22
「おはよう!ビクトール」
○○が部屋を出るとちょうどビクトールも隣の部屋から出てきた。
「○○、おはようさん、ちゃんと眠れたか?」
ビクトールは頭をかきながら笑った。
「うん、大丈夫。朝ごはん食べたらミューズへ行くの?」
○○はビクトールと連れ立って階段を降りる。
「そうだな。生き残った仲間もミューズにいるかも知れないしな。後から来る連中を待つのもミューズが良いだろう」
「そうだね。ところでフリックは?」
ビクトールの話を聞きながらも気になるのはフリックの事。
「あいつな。まだ寝てたから、叩き起こして来た。まぁ、その内来るだろ」
ビクトールが言い終わった所で食堂に着いた。
「おはようございます。良く眠れましたか?」
ヒルダの爽やかな笑顔に出迎えられ、2人は席に着いた。
「はい!ベッドも気持ち良かったです」
「まぁ、それは良かったわ」
「それと……この服なんですが」
○○はヒルダの用意したワンピースの裾を持ち上げた。
「とても良くお似合いよ。もし、気に入って下されば貰ってやって下さいますか?」
ヒルダはにこりと微笑んだ。
「良いんですか?とても助かります!ありがとうございます」
○○は嬉しそうににこにこと笑った。
「良かったな」
「うん!」
ビクトールはにこにこと嬉しそうに笑う○○を穏やかな顔で見る。
「すぐに朝食の準備しますね」
ヒルダはにこりと微笑むと、奥へと入って行った。
程無くして、焼き立てのパンやジャム、フルーツ、スープが運ばれて来た。
「美味しい」
○○はパクパクと食べていく。
「良い匂いだな」
「遅いぞ、フリック」
フリックがゆっくりとした足取りで食堂へ現れた。
「おはよう、フリック」
○○はフリックへビクトールと変わらない、いつもと変わらない笑顔で挨拶をした。
「あぁ、おはよう」
フリックはにこりと笑うと席に着いた。
「おはようございます。昨晩は眠れましたか?」
ヒルダはフリックの分の朝食を持って現れた。
「あぁ」
それだけを言うと、受け取ったパンをもそもそと食べ始める。
○○は明け方前に起きた時にフリックがいなかった事に驚かなかった。
決して恋人として一夜を共にした訳では無いと分かっていた。
あくまで、シードによる不快感や恐怖を取り除く行為だったのだ。
と、理解した。
なので、極力今まで通りの付き合いかたを貫こうと決心していた。
朝食が終わり、部屋に帰り、荷物をまとめる。
ヒルダには少し下着と服を分けて貰ったのだ。
「これで良し!」
○○がリュックサックを背負って、備え付けの鏡を見る。
「あー、このワンピースにはちょっと似合わないかな」
ミューズへ着いたら少し買い物をしようと心に決めた。
「馬だからな、すぐに着く」
フリックが馬の様子を見て、ミューズまで行けると判断した。
「はぁー、また馬か……」
ビクトールは頭をがしがしとかいた。
「ふふ、本当に苦手なんだね」
○○は楽しそうに笑った。
「悪いか!ほら、行くぞ!」
ビクトールに頭を小突かれながら○○は促され、フリックの前にやって来た。
「ごめんね、フリック。また宜しくお願いします」
「あぁ」
○○がペコリと頭を下げると、フリックに手伝ってもらい、馬に乗る。
「悪いなぁ、○○!俺が馬に慣れたら一緒に乗ってやるからな」
ビクトールがニヤニヤと笑った。
「うん!楽しみに待ってますわ!」
○○もニヤリとそう笑った。
「よっと。よし!行くぞ」
フリックもヒラリと○○の後ろに跨がると、馬をミューズへ走らせた。
背中にフリックを感じ、昨日の行為がまざまざと思い出される。
ちょうどビクトールも後ろにいるので、赤くなった顔を見られずに済んだと○○はホッとした。
「ミューズ、着いたね」
○○は馬から降りて、伸びをした。
やはり慣れない事は体に響くようだ。
「よし、とりあえず宿屋を基点にしよう」
ビクトールの言葉に従い、宿屋へと向かった。
「○○!ビクトール!!フリック!!」
「レオナ!!」
宿屋を開けるとすぐにレオナが出迎えた。
「良かった!無事だったんだね!」
○○は嬉しそうにレオナに抱き付いた。
「あぁ!傭兵達と何人かで馬とか使ってね!バーバラもいるよ」
レオナがにこりと笑うと、奥からバーバラも出てきた。
「○○!!無事だったのかい!」
「バーバラ!!」
○○はバーバラにも抱き付いて、無事を歓びあった。
「そうか、とにかく無事で良かった」
ビクトールもホッとしたようにレオナとバーバラを見た。
「あぁ。所で○○、あんた可愛い格好してるじゃないか」
レオナが○○のワンピース姿に気が付いた。
「うん、途中で服が凄く汚れちゃったの。そしたら白鹿亭の女将さんがくれたの」
○○は上手く笑いながら言った。
「そうかい。大変だったんだね。
どうせなら私の服もやろうか?」
レオナはニヤリと笑った。
「……遠慮しておきます。そんなセクシーな服似合わないもん」
○○は苦笑した。
「そんな事ないよ。ねぇ?」
「せっかくだから着たらどうだ?深いスリットのやつ」
ビクトールが話に乗った。
「……ビクトールのおやじ」
○○がじとっとビクトールを見た。
「ははは」
ビクトールはケラケラと楽しそうに笑うと、○○の頭をぽんぽんと叩いた。
「もー」
「な?フリック」
ビクトールがフリックにも話を振った。
「そうだな。着るか?」
フリックもニヤリと笑った。
「っ!!フリックまで!」
○○は顔を真っ赤に染めて怒った。
「ふふふ。とにかく部屋を借りてある。何人ここへたどり着けるかは分からないけどね」
レオナがそう言いながら部屋の鍵を出した。
「そうだな。とりあえずは落ち着こう」
ビクトールは鍵を受け取る。
「まだ、戦いはこれからだろうからな」
フリックも厳しい顔付きで言った。
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