最終話
「ここは……リューベの村……」
○○は久しぶりに見る村を眺めた。
「……ここから始まったんだよね」
○○は復興しようとする焼けた村を見た。
「ビクトールが一人で食べに来て、その後フリックと2人で来てかれたんだ」
○○は懐かしそうに元宿屋を見た。
「私の第二の故郷。大好きだった優しい人達……」
○○はリューベを後にした。
○○は歩いた。
初めてここを歩いたのはビクトールと2人だった。
今では加減をすれば充分に一人で旅が出来る程紋章にも慣れた。
そして、傭兵の砦にたどり着く。
「ここを出て、どのくらいが経ったのかな?」
○○はじっと砦を眺めた。
「ふふ、あれが獅子には見えないよね」
○○はビクトールが描いたクマの旗を見た。
そしてチラリと森を見る。
あそこでシードと初めて出会ったのだ。
最初は、ただ恐ろしく、辛い思いをした。
でも…………
「………………フリック……」
○○はフリックを想い涙を流した。
「なんだよ」
「っ!!」
○○は驚いて振り返る。
「まったく、部屋に帰ったらいないから心配したぜ」
フリックはため息をつきながら○○に近付いた。
「しかもビッキーのやつ、失敗したとか言いやがる。まぁ、ここにいて良かった」
フリックがホッとした様に優しく笑った。
「っ!!わ、私……行くね」
○○はフリックに甘えそうになる自分を振り払う。
「どこにだ?俺から離れようってのか?」
フリックはおどけた様に声を出す。
「…………フリック。私、シードに」
「知ってる」
○○の言葉を遮る様にフリックが声を出す。
「なら!もう私がフリックと一緒にいる資格なんて……」
○○は涙が一筋流れた。
「お前は俺よりあいつの方が良いのか?」
「私はフリックが好きだよ!」
フリックの言葉に力強く答える。
「なら、何の問題がある?それとも死んだ男に操でも立てるのか?」
「っ!!」
実際にフリックの口からシードの死を伝えられるとショックを受けた。
「……昨日は悪かった。さすがの俺も頭では分かってても酷く当たっちまって」
フリックはばつの悪そうな顔で謝る。
「まぁ、あれだ。昨日ので、許してやる」
フリックが柔らかく笑った。
「っ!!な、なんで?!何でそんなに」
○○はポロポロと涙を流した。
「お前の事が好きだからだよ、○○」
「っ!!」
フリックはゆっくりと○○に近付いた。
「愛してるよ。お前の事を」
フリックは優しく○○を抱き締めた。
「フリック……」
○○は嬉し涙を流しながら、抱き返した。
「返事は?」
フリックはニヤリと笑った。
「わ、私もフリックが好き。好き」
○○はフリックに何度も好きだと訴えた。
「よし。それに、シードと約束しちまったしな」
「約束?」
○○は不思議そうに聞き返す。
「ああ、お前を泣かさないってな」
フリックは指で○○の涙を拭う。
「っ!!」
「あ、でも、もう泣いてるな……。困ったな」
フリックは笑った。
「そ、そうだね。大丈夫!これは嬉し泣きだから」
○○は嬉しそうに笑った。
「そうだ。後これを」
フリックはシードの血の付いた猫のネックレスを取り出す。
「っ!!これ!!」
○○は嬉しそうにそれを受け取った。
「あいつが返しとけとよ」
「そう、なんだ。これ、フリックに貰って凄く嬉しかったの。シードに取られた時は凄くショックで。まさか返って来る日がくるなんて」
○○は猫のネックレスを嬉しそうに見た。
「これ、大切に取っておくね。今の私にはこっちがあるし」
○○はパールの付いたネックレスを指で触った。
「そうだな」
フリックがにこりと笑った。
自然と2人の距離が縮まり、そのまま唇を重ねた。
「その代わり、次はないからな」
フリックは少し拗ねたように青い目を輝かせた。
「もちろん」
○○が嬉しそうに笑うと再び二人は口付けを交わした。
「おおーーい!いたのか?」
遠くからビクトールの声がした。
フリックと○○は振り返る。
「ビクトール!!」
○○は嬉しそうにビクトールに駆け寄る。
「よし、話は済んだか?」
ビクトールがフリックを見る。
「まあな」
フリックは頷いた。
「さて、次はどこに行くか?」
ビクトールが声を出す。
「え?」
○○は不思議そうに声を出す。
「こいつはネクロードも倒したしな」
フリックがビクトールを指差す。
「こいつはまだ戦士の村に帰る気はないしな」
ビクトールがフリックを指差す。
「クスクス、宛のない旅を楽しむの?」
○○は楽しそうに笑った。
「ああ、また3人に戻ったな」
ビクトールは○○の頭をポンポンと叩いた。
「お前は邪魔くさいけどな」
フリックがビクトールにニヤリと笑った。
「フリックさんたら酷いわー」
ビクトールもニヤリと笑った。
「ふふ、楽しくなりそうだね」
○○はにっこりと幸せそうに微笑んだ。
「そうだな」
フリックも優しく微笑んだ。
(完)
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