24

夕食を食べていると、宿屋の扉が開いた。

「○○さん!!」

「アップルちゃん!!」

入って来たのはアップルと数人の傭兵達。

「○○さん!○○さん!!無事で良かったわ!!」

泣きながらアップルは○○と抱き付いて再開を歓び合う。

「アップルちゃんも!良かった!凄く心配した!」

「心配したじゃないわよ!」

アップルが急に怒り始める。

「貴女、わざと私を逃がしたわね!」

「あ、えーと」

アップルの迫力に○○は押され気味になる。

「私はあの後この人達と合流出来たの。で、○○さんの事を話したら一人が見に行ってくれて」

アップルは一呼吸おいて、落ち着きを取り戻した。

「なかなか帰って来ないから見に行ったら……。その人の遺体だけがあったの」

アップルの言葉に○○はゾワリと背中に嫌な汗が流れた。

「あ、あの人……。助けに来てくれたんだ……」

○○は辛そうに顔をしかめた。

「……会ってるの?」

アップルは鋭く目を光らせた。

「うん。目の前で……あの人に……」

「そう。……どうして○○さんは無事だったの?」

アップルはずはりと聞いてきた。

「え………」

○○は辛そうな顔のままだ。

「シードよ?シード!!相手はあの猛将と呼ばれる人間よ?○○さん武器も何も持って無かったはずよね?」

アップルは興味津々と声を高くした。

「え、えぇ」

○○はアップルの勢いに押され気味だ。

「どうやって助かったの?場所を移動したのと関係があるの?ねぇ!軍師として興味があるわ!これからの戦いの役に立つかも知れないの!お願い!教えて!!」

アップルはずいっと目を輝かせた。

「い、や……。その……」

○○は言葉に出来ずにおろおろとした。

「俺が助けに入ったからだ」

「フリック!」

フリックが、ぺりっと○○からアップルを引き離した。

「フリックが……。なら、まぁ、シード相手に好戦するでしょうけど……。場所を移動したのは何故?」

アップルは不思議そうにフリックを見上げた。

「あ?あー、そうなぁ……」

フリックは言葉を濁し、うーんと唸った。

「はいはい!そこまでにしときな!」

ビクトールが手をパンパン叩いた。

「○○もフリックもシード相手に頑張ったんだ。そりゃ、思い出したくない事や言いたくない事もあるだろう」

ビクトールはアップルの頭をぽんぽんと叩いた。

「うー、それもそうね。今は良いわ!その内教えてね!」

アップルはにこりと笑った。

「そうね。あっ!みんな、夕飯は?ここのご飯美味しいよ!」

○○はアップルや傭兵達に椅子を進めた。

「そうね!」

「腹へったぜ!」

「やっと食べられる!」

みんなそれぞれ食事を始めた。





日が経つにつれ、傭兵の砦から逃れた者達がミューズへと逃げ込んで来た。

だが、U主達はなかなか現れなかった。


そして数日後。


「何?!牢屋にU主達が?!」

「は、はぁ。身元を確認する物が何も無いので、とりあえず……。」

ミューズの役人がビクトールへとそう行ってきたのだ。

「はー、そうかい」

ビクトールはやれやれと席を立ち上がった。

「早く行ってあげて!また牢屋だなんて。可哀想!」

「はいよ、行ってくるわ」

ビクトールは軽く手を振ると、宿屋を後にした。

「そう言えばフリックもいないけど」

レオナは不思議そうにした。

「さぁ、朝からいないですよね」

○○も不思議そうに首を傾げた。

「ほぉー、そうかい。なら、艶っぽい用事かね」

レオナは妖艶に微笑んだ。

「つ、艶……!!」

○○は一瞬あの夜を思い出し、顔を赤くする。

「ふふ。まぁ、あの色男にはないかねぇ」

レオナは楽しそうに笑った。

「ま、まぁでも、フリックも男性ですからね」

「おや、大人な意見」

クスクスとレオナは笑った。


ガチャリと宿屋の扉が開くと、入って来たのは噂のフリック。

「おや、色男。朝帰りとかお盛んな事」

レオナは妖艶な笑みをフリックへ向けた。

「……なんだそりゃ。出掛けたのは朝だよ」

フリックが呆れた気味にレオナへと言う。

「おや、そうかい」

レオナはクスクスと笑った。

「お、お帰り、フリック」

○○はまだ赤い顔でフリックを見た。

「ただいま。どうした○○?熱でもあるのか?」

フリックは不思議そうに○○の顔をジロジロ見た。

「っ!違う!」

「ふふふ」

レオナはフリックと○○のやり取りを楽しそうに見る。

「買い物に行ってたんだよ」

「買い物?」

「あぁ」

フリックはそう言いながら手に持っていた包みを開けようとした。

「フリックさん!○○さん!レオナさん!」

「ナナミちゃん!U主君!ジョウイ君!ピリカちゃん!それにムクムク!!良かった!無事だったのね!」

○○はフリックを通り越して、子供達に駆け寄った。

「あーん!みんな無事で良かったー!!」

ナナミは泣きながら、そしてピリカも○○へと抱き付いた。

「よしよし」

○○は優しく微笑みながらナナミとピリカを撫でた。

「もーね!聞いてよ○○さん!ジョウイったらピート役が下手なんだもん!」

ナナミはプリプリと怒る。

「え……、そ、それを言うならナナミのヒルダさんだって……」

ジョウイは小さな声で抗議した。

「○○さんにも見せてあげたかったな!私とU主の名演技!!あ、そう言えば○○さんの格好もヒルダさんみたいで素敵!!」

ナナミはキャッキャッと笑った。

「ヒルダさんって白鹿亭の?」

「○○さんも知ってるんだ!」

○○の言葉にナナミは嬉しそうに笑った。

「ほれ、お前ら。少し休んだら市庁舎へ行くんだろ?」

ビクトールがいつまでも終わらない会話を止めた。

「あ!そうだった!U主!ジョウイ!ピリカちゃん!ムクムク!!少し部屋に行こう!私、疲れちゃった!」

「そうだね。少し休ませて貰います」

ナナミの言葉にU主が頷いた。

「おいで、ピリカ」

「……」

ジョウイは優しくピリカを呼ぶと4人と1匹は二階へと姿を消した。

「あ!私も洗濯物干させて貰っちゃおう!」

○○はパタパタと走り去った。

「あ、おい!○○!」

フリックが慌てて呼び止めようとするが、時すでに遅し。

「おや、色男。振られちまったかい?」

レオナはニヤリと意地悪く笑った。

「うるせー」

フリックは小さく呟いた。

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