18
「貴様は戦場に女漁りに来ているのか!?良いご身分だな」
「あぁん?」
怒気を孕んだフリックの声にシードが苛つく様に対峙する。
「虐殺の次は強姦とはな……全く胸くそ悪いぜ」
フリックはそう吐き捨てる様に言う。
「オイオイオイ、それは誤解があるぜ、なぁ?」
シードはフリックの後ろに見え隠れする○○へ投げ掛ける。
「無理矢理じゃねーぜ。ちゃーんと合意の上の行為ってやつだよ。なぁ?」
シードの投げ掛けに○○はビクリと体を震わせる。
確かに合意の上ではあるが、脅しと言って差し支えない事情である。
「……そうか」
フリックは○○の様子をチラリと見る。
「ーーっ(嫌われた)」
○○はフリックの言葉にショックを受けて垂れた。
「な?だから、お邪魔虫はお前の方だからな?」
シードはニヤリと笑うと、フリックへシッシッと手を振った。
「だが、生憎俺もこいつの悲鳴でここに来たんだよ!!」
フリックは力強く言葉尻を荒げると愛剣オデッサを構えた。
「フリック……!」
○○はフリックを驚きの表情で見て、安心に涙が流れた。
「お、ヤル気だな!俺も戦いに来てるんだからな!」
シードは嬉しそうに剣を構えると、攻撃に備える。
先に動いたのはフリック。
フリックは持ち前の素早い動きであっという間にシードの懐に入り込ん、剣を横撫でにする。
シードも素早く後ろに身を退き、ギリギリの所でフリックの攻撃を避ける。
そのまま剣をフリックへと袈裟斬りにするが、フリックも体を右に避ける。
「へへ、やるねー。その身のこなしと青い装束。なるほどな、お前が'青雷のフリック'か!!」
シードはフリックと距離を計りながら嬉しそうに言う。
「だったら、何だ」
フリックも静かにシードを睨み付けた。
「強いやつと殺り合えるのは俺の喜びだからな」
シードは剣を構え直す。
「そうかい!」
フリックは声に乗せ再び剣を振るう。
戦士同士の撃ち合いはしばらく続く。
どちらも強さは互角
ーーーだが
「くっ!」
「フリック!!」
フリックが、一瞬の隙を突かれた。
あっという間にシードがフリックを地面に押し倒し、剣を押す。
フリックもすんでの所で踏み留まる。
「へへ、ざまぁ、ねえな」
シードはニヤリと笑いながら力を込める。
「っ!!」
○○は両手で両の頬を強く叩いた。
「何をいつまで呆けてるの!私が、私が何とかしなきゃ!」
○○は自分を奮い立た。
「えっと、何か!そうだ!リュックに何か!」
○○は慌てて抱き締めていたリュックサックに手を突っ込んだ。
そして出て来たのは
「【ねむりの風】!!」
○○はねむりの風の札をシードへ向けて発動した。
「な……」
シードの体がぐらりと揺れる。
「くっ!」
フリックはその隙を見逃さず、右足を思いきり蹴りあげ、シードの顎へとヒットさせる。
「ーーっ!!!」
眠気と痛みとを受けてシードは地面に転がる。
「こっちだ!」
フリックはシードに一発蹴りを入れ、○○の手を掴むと走り出した。
「って!待て!!」
シードは朦朧とした視界の中で2人の陰が走って行くのをただ、見送るしかなかった。
「はぁ、はぁ、ね、ねぇフリック!!」
○○は転けない様に必死に走りながらフリックへ話しかける。
「なんだ!」
フリックはチラリと○○へ視線を向ける。
「あ、あの人あのままで、良かった、の?」
息も絶え絶え問いかける。
「あ?まさか、助けたかったとか言うなよ!」
フリックは不機嫌そうに声を荒げる。
「っ!ち、違う!やっつけなくて、良いの?」
○○は困惑しながら話しかける。
「あぁ。今の俺じゃ、悔しいが無理だ」
フリックは苦虫を噛み潰した様な顔をした。
「そっ……か」
○○はそれだけ言うと黙って走る。
「もう少し先でビクトールと合流する」
フリックはそれだけ言うと、しっかりと○○の手を握ったまま走った。
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