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「おはよう!ビクトール」

○○が部屋を出るとちょうどビクトールも隣の部屋から出てきた。

「○○、おはようさん、ちゃんと眠れたか?」

ビクトールは頭をかきながら笑った。

「うん、大丈夫。朝ごはん食べたらミューズへ行くの?」

○○はビクトールと連れ立って階段を降りる。

「そうだな。生き残った仲間もミューズにいるかも知れないしな。後から来る連中を待つのもミューズが良いだろう」

「そうだね。ところでフリックは?」

ビクトールの話を聞きながらも気になるのはフリックの事。

「あいつな。まだ寝てたから、叩き起こして来た。まぁ、その内来るだろ」

ビクトールが言い終わった所で食堂に着いた。

「おはようございます。良く眠れましたか?」

ヒルダの爽やかな笑顔に出迎えられ、2人は席に着いた。

「はい!ベッドも気持ち良かったです」

「まぁ、それは良かったわ」

「それと……この服なんですが」

○○はヒルダの用意したワンピースの裾を持ち上げた。

「とても良くお似合いよ。もし、気に入って下されば貰ってやって下さいますか?」

ヒルダはにこりと微笑んだ。

「良いんですか?とても助かります!ありがとうございます」

○○は嬉しそうににこにこと笑った。

「良かったな」

「うん!」

ビクトールはにこにこと嬉しそうに笑う○○を穏やかな顔で見る。

「すぐに朝食の準備しますね」

ヒルダはにこりと微笑むと、奥へと入って行った。

程無くして、焼き立てのパンやジャム、フルーツ、スープが運ばれて来た。

「美味しい」

○○はパクパクと食べていく。

「良い匂いだな」

「遅いぞ、フリック」

フリックがゆっくりとした足取りで食堂へ現れた。

「おはよう、フリック」

○○はフリックへビクトールと変わらない、いつもと変わらない笑顔で挨拶をした。

「あぁ、おはよう」

フリックはにこりと笑うと席に着いた。

「おはようございます。昨晩は眠れましたか?」

ヒルダはフリックの分の朝食を持って現れた。

「あぁ」

それだけを言うと、受け取ったパンをもそもそと食べ始める。



○○は明け方前に起きた時にフリックがいなかった事に驚かなかった。
決して恋人として一夜を共にした訳では無いと分かっていた。
あくまで、シードによる不快感や恐怖を取り除く行為だったのだ。
と、理解した。

なので、極力今まで通りの付き合いかたを貫こうと決心していた。




朝食が終わり、部屋に帰り、荷物をまとめる。
ヒルダには少し下着と服を分けて貰ったのだ。

「これで良し!」

○○がリュックサックを背負って、備え付けの鏡を見る。

「あー、このワンピースにはちょっと似合わないかな」

ミューズへ着いたら少し買い物をしようと心に決めた。




「馬だからな、すぐに着く」

フリックが馬の様子を見て、ミューズまで行けると判断した。

「はぁー、また馬か……」

ビクトールは頭をがしがしとかいた。

「ふふ、本当に苦手なんだね」

○○は楽しそうに笑った。

「悪いか!ほら、行くぞ!」

ビクトールに頭を小突かれながら○○は促され、フリックの前にやって来た。

「ごめんね、フリック。また宜しくお願いします」

「あぁ」

○○がペコリと頭を下げると、フリックに手伝ってもらい、馬に乗る。

「悪いなぁ、○○!俺が馬に慣れたら一緒に乗ってやるからな」

ビクトールがニヤニヤと笑った。

「うん!楽しみに待ってますわ!」

○○もニヤリとそう笑った。

「よっと。よし!行くぞ」

フリックもヒラリと○○の後ろに跨がると、馬をミューズへ走らせた。

背中にフリックを感じ、昨日の行為がまざまざと思い出される。
ちょうどビクトールも後ろにいるので、赤くなった顔を見られずに済んだと○○はホッとした。




「ミューズ、着いたね」

○○は馬から降りて、伸びをした。
やはり慣れない事は体に響くようだ。

「よし、とりあえず宿屋を基点にしよう」

ビクトールの言葉に従い、宿屋へと向かった。


「○○!ビクトール!!フリック!!」

「レオナ!!」

宿屋を開けるとすぐにレオナが出迎えた。

「良かった!無事だったんだね!」

○○は嬉しそうにレオナに抱き付いた。

「あぁ!傭兵達と何人かで馬とか使ってね!バーバラもいるよ」

レオナがにこりと笑うと、奥からバーバラも出てきた。

「○○!!無事だったのかい!」

「バーバラ!!」

○○はバーバラにも抱き付いて、無事を歓びあった。

「そうか、とにかく無事で良かった」

ビクトールもホッとしたようにレオナとバーバラを見た。

「あぁ。所で○○、あんた可愛い格好してるじゃないか」

レオナが○○のワンピース姿に気が付いた。

「うん、途中で服が凄く汚れちゃったの。そしたら白鹿亭の女将さんがくれたの」

○○は上手く笑いながら言った。

「そうかい。大変だったんだね。
どうせなら私の服もやろうか?」

レオナはニヤリと笑った。

「……遠慮しておきます。そんなセクシーな服似合わないもん」

○○は苦笑した。

「そんな事ないよ。ねぇ?」

「せっかくだから着たらどうだ?深いスリットのやつ」

ビクトールが話に乗った。

「……ビクトールのおやじ」

○○がじとっとビクトールを見た。

「ははは」

ビクトールはケラケラと楽しそうに笑うと、○○の頭をぽんぽんと叩いた。

「もー」

「な?フリック」

ビクトールがフリックにも話を振った。

「そうだな。着るか?」

フリックもニヤリと笑った。

「っ!!フリックまで!」

○○は顔を真っ赤に染めて怒った。

「ふふふ。とにかく部屋を借りてある。何人ここへたどり着けるかは分からないけどね」

レオナがそう言いながら部屋の鍵を出した。

「そうだな。とりあえずは落ち着こう」

ビクトールは鍵を受け取る。

「まだ、戦いはこれからだろうからな」

フリックも厳しい顔付きで言った。

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