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「おやおや、お嬢さんは逃げなくて良いのか?」

シードは呆れた様に○○を見た。

「逃げたいに決まってるじゃない!」

○○は恐怖でおかしくなりそうで、大声で叫んだ。

「ん、なら」

「でも、見逃してなんてくれないでしょ?」

呆れた顔のシードを○○が睨み付けた。

「まーな。これが仕事だから」

シードはニヤリと剣の先を○○へ向けた。

「見た所、嬢さんもさっきの嬢さんも獲物も持ってない素人さんのようだな?」

シードは○○を上から下まで見た。

「そりゃ、私はコックだもの。武器なんて持ってないわ。」

○○は冷静を装うが、声は少し震えた。

「そーか、はぁ。また、嫌な仕事だな。しかし、仲間を逃がす為に自己犠牲か」

シードはつまらなそうにアップルの逃げた方を見た。すでにアップルの気配すら感じなかった。

「違う。貴方は重大なミスを犯したわ」

「あぁん?」

○○は柄の悪いシードに気圧されるが、何とか奮い立た。

「さっきの子は傭兵達の軍師よ!言わば頭脳。コックは替えが効くけど、頭脳はそうはいかないもの」

○○の言葉にシードは少なからず狼狽えた。

「クッソ!マジか?!お前、そこまで考えてたのか!またクルガンに嫌味言われる」

シードは悔しそうに石を蹴りあげた。


シードが○○から視線を反らせた隙に走り出した。


「っ!コラ!待て!!」

「ッキャッ!」

だが、あっという間にシードに追い付かれ、捕まる。

「油断も隙もないな。……お前、色々考えてるんだな」

シードは肝心した様に声を出す。

「あ、当たり前でしょ!」

○○はシードを至近距離から見上げた。
恐怖で口がカチカチとなる。

「へぇ、そんなに怖がってるのに、面白い奴だな」

シードは興味深そうに○○をジロジロ見た。


「お前さぁ、良い女だな」

シードはグイッと○○の腰を引き寄せた。

「俺は本来、戦いが好きで戦場に出てくるんだ。だから、強い奴と殺り合うのが好きだ。だが、お前はこう、なんて言うか、あー、ムラって来る」

シードはイヤイヤと逃げようとする○○の顎を捉えて視線を無理矢理合わせる。

「お前、俺に抱かれるか?ここで」

「なっ!何を馬鹿な事言ってるの!」

真剣なシードの顔に、○○は怒りの表情で睨み付けた。

「俺は真剣だぜ。例えばな、俺が今お前を殺すのに2秒」

「っ!」

シードは○○に見える様に剣を掲げると○○の顔は恐怖に染まる。

「それから、さっきの嬢さんを探すも、他の傭兵達を殺すも簡単だ」

シードは低い声で何でもない様に言い放つ。
ごくりと、○○は唾を飲み込んだ。

「もし、お前が俺の相手をするなら、まぁ、10分でも20分でも1時間でも、その間は他の奴には手は出せないな」

シードは再び○○の顎を捉えて、鼻と鼻が付きそうなほど距離を縮めた。



とーーー


「おっ!!コック!!」

傭兵の一人が砦から逃げて来た。

「あっ!」

一瞬、助かったと○○は思った。

だが、シードは○○を軽々抱えたまま、剣で傭兵を一突きにした。

「ぐっ……ごほっ」

「っ!!!」

傭兵は声も無いまま大量の赤い血を吐き、そのまま絶命した。

「分かったか?お前が俺の相手をするだけで、死者は減るんだぜ?」

「……」

「何も、ご奉仕しろーって訳じゃないぜ」

シードは返り血を拭いながら笑った。

「どうする?」

シードは楽しそうに笑った。


「ほ、本当に……」

「ん?」

○○の小さな声にシードは耳を傾ける。

「本当に、そ、その」

「セックス?」

「……それだけで、他の人には手を出さない?」

ニヤニヤと笑うシードに対して○○の表情は硬い。

「あ、まぁ、俺も命の危険があったら反撃ぐらいはするぜ」

「……」

シードの言葉に○○は押し黙る。

「人に見られない所でヤレば大丈夫だろ。俺だって、ルカ様やクルガンに見付かると面倒だからな」

シードはやや焦りながらそう捲し立てた。

「な?俺だって、ハイランドじゃ、結構モテるんだぜ?」

シードは自慢気に言うが、○○には全く興味は持てなかった。

シードと言う男はフリックより少し年若く、整った顔の持ち主だ。
その上、若くしてハイランド軍の猛将。出世頭である。

本人の言う通り、ハイランドでは女性達に声をかけられる事も多いが、シード自信はあまり興味を持てる相手はいなかった。


シードも、戦い抜きで興味が持てる相手は○○が初めてであった。





「わ、分かった」

○○は小さく頷いた。

「よし!なら、場所を変えるぞ」

シードは嬉々として○○の手を引いた。

が、○○は動かない。

「ん?」

「ちゃ、ちゃんと、約束は守ってよ」

○○はじっとシードを睨み付ける。

「あぁ。お前が俺を煽れば良いんだよ」

シードはニヤリと笑うと、もう一度手を引いた。
○○は今度こそシードに付いて歩き始めた。

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