」

フリックの目は真剣だが、翳りが見えた。

「フリックの心配屋!」

「おまっ!」

○○がフリックのおでこに巻かれたバンダナを指で弾いた。

「大丈夫、私意外にタフだから」

○○はにこりと笑って握り拳を作り、右腕に力瘤を作る仕草をした。

「そうだな」

フリックは頷いた。

「よし、じゃあ、俺が出たら10秒数えてから出るんだぞ」

「うん!」

「ここから南に行くとコロネの村があるそこで待ってろ」

「サウスウィンドゥじゃないの?」

「コロネから船に乗るんだ」

「わかった!」

「よし!」

フリックは頷くと、辺りを見回した。

「じゃあな」

フリックは一度○○の頭を撫でると草かげから飛び出した。

「いたぞー!」

「あれ!」

「青雷のフリックだ!」

「手柄だぞ!!」

ハイランド兵士達は次々とフリックを追い始めた。

「フリック……。よし!」

○○は辺りが静かになったのを確認すると草かげから飛び出した。
そして、誰もいないミューズの門から無事に外に出られた。



「はぁはぁはぁ」

力の限り走って、ミューズから少し離れた所で立ち止まった。

「はぁ、ふぅー」

深呼吸をすると、辺りを見回した。

「やはり、逃げ出して来た者もいるか」

「っ!!!」

突然声をかけられ、心臓が飛び出す程に驚いた。

ゆっくり声の方へ振り返ると一人の男がたっていた。

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