15
「おやおや、お嬢さんは逃げなくて良いのか?」
シードは呆れた様に○○を見た。
「逃げたいに決まってるじゃない!」
○○は恐怖でおかしくなりそうで、大声で叫んだ。
「ん、なら」
「でも、見逃してなんてくれないでしょ?」
呆れた顔のシードを○○が睨み付けた。
「まーな。これが仕事だから」
シードはニヤリと剣の先を○○へ向けた。
「見た所、嬢さんもさっきの嬢さんも獲物も持ってない素人さんのようだな?」
シードは○○を上から下まで見た。
「そりゃ、私はコックだもの。武器なんて持ってないわ。」
○○は冷静を装うが、声は少し震えた。
「そーか、はぁ。また、嫌な仕事だな。しかし、仲間を逃がす為に自己犠牲か」
シードはつまらなそうにアップルの逃げた方を見た。すでにアップルの気配すら感じなかった。
「違う。貴方は重大なミスを犯したわ」
「あぁん?」
○○は柄の悪いシードに気圧されるが、何とか奮い立た。
「さっきの子は傭兵達の軍師よ!言わば頭脳。コックは替えが効くけど、頭脳はそうはいかないもの」
○○の言葉にシードは少なからず狼狽えた。
「クッソ!マジか?!お前、そこまで考えてたのか!またクルガンに嫌味言われる」
シードは悔しそうに石を蹴りあげた。
シードが○○から視線を反らせた隙に走り出した。
「っ!コラ!待て!!」
「ッキャッ!」
だが、あっという間にシードに追い付かれ、捕まる。
「油断も隙もないな。……お前、色々考えてるんだな」
シードは肝心した様に声を出す。
「あ、当たり前でしょ!」
○○はシードを至近距離から見上げた。
恐怖で口がカチカチとなる。
「へぇ、そんなに怖がってるのに、面白い奴だな」
シードは興味深そうに○○をジロジロ見た。
「お前さぁ、良い女だな」
シードはグイッと○○の腰を引き寄せた。
「俺は本来、戦いが好きで戦場に出てくるんだ。だから、強い奴と殺り合うのが好きだ。だが、お前はこう、なんて言うか、あー、ムラって来る」
シードはイヤイヤと逃げようとする○○の顎を捉えて視線を無理矢理合わせる。
「お前、俺に抱かれるか?ここで」
「なっ!何を馬鹿な事言ってるの!」
真剣なシードの顔に、○○は怒りの表情で睨み付けた。
「俺は真剣だぜ。例えばな、俺が今お前を殺すのに2秒」
「っ!」
シードは○○に見える様に剣を掲げると○○の顔は恐怖に染まる。
「それから、さっきの嬢さんを探すも、他の傭兵達を殺すも簡単だ」
シードは低い声で何でもない様に言い放つ。
ごくりと、○○は唾を飲み込んだ。
「もし、お前が俺の相手をするなら、まぁ、10分でも20分でも1時間でも、その間は他の奴には手は出せないな」
シードは再び○○の顎を捉えて、鼻と鼻が付きそうなほど距離を縮めた。
とーーー
「おっ!!コック!!」
傭兵の一人が砦から逃げて来た。
「あっ!」
一瞬、助かったと○○は思った。
だが、シードは○○を軽々抱えたまま、剣で傭兵を一突きにした。
「ぐっ……ごほっ」
「っ!!!」
傭兵は声も無いまま大量の赤い血を吐き、そのまま絶命した。
「分かったか?お前が俺の相手をするだけで、死者は減るんだぜ?」
「……」
「何も、ご奉仕しろーって訳じゃないぜ」
シードは返り血を拭いながら笑った。
「どうする?」
シードは楽しそうに笑った。
「ほ、本当に……」
「ん?」
○○の小さな声にシードは耳を傾ける。
「本当に、そ、その」
「セックス?」
「……それだけで、他の人には手を出さない?」
ニヤニヤと笑うシードに対して○○の表情は硬い。
「あ、まぁ、俺も命の危険があったら反撃ぐらいはするぜ」
「……」
シードの言葉に○○は押し黙る。
「人に見られない所でヤレば大丈夫だろ。俺だって、ルカ様やクルガンに見付かると面倒だからな」
シードはやや焦りながらそう捲し立てた。
「な?俺だって、ハイランドじゃ、結構モテるんだぜ?」
シードは自慢気に言うが、○○には全く興味は持てなかった。
シードと言う男はフリックより少し年若く、整った顔の持ち主だ。
その上、若くしてハイランド軍の猛将。出世頭である。
本人の言う通り、ハイランドでは女性達に声をかけられる事も多いが、シード自信はあまり興味を持てる相手はいなかった。
シードも、戦い抜きで興味が持てる相手は○○が初めてであった。
「わ、分かった」
○○は小さく頷いた。
「よし!なら、場所を変えるぞ」
シードは嬉々として○○の手を引いた。
が、○○は動かない。
「ん?」
「ちゃ、ちゃんと、約束は守ってよ」
○○はじっとシードを睨み付ける。
「あぁ。お前が俺を煽れば良いんだよ」
シードはニヤリと笑うと、もう一度手を引いた。
○○は今度こそシードに付いて歩き始めた。
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